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その他『見たい映画「ウトヤ島、7月22日」』

唐突ですが、今猛烈に見たい映画がありまして、それは「ウトヤ島、7月22日」です!

この映画って日経新聞の映画紹介コラムではじめて知ったんですが、2011年に起きたノルウェー連続テロ事件の惨劇を、ウトヤ島を舞台として73分ワンカットで撮ったという衝撃的な作品なんです。ただし、僕にとっては「カメラを止めるな!」みたいなワンカットというところは別にどうでもよくて、この衝撃的な事件が、事件からはや8年足らずで映画化されたということ自体に衝撃を受けたわけです。

そもそもノルウェーにとって、この事件は今世紀最大の大量殺人事件(テロとはいえ犯人が一人なのに対しなんと80人近い犠牲者が出ました)であり、そういう国民を生んでしまったこと自体が国際的に見ても恥ずべき大事件であって、できるだけ穏便に周囲が忘れ去るまで、事を荒立たせずにひっそりと蓋をしておきたいような事柄であるわけですよ。しかしながら、ノルウェーオスロ出身のエリック・ポッペ監督はそうすることを許さなかったんですね。そこがすごいんです。

僕としては映画っていうのは大きく大別すると2つに分かれると思っていて、一つはアクションやサスペンス、ラブロマンスやコメディー、それにSFやファンタジーや冒険なんかの、みんな大好き「娯楽映画」。で、もう一つは社会的な事件や歴史的な惨劇をモチーフにしたような、見ててひじょ~に苦しい映画たちです。そして僕は、娯楽映画以上にこの苦痛で重苦な苦業映画が大好きなんですね。そういえば、こういう映画って「社会派映画」とかって言われてるんでしたっけ。

例えば、1973年に南米のチリで起きた軍事クーデターと大量虐殺を描いたコンスタンチン・コスタ=ガブラス監督の「ミッシング」とか、ナチスソ連侵攻とその過程で消滅させられた村落を描いたトラウマ映画のベストワン「炎628」とか、同じく第二次大戦中、ポーランド軍人2万人がソビエトで秘密裏に虐殺されていた事実を描いたアンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」とかは、すべからく苦業映画ですし、内容が重すぎて見た後は何日も引きずるほどの衝撃。

さて、この事件の犯人であるアンネシュ・ベーリング・ブレイビクですが、こういう凶悪犯を死刑にできない法律というのは、北欧の福祉国家として有名なノルウェーという国の行き過ぎと限界、矛盾と無念を感じます。

なお、本当かどうかはわかりませんが、なんでもアンネシュ・ブレイビクは刑務所の中で「刑務所内のゲーム機をもっと新しいPS3とか4に変えろ!」などと、その刑務所内の処遇改善のための活動に精を出しているようです。って、こんなことがはたして許されるのでしょうか?こんな暴挙をよくノルウェー国民は暴動も起こさずに耐えてますよね。しかし、こういう奴ですら許すのがキリスト教の教えではあるわけですが・・・。

何が言いたいのかというと、僕は映画とか音楽というのは、当然娯楽ではあるんですが、一方でその娯楽性を隠れ蓑として、歴史的悲劇や惨劇とか、抑圧されたマイノリティーの現状とか、風化させてはならない社会的問題を世の中に伝え訴えることのできる最大の武器だと思ってるんですよね。まあ当然、その実現のためには制作過程でスポンサーを巧妙にだまし続ける必要があるわけですが。

で、日本の映画界を見ると、そういう映画ってはたしてどの程度作られてますでしょうか?ってことなんです。平成をみてもオウム真理教とか福島第一原発事故とか色んな大事件がありましたが、ほとんどそんな映画は目にしません。 森達也監督のドキュメンタリー映画「A2」などが一応は知られていますが、ほとんど主要メディアでは相手にされませんでしたし、相変わらずアニメの実写化とかアイドルのプロモーションビデオみたいな映画ばかりが巷にあふれかえってます。まあ、それはそれでしょうがないんですが、誰も戦わずに、そっと蓋をしてゆっくりなかったことにしようとしているのが本当に寂しい限りです。

その意味で、この映画を撮ったエリック・ポッペ監督はすごい監督だし、コロンバイン高校銃乱射事件が起きたわずか4年後にガス・ヴァン・サント監督が「エレファント」を撮ったこともやはりすごいですよね。

しかし「ウトヤ島、7月22日」は公開が3月8日なので、年度末で超多忙なので見に行けないだろうなあ~。

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