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映画「マルホランド・ドライブ」

評価:★★★★★

トンデモ系映画「マルホランド・ドライブ」です、ナオミ・ワッツです、そしてデビッド・リンチ監督の得意な精神病映画の最高峰です!巷にはこの映画の解説やら謎解きのサイトがネット上であふれてますので、見終わった後はそちらを読んでもらうとして、まあ一言で表現するなれば「ナオミ・ワッツのとんでもない演技力を味わう映画」ということになりますか。紛れもなくマイベストの一本です。

あらすじはもはや説明できないので、アウトラインだけを示すと、ハリウッドで女優になることを夢見るベティ(ナオミ・ワッツ)が、あこがれのハリウッドに行って、そこでとある事故をきっかけに出会った女性リタと仲良くなって、同時にオーディションでも少しずつ芽が出始め・・・といったなんの変哲もない単なるサクセス・ストーリーを期待していると、手痛いしっぺ返しを食らってトラウマ必死のPTSDになる恐れがあるので要注意。主演の2人の女優、ナオミ・ワッツとローラ・エレナ・ハリングはどちらもとても美しいんですが、特に前半のナオミ・ワッツのかわいさや純情さがずば抜けているので、後半のその激変ぶりにショック死寸前というか。

そもそも僕のように、前提としてデビッド・リンチ監督がある種のキチガイであることを事前に知っていれば、そういう淡い期待は一切しないので心配要りません。が、例えば「ストレイト・ストーリー」なんかでデビット・リンチ監督を知って心温まるストーリーとかって勝手に勘違いしてしまった人は、かなりひどいことになると思います。

さて、特に好きなシーンですが、パーティー会場でリタが彼氏である監督とイチャイチャしているところを、ベティがずっと唇を噛みしめて睨みつけているシーンです。ほどなくベティの目から一筋の涙がす~っと流れた瞬間、どこかでグラスが割れ、はっとベティが我に返り、我に返ったあとは唖然とする展開なんだけど、とにかくこの一連の奇跡みたいなシーンはもはや神がかってます。ナオミ・ワッツのすさまじい嫉妬と憎しみの入り交じった表情を是非堪能しましょう。このシーン本当に大好きです。

それと随所に出てくる怪しいキャラもとてつもなく気味が悪くて大好きです。序盤のウェンディーズにでてくる怪しい目をした青年とか、中盤、牧場にやってくる無表情なカウボーイのおっさんとか、日本の性格俳優なんて足下にも及ばない薄気味の悪さ。この方々は本物の役者なんでしょうか。それとも異常者を雇ったのでしょうか。

ところで、未だかつて誰かが指摘しているのを聞いたことがないけど、この映画を見る前または後に、ナオミ・ワッツのブレイク前の映画「エリー・パーカー」を見ることを猛烈におすすめします。というのは、まず、この「エリー・パーカー」も、ハリウッドにあこがれ、女優を目指し、オーディションを受けまくるという設定は実は「マルホランド・ドライブ」と全く一緒で、かつ「マルホランド・ドライブ」に出てくる殺し屋が「エリー・パーカー」ではナオミ・ワッツの彼氏役だったりとか、なんかみょ~にかぶるんですよね。それとナオミ・ワッツが車の中でセリフの練習をしてて「ファッキン!△△ファッキン!」とかって連発したり、ニコニコ笑ってたかと思うといきなり怒りだしたり泣き出したりと、とにかく表情がコロコロ変わって(というか意図的に変えて)、その演技力のすさまじさにノックアウト必死です。それと車を運転しながらパンティーを脱いだり着替えたりせわしなくて、そのあげくに事故って車を降りていきなりアイスを吐いたりとか、とにかくハードでリズミカルかつ圧倒的な演技力で笑えます。なので僕は「マルホランド・ドライブ」を見た後のショック状態を中和する意味で、いつも「エリー・パーカー」を見るわけです。

ナオミ・ワッツはその後売れっ子になって色んな普通の役も演じてますが、やはり彼女の才能が一番発揮されるのは、ひたすら怒鳴ったり泣いたり絶望したりするような、喜怒哀楽が爆発し続けるようなキャラだと思います。普通の奥さん役とか腕利きのスパイ役なんかに彼女はもったいなすぎて、もっとクレイジーでガイキチな役を強く希望します。

ともかく、女優志望とかって軽々しく口にする人たちは、この映画を見てナオミ・ワッツに完膚無きまでに打ちのめされればいいと思ってます。これは絶対にマネできませんし、女優とは本来こういうものなんだという神髄を知るにはいいかも。