GIGI日記~映画とか本とか~

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ビジネス書の限界

ボクはビジネス書も大好きで、結構色々読みます。最近はらしさラボの伊庭正康さん、スタバやボディショップを再建した岩田松雄さん、教育改革者の藤原和博さんなんかの本を読み漁りました。

彼らの思考や考え方はとても斬新で素晴らしく、当然、色々と気づかされ、これらの書籍は読まないよりは絶対に読んだ方がいいと断言します。

ですが、じゃあこれで問題が解決するか、営業成績が上がるか、組織が変わるかというと、それはなかなか難しいということだけは言っておきましょう。

特に、彼らの本は、自身の変革にはある程度貢献するかと思います。ですが、そこに他者が介在すると、それはもう、世の中には色んな人がいますので、そこは当然一筋縄ではいきません。

例えば彼らの本の中でも、「性格のひねくれた上司のせいでノイローゼになった」とか、「いやな上司は客観視して、反面教師とせよ!」とか、「噂話や悪口ばかり言っている社員とは敬して遠ざける!」とか、「やる気のない社員にはGROWモデルで気づかせよ」といった様々な対処法や解決策が紹介されています。

しかしボクはむしろ、彼らが色々といやな思いをした、そのクソみたいな上司たちとか、噂話ばかりの社員とか、GROWモデルの通じない社員とか、そういう奴らをどう変えていくのか、むしろその点こそが知りたいのです。

ちなみにGROWモデルとは、やる気のない社員のモチベーションを高める手法の一つで、まず本人にGoal(ゴール)つまり目標を設定させ、Reality(リアリティ)事実を確認させ、Reasource(リソース)資源を見直させ、Options(オプションズ)解決策の選択肢を考えさせ、Will(ウィル)自ら実行させる、という手法です。

しかし、ほとんどの人が、このリソースとオプションを自分で考えつくことはできないと思います。一方、ここでリソースとオプションがすらすら出てくる人は、そもそも仕事の効率ややり方がまずかっただけで、決してやる気がなかったわけではないと思います。

つまり、ボクは、このモデルが通用しない人間にこそ、どうコーチングしていくかを知りたかったんです。

当然ですが、こういうビジネス書には、何にも理解してくれなかった上司、教育してもダメだった部下、注意しても聞く耳を持たなかった社員などのケースは例として登場することはなく、当たり前ですが、これらの本で語られるのは、成功体験が大部分です。なのでむしろ、彼らのようなプロですらダメだった人たち、通用しなかった人たち、思いが伝わらなかった人たちに対する対処や指導の方法をまとめた本があればいいのにと、いつも思ってるわけです。

前置きが長くなりましたが、まあそういう社員がわが社にもいたんですね。というよりボクの部下に。

当たり前ですが、一緒に働く人間には①能力、②やる気、③人間性が求められます。例えばその中で、即戦力がほしいなど、特に①のみを重視する人もいます。

けれどもボクは、それよりも②やる気と③人間性を重視します。そして、彼の場合は、最初の印象や何週間かを共に過ごし、確かに①の能力は欠けているけど、②やる気もあるし、③人間性も悪くなかったので、採用することにしたんですね。しかし、それこそが今回の失敗の原因だったのかもしれませんが。

で、これまでの5年間、彼には色んな事を教えてきたつもりです。ボクは叱ることは最小限に抑え、一般的な仕事内容のほかに、自分の仕事に取り組む姿勢や、自分の熱意や思いなんかを伝えてきました。しかしここに来て、そういうボクの熱意や思いなんて、実はこれっぽっちも伝わってなかったことを思い知らされたんです。

