評価:★★★☆☆
懲りずにまたA24配給の映画を見てしまいました。全然期待していなかったんですが、この映画、意外にもすごく面白かったです。まあ、あまりヤマ場とかがないので、えっ?これで終わり?ってな拍子抜け感はあるんですが、すごくよかったですね。
なにより、主演のエルシー・フィッシャーちゃんが素晴らしくて、ボク的にはエル・ファニングちゃんより好きですね。
まず最初にタイトルを見たときは、ぼくはエイス・グレードというあまりイケてないティーンエイジャーの女の子が、クールな自分を目指して変身する!というシンデレラ・ストーリーかと思っていたんですが、もう完全なる勘違いも甚だしくて。
まず、タイトルの「エイス・グレード=Eighth Grade」というのは学年のことで、8年生、つまりは中学3年生のことなんですね。なお、アメリカでは、小学校と中学校がそれぞれ5・3年あるいは6・2年が一般的で、どちらの場合でも8年生は中学校の終わりの学年なわけです。
ただ、日本よりも1年中学校が早く終わり、高校が4年もあるんですよ。ボクは初めて知りましたが、まあ、高校が4年もあるので、それだけ高校に対する思い入れが強いわけです。
で映画では、エイト・グレードの無口で友達のいないケイラちゃん(エルシー・フィッシャー)の中学校最後の1週間が描かれています。
そして最近のティーン・エイジャーではもう常識なのか、アップルのPCとかスマホとか当たり前に持ってて、インスタとかツイッターとかガンガン使って生活してます。というより、もはや生活の一部になっちゃってます。
でこのケイラちゃんは、中学校に入った時から動画配信をしてて、その動画上では日々言えないことや本音を吐露したりしてるわけです。そこではペラペラと意外にも深いことを話しているので、なぜこんな子が学校では無口なのかがわかりませんが。
ただ、動画を自撮りしてる時って、別に周りに聞いている人もいないので、緊張もしないし話しやすいってのは確かにありますよね。
で物語は彼女の配信動画を交えながら、中学校最後の一週間を描いていくんですが、しょっちゅう出てくるケイラちゃんのお父さんがとにかくいいんです、最高なんです!
まあ、ボク的にはこのお父さんの方が年齢も近いので、それなりに共感しやすいわけですが、物語終盤、この親子が庭でたき火(厳密には違いますが)をしているシーンはもう最高!やはりティーン映画にたき火はよく似合いますね。
例えば、「マイ・プライベート・アイダホ」のリバー・フェニックスとキアヌ・リーブスのシーンしかり、同じくリバー・フェニックス出演の「スタンド・バイ・ミー」で4人の子供たちが焚き火をしてダベるシーンしかり。あと「アウトサイダー」のラルフ・マッチオとC・トーマス・ハウエルの公園のシーンね。
ともあれ、このケイラちゃんを演じたエルシー・フィッシャーって、適度に肉付きがいいんですが、これって役作りだったんでしょうか。まあそのままでも十分魅力的でかわいらしいので、現実世界でこんな子に友達がいないという設定はちょっと無理があるかと。しかも動画の視聴数が1回とかって、ちょっとあり得ないというか。まあボクのブログに匹敵する読者数、ではなく再生回数の少なさというね。
で、結論としては、ボクがこの映画を見て痛烈に感じたのは、中学校とか高校なんて別にたいしたステージじゃないってこと、それに尽きますね。
まず、一生つきあえる友達!とか、あの時の出来事は一生の思い出!とかって、もうテレビ、ドラマ、メディア、アニメ、マンガなどのあらゆる媒体があおりにあおってますが、30歳過ぎるとはっきり言ってあんまり思い出しません。40歳過ぎた今となってはもうほとんど忘れてしまってます。
自分の生活や仕事が忙しくなると、友達なんかと遊んでるヒマはなくなるし、思い出なんてモノも、当時の写真とかを毎日見返している奇特な奴とか、大人になっても仲良しのヤンキーでもない限り、断片的な記憶(しかもイヤな記憶)以外はほぼ忘れるかと。
しかし、イケてるとかイケてないとか、色んなSNSやネット上のあらゆるコンテンツに「いいね!」が溢れてるので、そういうのが生活の一部になっている現代社会とか学校では、昔はわかりにくかった部分が当時よりも可視化されやすいという風潮はあるかもしれません。
けど、この映画の中でイケてると思われてる奴らは全然イケてないし、そもそも世の中を見渡せば、大量にクズ、イヤな奴、ずるい奴、権利ばかりの奴らで溢れてますので、別に必死こいてイケてたり、みんなで騒いだり、大声出して笑って楽しんでるフリをする必要は全くないかと。
むしろボクは、「一番イケてるのはケイラのお父さんってことに早く気づく世の中になればいいな~」と思いました。娘との関係に不安を感じている世のお父さん達、絶対にお勧めの1本です。