GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

MENU

本「ウイルス学者の責任」

京大のウイルス学者である宮沢孝幸先生が最近出された書籍ですね。この本は、コロナ禍における日本政府の対応が、ウイルス学者の視点からみて如何に誤りだらけのモノであったのか、わかりやすく丁寧に、そして静かに語られています。

私のブログのように批判的で過激な言葉遣いではなく、あくまでもウイルス学者からの視点で、至極丁寧に、そして客観的に述べられています。いくつか政府の方針の誤りが指摘されていますが、おおむね整理すると以下の点になります。

①今回のコロナウイルスは毒性が低いので、緊急事態宣言(ロックダウン)等の過剰な対策は不要だったこと。
②特に日本は、欧米に比べ重症化する人が1/10程度だったので、欧米の対策を真似る必要は全くなかったこと。
③日本では、うがい、手洗い、換気のみの対策でよかったこと。
④初回の緊急事態宣言前に、すでに感染者はピークアウトしていたこと。
⑤国民の大部分に未知のメッセンジャーRNAワクチンを接種するという対策(予防策)は誤りであったこと。
⑥方針を決定する政府の分科会がウイルス学を理解していなかったこと。

だいたい以上のような点が本書の前半で述べられております。そして後半は、結構専門的な話になり、理解するのがなかなか難しかったです。

まあ、上記の内容は、良識のある立派な医師の皆様(長尾先生、井上先生、高橋泰先生など)が2020年から頻繁に主張されておりましたので、ボクはほとんど知っていました。が、この宮沢先生はウイルス学者なので、ウイルス学からの視点・見解という意味では、非常にロジカルで説得力のある内容となっています。

というように、素晴らしい本なのは間違いないですが、ボクが特におもしろかったのは、コロナウイルスの話ではなく、むしろ終わりの方の、宮沢先生の生き方や組織論が語られている部分でした。

先生曰く「組織というのは、ダメな奴がいないとうまくいかない」のだそうです。どんな組織でも、構成メンバーは均一ではなく、できる人もいればできない人もいる。そして、できない人をいじめたり、バカにしたりすると、結局は組織の雰囲気が悪くなり、組織全体が空中分解してしまうのだそうです。

つまり組織というのは、ダメな人がいじめられることなく、居場所があることで、他の人たちの心が安らぎ、平和になるものであって、むしろ強い組織というのは、仕事の実績を上げられない人でも、ニコニコしながら働いている組織である、とのことでした。

なので、例えば、できる人たちだけで独立して会社を立ち上げたりすると、大抵はうまくいかないのだそうです。

以上の見解は、大学在学時代から、数々の組織に属してきた先生ならではの言葉だと思います。そして先生は、そういうダメな人を大事にするようなんですね。

なんてすばらしい先生なのでしょう。ボクはこの本を読んで、目から鱗!宮沢先生が大好きになりました。こういう先生が増えれば、世の中も変わるのかもしれません。

ただボクが思うのは、ダメな人やできない人ではなく、いやな奴、ずるい奴、嘘をつく奴なんかはどうすればいいのでしょうか。本書を読むと、ダメでできなくても「ボクは宴会要員やります!」とか「ボクは雑用は何でもやります!」と言った人が例として挙げられています。なので当然ですが、できない人、ダメな人とは言っても、そういう人たちが、いやな奴とか、性格の悪い奴でないことは明白だと思います。

なぜなら、そのすぐ後に「社会に出たら頭の良さなんて全く関係ない。むしろ人間性の方がよっぽど重要だよ」と学生に諭しているからです。このことからも分かるとおり、おそらくは、宮沢先生も、できるできないではなく、人間性を重視しているわけなんですね。

なのでボクは、宮沢先生に、ダメな奴やできない奴ではなく、むしろ、組織に必ずいるような、イヤな奴、ずるい奴、平気で嘘をつく奴、権利ばかり主張する奴などはどうすればいいのか、その点を深掘りした本を書いてもらいたいと思いました。

そういう人たちも大事にするべきなのでしょうか?ボクは未熟なので分かりませんが、きっとその解を宮沢先生はお持ちのように思います。ただ、ダメな奴(ただ性格はいい奴)を大事にすべき!専門的な技術や知識よりも、人間性が大事!この点はボクも激しく同意しますし、全くの同感ですね。