いやはや、これは結構堪えましたよ。ボクが彼に伝えたかったのは、書くとすれば、大体以下のようなことです。

①仕事の大部分は雑務である。専門的知識や技術はあった方がいいが、それよりも段取り力、調整力、進行力、説明力が大事であること。
②仕事への興味や関心は、自分で自覚しないかぎり、絶対に持てないこと。
つまり、本人が気づいて自覚しない限り、人にいくらやる気を出せと言われても出ないし、本を読めと言われても読みません。つまり、やる気を奮い立たせるのは自分だと言うことです。
③とにかく自分の与えられたフィールドでがんばること
まあ、こういうことを常々伝えてきました。そして彼の予定のある日は私が休みを返上して出勤したり、彼の都合を極力優先させてあげました。それは彼がいつか気づいてくれるだろう、という期待を込めての事だったんですが。。。。

ですが結局、最近になって、彼が上司と面談し、おそらく彼はわが社を去ることが決定的になりました。

その時の彼の言い分は、書くのもイヤですが、以下のようなことだったようです。

言い分① 仕事に一切興味と関心が持てなかった。
言い分② そろそろ子供ができる予定で、そうなると今までのように、長期の出張はできなくなる。
言い分③ 今の境遇に甘えてしまっていた。このままいても、自分の能力不足で迷惑をかけるだけ。
なので去るのだそうです。。。。これを聞いて、ボクは愕然としました。はっきりいって、全て自分のことばっかりなんですよね。以下に、ボクなりの見解と対応策を。

①仕事に興味や関心が持てない⇒きっと何に対しても持てないだけでは?自身で持つ努力をすべき。
多分こういう人は、何に対しても、おそらく自分の好きなことであっても、結局は興味や関心が持てないんだと思います。それが雑務であれなんであれ、目の前の仕事を懸命に、そして色々と工夫したり、試行錯誤を繰り返しながら真剣に取り組めない人は、きっと大きな(というか目立つ)仕事なんて絶対に達成することはできません。よく新入社員で、ビック・プロジェクトに参加したい、大勢の前でプレゼンしたいなどと思ってる人は要注意です。なぜなら、そういう全ての仕事が、きめ細かな雑務の積み重ねでできているからです。細部に手を抜く人は、大事をなすことはできません。まあ、あたりまえですね。

②そろそろ子供ができる予定で、今後はもっと家族との時間を大切にしたい⇒調整次第である程度は可能では?
でました、今流行りのキーワード、家族との時間。けれど、彼らのいう家族との時間って一体なんなのでしょうか。ボクは毎年、年間の休日出勤は40日前後、有給はほとんど消化できませんが、それでも家族との時間はたくさん持ってます。猫ちゃんがいるので旅行はできませんが、それでも嫁さんと楽しく生活してますよ。

彼らのいう家族との時間というのは、もはやほとんど毎日一緒に過ごしたい。週のうち半分はテレワークで、毎年4回は家族と旅行に行き、春夏秋冬でそれぞれ3週間ずつ休暇を取りたい!ということなんでしょうか。だとすれば、そういう生活ができるまで自分を高めるか、あるいは奥さんに仕事をしてもらい、主夫になって奥さんを支えるというのも一つの方法です。

しかし彼の場合、ほとんど休日出勤もさせず、した場合でも代休で休ませ、彼の言う「明日は自分の誕生日なので休みます」とか「嫁さんの誕生日なので明日、あさってと休みます」とか、そういう要望を極力ボクは尊重し、そのサポートをしていたわけですね。そうやって自分が休むことで、他の誰かが(つまりボクが)サポートやフォローしていたことなんて、これっぽっちも頭になかったのでしょう。

ましてや今後子供が生まれるなら、もっとがんばって仕事をして家族を支えていくんだ!という気持ちになるのが当たり前だと思うんですが、最近の風潮だと、仕事も家族も半分ずつ(もしくは、仕事1/3、家族2/3)ってことなんでしょう。

③自分の能力不足で周りに迷惑をかけるだけ⇒そもそも能力不足以前の問題では?
これも聞こえはいいですが、能力を高める努力を一切することなく、迷惑をかけても一切謝罪せず、自分を助けてくれた人に感謝もせず、その好意にすら気付かないわけですね。とはいえ、彼の場合、人間性は決して悪くなかった(とぼくが勝手に思っていた)のですが、思えば確かに以下のような傾向がありました。

