GIGI日記~映画とか本とか~

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本「数値化の鬼」「リーダーの仮面」「とにかく仕組み化」

忙しいさなか、安藤広大さんの書籍を3冊読みました。まず、このシリーズものすごく面白いです。特に「とにかく仕組み化」は素晴らしいと思います。

まあ、かなり売れているので、詳細はAmazonなんかのレビューを見ていただくとして、是非、ビジネスに関わる方は、こういう考え方もあるんだなという感じで読んでみてはいかがでしょうか。

で、結論から言うと、この本の通りに組織改善がなされれば、それなりに成果を上げられるのだと思います。しかしそのためには鉄の意志が必要です。そして当然のことながら、この書籍で書かれたことが、すべての業種・業態でうまくいくかというと、もちろんそれは無理でしょう。仕事内容はもちろん、そこで働く人々のレベルや、経営者の考え方や立ち位置で、うまくいくケースもあれば、むしろ退職者を増やす結果につながるケースもあるかと思います。

そこは当然ケース・バイ・ケースで、自身の会社で活用できる部分を抽出し、自社用にカスタマイズしたうえで、うまく仕組みを導入し、組織全体にコミットしていく必要があると思います。しかしそのための根回しや説得等の努力は並大抵ではないと思います。

僕が特に感銘を受けたのが、「組織が変わるというのは、組織の仕組みやルールが変わる、ということである」という部分です。これは確かにその通りだと思いました。いくら組織改善、経営改善などと言って、風通しをよくするとか、心理的安全性とか、モチベーションを高めるとか言っても、それはすべて形のない曖昧なものであるので、結局は精神論にしかなり得ず、最終的には気分だけが一時的に高揚しただけで終わってしまいます。

より具体的にどうすればよいか、それは数字を見て目標を設定し、その数字により成果を判断し、そしてそのプロセス(経緯)ではなく、すべて結果に応じて報酬を増減するという、まあ何というか、きわめてドライかつストイックな経営方針ですね。

また、「下手に部下を褒めるとそれでいい思って成長しなくなってしまう」「部下とは適度に距離を保ち、緊張感を維持する」「みんなが組織の歯車としての自覚を持ち、歯車なりの工夫をして成果を最大化する」「感情は抑え、一律に数字で公平かつ透明性を持って評価する」「組織にナンバーワンもオンリーワンも不要である」という、安藤広大語録が淡々と書かれており、なるほどな~と思いました。

そして彼の会社では、みんな上記のような考え方に基づき、生き生きと最大限のパフォーマンスを発揮して仕事をしているようなんですね。

しかし僕が思ったのは、そういう仕事のやり方って本当に楽しいのか?ということです。たぶん仕事なんだから楽しさは不要で、それは甘えであるし、部下の成長にはつながらないってことなんだと思います。

ですが、人間というのは不思議なもので、自分が楽しいと思うことは言われなくてもがんばってやるんですよね。一方、楽しくなくて興味がないと結局やらないし、やってもお粗末で陳腐なものになってしまうわけです。なので、仕事が楽しいと感じることは実は非常に重要なことだと思うわけです。

ちなみに僕がここで言う「楽しい」というのは、なにも「大勢で集まって酒飲んで大声出してバカ騒ぎする」などといったものではありません。まあそれもたまにであれば楽しいけど、毎日がそんな職場だったら、もううんざりです。

では、僕の言う楽しさとは何か?それは一言で言うと、自分の成長を実感できること、なんです。「できなかったことができるようになった」「自分の弱かった部分が改善された」「新しい知識を得た」「お客さんからお礼を言われた」「うまくプレゼンできた」とか、そういうことですよ。

そしてそういう楽しさこそ、バカ騒ぎの飲み会なんかとはレベルの違う充実感と達成感を味わうことができるはずなんです。なので僕は、一緒にやり遂げた部下に対してもお礼を言うし、がんばったプロセスも大事にします。

安藤さんの考え方の柱として、スポーツにはルールがあってすべて結果(数値)によって評価される、ならば、仕事も同様にルールがあって、数値や結果によって評価されるのは当たり前である、というものがあります。

