GIGI日記~映画とか本とか~

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本「一汁一菜でよいという提案」

皆さま、そろそろ年末年始のお休みに突入しましたでしょうか。僕の職場はマゾヒストが多いので、必死に自分を勝手に追い込んで、端から見てるとヒマなくせに、やれ忙しい、それ忙しいと、仕事がなくても帰らずにダラダラ残ってるオヤジどもが結構いますね。彼らはきっと、そうやって自分を常に追い込んでいじめてないとダメで安心できない真性のマゾなんだと思ってます。たぶん、帰ってもやることがないのでしょうが、そんな人こそ、この名著「一汁一菜でよいという提案」を読むべきだと思います。

これは僕の敬愛する料理研究家土井善晴さんの本なんですが、これはいわゆる料理本やレシピ本ではないので、それを期待して買ってしまうと相当に肩すかしを食らいます。では何の本なのかというと、それはつまり「哲学書」ですねもはや。料理という名を借りてはいますが、日本という四季折々の風土を背景として、その文化や歴史、日本人の心、はてや人の生きる様までを、非常にわかりやすく丁寧に解説されています。

世の中的には、倫理と道徳、自由と平等、尊厳と人権なんかのヒューマニズムやデモクラシーに飽きたらず、最近では「食育」とか「環境教育」などという言葉も勝手に作り出して、必死に子どもたちに教え伝えようとしてるけど、であるなら、一番手っ取り早いのはこの本を教科書にすればいんじゃね?とすら思いました。我々を取り巻く環境と日々の生活や料理をベースとして、そこに歴史・文化的考察を加え、日本人の生き方や生き様やその道しるべを、ここまで斬新かつ丁寧に解説した指南書ってなかなかありませんよ。

さてさて確信に入りますが、ここで土井さんの提唱している「一汁一菜」という理論は要するに「ご飯と味噌汁のみ」というもので、味噌汁を具だくさんにしてしまえば、その汁自体がおかずになってしまうという革命的なメソッドなんです。

しかも、キャベツとか肉とかキノコとか油揚げを炒めてから水を入れれば、そこから十分にうまみが出て、もはや出汁(だし)をとる必要すらないし、塩っ気が足りなければ、ご飯に味噌を少しそのまま添えればいいでしょう、というね。ただ経験則で言うと、豚汁みたいに肉が入らないと、やはり水だけではさすがに味噌汁にコクが足りません。なので僕はやはり自分でとって冷凍してある出汁のストックを使います。が、面倒な場合は「出汁入り味噌」が最強かつ得策かと。

なおかつ、味噌に入れる食材はトマトだろうがピーマンだろうが卵だろうが何でもよくて、あとは我が国で数千年の歴史を持つ伝統的調味料である味噌がなんとかしてくれますよという潔さ。まるで食材を放り込めばあとは鍋がなんとかしてくれるという、魔法の鍋「ダッジオーブン」に通じる概念。

そして極めつけは「こういう毎日の食事は別においしくなくてもいい」ということなんです、いやぁ~究極の理論。そりゃおいしいに越したことはないけど、おいしいという感覚自体が結構あいまいで、それは塩分だったりグルタミン酸なんかの化学調味料のおかげだったりするわけですよ。しかも、毎日毎日、おいしいっおいしいってそんな必要はないとか、今日は唐揚げ、焼き肉、ハンバーグ!みたいに「メインディッシュが必ずある」という考え方自体がすでに刷り込みかつ洗脳に過ぎないというこのアンチテーゼ、僕はしびれましたね。

ちなみに本書では、土井さんが普段食べている味噌汁の写真がふんだんに載っています。えっ!こんなんでもいいのっ!とかさすがにこれは入れないだろっ!とか突っ込みどころ満載ですが、これはものすごく勇気が出ますよね。だって、これを見れば自分でもできるって誰でも思うことができるわけですから。

まあ、毎日とはいきませんが、僕は休みに入ってからお昼はずっとこの土井さんの「一汁一菜」を実践してます。で、やってみると、簡単だししかもおいしいのでびっくりしました。ただ、なかなか土井さんの境地にはほど遠く、やはりちょっとおかずが恋しくなるので、イワシをさばいてマリネにしておいた一品を追加したりと、一汁二菜ぐらいが解脱(げだつ)してない僕には限界かと。

ともかくも、マゾヒストのおっさんたち、いつも奥様に任せてないで、この本を読んで早速「一汁一菜(いちじゅういっさい)」作ってみてはいかがでしょうか?これが生きてるってことですよ。

一汁一菜でよいという提案

一汁一菜でよいという提案

  • 作者:土井 善晴
  • 出版社/メーカー: グラフィック社
  • 発売日: 2016/10/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

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一汁一菜+(キュウリとイワシのマリネ)