①挨拶をしない。
②何か聞いても返事がない、声が小さい。
③誤りを指摘するとふて腐れる。言い訳する。場合により怒る。
④期限を守らず、言い訳をし、フォローもしない。
謝罪もせず、お礼も言わない。

まあ、こう列挙すると、確かにこういう人間とよくも5年間、いっしょに仕事したなあ~と思います。つまるところ、残念ですが、彼の場合、能力も低く、やる気もなく、結局、人間性も大してよろしくなかった、ということになりそうです。ボクとしては、あまりそうは思いたくないんですけどね。

とはいえ彼にもいいところはたくさんあったので、ボクはそれを信じて一緒にがんばってきたつもりでした。が、所詮、ボクの好意や思いは一切伝わっていなかったので、であればむしろ、優しさだけではなく、ビシバシ怒って、厳しく指摘し、早々にやめてもらっていた方が、双方の傷も浅かったかもしれません。
そこは自分の人を見る目がなかったということに尽きると思います。けれど、そういうことって、面接ではもちろん、数ヶ月一緒に過ごした程度では到底分かりませんよ。けれど今後は、上記の五つをちゃんとできる人を採ればいいのかな~とも思いますが、これってどれも当たり前のことばかりで。

ボクが特に憤りを覚えるのは、彼ですら面接の時は「御社の仕事内容に深く共感し、やりがいのある仕事だと思ってます。骨を埋める覚悟で、何でも精一杯死にものぐるいでがんばりたいと思います!」などと、したり顔で言ってのけた点ですね。こういう風に、面接の時だけ調子のいいことを言って、入ったら入ったで手を抜き、忠告を聞かず、ふて腐れ、自分は何にも悪くないと全て周りのせいにする、まあ、世の中にはこういう人間がたくさんいるって事ですよ。とても悲しいですが。。

そして致命的な事に、彼は新卒でもZ世代でもなく、単なる転職組の40代の社員でした。色々と書きましたが、このようなケースの場合、こういう人間こそどう指導していくのか、どうコーチングしていくのか、その点を伊庭さんや岩田さんに聞きたいですし、本にしてもらいたいです。

が、多分伊庭さんや岩田さんも、こういう人間を指導したことはないと思います。だって、結局、こういう問題のある社員であっても、伊庭さんや岩田さんの熱心で地道な指導により、彼ら自身が自分で気付いて自ら改善していく人の例しか、本では紹介されていないからです。

よくマンガで、不良が出てきても最後はかならず改心して仲間になるのと同じパターンですね。しかしそんなのは、現実社会ではレアケースに過ぎません。世の中の大半が、ずるい奴、性格のねじ曲がった奴、自分だけの奴、努力しない奴、がんばりたくない奴、仕事を増やしたくない奴、けれど金はほしい奴で溢れかえってますよ。

当たり前ですが、その意味で、こういうビジネス書の類いはほとんど役に立ちません。そういう人は物語や本の題材にすらなりませんし、むしろこういう人の方が世の中では圧倒的に多いことを無視しているからです。

今回の件、ボク的にはかなりのショックだったんですが、その一つの要因として、マンガ「ONE PEICE(ワンピース)」の悪影響が多分にあると思いますね。物語の中でルフィーが仲間に向かって言います。

「オレのできないことはオマエがやれ!その代わり、オマエのできないことはオレがやる!」というセリフです。そこを今の世の中は切り取って悪解釈し「自分のできないことはしないでいい。他の人にやってもらえばいい!」とする開き直りと自己肯定感があり、この思想はつまるところ「自分らしく」ということになります。

こういうフレーズが新規採用のエントリーページに溢れていることこそ問題だと思いますね。「自分らしく」には目指すべき理想も目標も一切ありません。人が成長するためには、こういう事を成し遂げたいとか、こういう大人になりたいという理想や夢、目標とか人物への憧れがあるはずです。その努力や思いなくして、絶対に自分を高めることはできないと思います。ONE PIECE 思想に染まってしまうと、おそらく国力は著しく衰退するでしょう。