確かにその通りかもしれません。しかし僕はスポーツが大嫌いでした。特にチームワークの必要な団体競技が苦手で、かつ部活内の雰囲気も非常に悪かったのを今でも覚えています。その影響で今でもスポーツは大嫌いで、なんとなくスポーツやスポーツ選手は人格が上というような思想が苦手です。

これってなんか「自然の豊かな場所では、感性豊かで健全な人間性が育まれる!」といった思想と似てますよね。

もしそれが真実であるなら、田舎とか郊外には犯罪が一切発生しないことになりますが、現実はそうではありません。なので、スポーツの考え方を職場に持ち込むのはできれば避けたいと思います。

いくら数字で判断・評価しろといっても、仕事はスポーツではありません。ルールを設けた方がよい場合もあるし、時にルールが弊害になる場合もあります。そしてあなたが上司の立場で、部下が頑張っているのをみると、「よくやった!結果は出なくても、またがんばればいいよ!」と言いたくなりませんか?

そしてそういう言葉をあえてかけないことが、本当に部下の成長につながるのか僕にはわかりません。なぜなら、自分のことを考えると特にそう感じます。入社当時、職場には優しい年上の女性がいて、その人がいつも笑顔で僕を励ましてくれたんですね。「がんばってるね。すごいね。そんなこともできるんだ」

今思うと、僕はこの女性がいなければとっくに会社を辞めていたはずです。一方で、こちらがどんなに頑張っても、ありがとうの一言もなく、こちらの業績は一切評価せず、些細な行動ばかりを責めたてる上司もいました。そして僕はこの人に対しては未だに憎しみの感情しかわきません。

じゃあなぜ僕が成長しなければいけないと思ったのか。それはそうやって励ましてくれた女性のため、そしてお礼を言ってくださったお客さんのため、もう、これに尽きます。そういう人たちのためにもっと努力しよう、もっとがんばらなきゃと思ったわけで、それが社会のため、職場のため、そして回り回って自分のためになるわけです。

なので、この本に感化されて、すぐに職場に導入しようと思ったあなた!十分気をつけてください。当然、導入すべき内容もたくさんありますが、なにより人間は感情の生き物であって、かつ、人間というのはそうそう簡単には変わらないものです。

僕は安藤さんに甘いと言われても、頑張っている部下には素直に「がんばってるね。ありがとう!」と伝え続ける上司にしかなれないでしょう。けれど、それに甘えずに努力を続ける部下であってほしいし、その思いは「決して褒めない」というような行動で示すのではなく、僕の心の中にしまっておくことにしますが。。。

ちなみに安藤さんの経営する(株)識学という会社ですが、グーグルでの口コミ評価が猛烈に低くて笑いました。

我が社では、識学を導入してから全員が退職しました。今では家族とバイトでどうにかやりくりしてます。今では支払った○○万円がバカらしいです。

一度連絡を取って以来、識学から再三勧誘の電話がかかってきます。人の迷惑になるようなしつこい営業はどうかと思います。まずは識学で自社の方針を改善すべきではないでしょうか。

などというニュアンスの口コミに溢れてて、もはやかわいそうになるくらいです。当然、半分はやっかみもあるのでしょうが、ある意味、これが識学という考え方、マネジメントの限界なのかもしれません。仕事はゲームやスポーツではありませんし、感情を持った人間同士で行うものであって、そこに共通に通用するルールやマニュアルのようなものはありません。

ただ、部分的にはものすごくいいことや共感できることも書かれていますので、その中でこれだという箇所を見つけ、少しずつ社内に取り入れていくというのがよいでしょう。要は「外からの物をそのまま受け入れるのではなく、自社用にカスタムしたうえで導入する」といったように、これまでの日本社会がさんざん繰り返してきた欧米社会の導入と同じ考え方ですね。

この、一度受け入れつつ、日本の歴史や文化と照らし合わせたうえで、それらを融合させて日本風にアレンジして調和させる、といった姿勢こそが、日本社会の醍醐味です。

最近のコロナ対策をはじめ、ウクライナ支援、ロシア敵視、イスラエル擁護などもすべてそうですが、欧米の主張をそっくりそのまま受け入れるのはもうやめた方がいいですね。