GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

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映画「さらば青春の光」

評価:★★★★★

この時期、年度末で忙しくてなかなかアップできません。残念!

さてさて70年代イギリス青春映画の金字塔「さらば青春の光」です。こちらもマイ・ベストの一本。初めて見たのは高校生の時で、そのファッションとムーブメントの激しさと笑えるオチに衝撃を受けたのを覚えています。以来この映画も毎年一回は必ず見てますね。

舞台は1960年代のロンドン、主人公のジミーはどこかの会社で社内の各部署に郵便物をカートで届けるという地味~な仕事をしていて、さえない毎日ではあるものの、週末はバックミラーのたくさん付いたスクーターに乗って仲間とどんちゃん騒ぎを繰り返すことこそが彼の生き甲斐。

モッズスタイルに身を包み、着る服は上下ピチピチにまで絞りに絞ったジャケットやパンツスタイルで、こんなファッションとかムーブメントがあったことに驚愕!ドラッグをきめ、ザ・フーの音楽に合わせて体を激しくゆすってクラブの2階から飛び降りたりとか、結構「無茶をする奴」として仲間からは一目置かれているんです。

劇中、スクーターに乗ったモッズが大量に集まって「オレらはモッズ!モッズだぜ!モッズなんだよ!文句あるか!」と大合唱しながら行進するシーンがあるんだけど、あまりにもばかばかしくて笑えます。けれど、若いってきっとこういうコトなんでしょう。集団による熱狂と陶酔!今まさに自分がここにいるというまるで世界の中心のような万能感!

しかし結局みんなわかってるんですよ、これは束の間の休息であることを。なので、祭りが終われば自然と毎日の生活に戻らなくてはならないのは言うまでもなく、だからこそその一時が光り輝くわけで。な~んて偉そうなことを書きましたが、まあ当たり前の話で、毎日がお祭りだとありがたみが薄れてしまうというような。

なのにジミーだけは真剣そのもので、そういう集団的なカタルシスがジミーの抱える空虚さにぴったりハマってしまうんです。毎日の生活とお祭りとのギャップが大きければ大きいほど、深入りしすぎて戻ってくるのに時間がかかるというか。

要するにジミーは仕事なんて辞めて「モッズ」というスタイルやムーブメントそのものを仕事にしたい!と考えるようになるんですね。まるで高橋ツトムさんのマンガ「爆音列島」の主人公が族を仕事にしたいと考えるように。けどこれって60年代ならいざ知らず、今の世の中ならやり方次第で結構仕事になるかもしれません。

で、結局ジミーは、普段の生活にすんなりとフィットして戻っていく仲間たちとうまくいくはずもなく、どんどん孤立して自暴自棄になってみるみる落ちぶれていく、という典型的なダメ人間のお決まりのパターンなんです。もうかわいそすぎて見てられません。

そもそも「最低限のお金だけ稼いで好きなことだけをして生きていく」というのはすばらしい生き方だと思うし、劇中でジミーだけがハブになっていくのはちょっと納得がいきませんが。もう2、3人同調する奴がいても良さそうだけど、結構みんなシビアなんですよね。

物語の中盤、ジミーがジーパンを体にフィットさせるために、デニムを履いたまま風呂に浸かるシーンは最高で、父親から「オマエ、ズボンも脱がずに何やってんだ!」とかって嘲笑されると、ムキになって「ズボンじゃない、リーバイスだ!」といい返すシーンがたまりません。この頃からリーバイスは若者のマストアイテムなんですね。このシーンを見る度に、僕もジーパンを履いたまま風呂に浸かりたくなります。

改めてこの映画について書いてみると、何となく、若者と大人、仕事とムーブメント、仲間とファッション、協調と対立みたいな色んな要素がちりばめられているのに気がつくんだけど、すべて相反する概念ではなくて、全て融和と共存が可能な概念だと勝手に思ってます。

今はもう60年代ではないし、全てぐちゃぐちゃでいいに決まっていて、どれかを選ぶとどれかを捨てるとか、そんな二者択一的な単純な概念ではなくて、全て実現すればいいじゃん!と思っちゃいます。そしてそうすることができる時代に僕らは生きているし、それだけ今の時代はすばらしいんですよきっと。そんなことを感じる映画なので、毎日が生きづらいと感じてる人にはおすすめですね。今の時代「ジミーは決して1人じゃない!」ということに気づかせてくれます。

しかし、どうでもいいことですが、この映画と同名のお笑い芸人さんがいることにびっくり!この人達はこの映画のファンなんでしょうかね。検索ワードでこの映画よりも芸人さんの方ばかり出ることが今の時代を象徴してますね。お笑いとかほとんど見ないのでちょっと残念ではありますが・・・。

みなさん、年度末地獄もあと一ヶ月、ジミーみたいに目にクマができない程度にがんばりましょう。

さらば青春の光 [DVD]

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