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映画「ボーイズン・ザ・フッド」

評価:★★★★★

さて、黒人ストリートギャング映画の最高峰「ボーイズン・ザ・フッド」です。これもマイ・ベストの一本ですが、そもそもこのブログ自体、僕が多大なる影響や衝撃を受けてぶっ飛んだ映画を中心に紹介していますので、記事に書いた映画はどれもハズレなしだと思ってますし、是非機会があれば見ていただきたいモノばかりです。

基本的に僕の場合、10本見て1本いい映画に出会えればもうけものという確率なので、これまでの人生で3,000本以上見ているとすれば、まあ、最低300本が厳選された映画という計算になります。その300本を紹介するためにこのブログを始めたわけですので、何年かかっても達成したいと思ってます。

さて「ボーイズン・ザ・フッド」ですが、ロサンゼルスのサウス・セントラル地区を舞台に、黒人、ストリートギャング、抗争、暴力、ドラッグ、友情、そしてリベンジ、といった僕の大好きな題材のすべてが詰まった映画で、スカッとしたいときによく見ます。

主人公のトレ(キューバ・グッディング,Jr)は、比較的裕福な山の手の母親と一緒に暮らしていたんだけど、小学校で問題を起こしてばかりなので、とうとう母親から最後通牒をつきつけられ、治安の悪い下町(黒人貧困層地域)に住む父親と一緒に暮らすことになって、そこで様々な事件や出来事に直面しながら、青年から大人へと成長していく・・・と書くと、なんかこっぱずかしい、みょ~に優等生っぽいウィル・スミスみたいな成長物語だと勘違いしちゃいますが、この映画はそんな生やさしいものじゃありません。すこぶるハードコアで随所でギャングスタしてるんです。

基本的に、ヒップホップを題材にしたエミネムの「8 Mile」やトゥパックの伝記映画「All Eyez On Me」のほか、ヒップ・ホップ抗争やディスり合いを取材した「トゥパック:レザレクション」「ビギー&トゥパック」「ノートリアスBIG」「BEEF」「ウェルカム・トゥ・デスロウ」なんかのドキュメンタリー映画は結構あるけど、黒人ギャングの抗争を描いた映画って実はそんなに多くないので、その意味で非常に貴重というか。

とにかくかっこいいのは、トレの幼なじみのダウボーイ役を演じたアイス・キューブさんで、これが実は初の映画出演だったらしいんですが、演技ハンパないですハイ。この頃はまだ腰パンがはやってない時代なので、そこまでダボダボじゃないデニムにトレーナー着てキャップをかぶってスニーカーを合わせるスタイルなんですが、今のHIPHOPファッションよりも断然おしゃれで好きですね。それとアイス・キューブの刈り上げずにもみあげまで伸ばしたスパイラル・アフロみたいな髪型とヒゲとピアスがギャングスタしててかっこいいです。そのくせ劇中では意外と「世の中いい加減なやつが多すぎる!」とか「母親はガキから目を離すな!」とか、結構いいことをいうんですよね、だったらヤク売るなよ!と突っ込みたくなりますが、このギャップがダウボーイというキャラ形成に一役買ってます。

ダウボーイはいつも悪そ~な仲間とつるんでて、全く働いてないし昼間から酒飲んでヤクを売ったりしきりに銃をいじったりしているのでおそらくこの界隈を仕切るストリートギャングなんでしょう。そして、このコンプトン地区には他にもそういうグループがたくさんあって、仲のいいグループもあれば反目するグループもあって、ちょ~くだらないイザコザですぐにボルテージがMAXまであがりあっという間に殺し合いまで発展します。

なかでも、ヤバいのは赤がチームカラー?のギャング団、クレンショー組で、こいつらも見るからに悪そうなやつばかりでちょ~怖いです。こいつらが家の前にいたらまず間違いなく警察に通報するというか、まあ、絶対に関わりたくないです。特にボス的なロン毛にニットキャップのフェリスはかなりのガイキチで、図体もでかいし、町中でいきなり機関銃をぶっ放したりやりたい放題でしかも27才という、高齢化した暴走族みたいな設定で笑えます。まあ、トレとかダウボーイが17才という設定ですから、その視点で見るとオッサンがいつまでもヤンチャしてんじゃねえ~よという感覚でしょうかね。

そして、クレンショー通りにそういうギャング団がたんまり集まってバカ騒ぎしている中、いきなりケンカになってお互いに「ビッチ!」とかってディスりあうシーンも大好きですが、その前哨戦も含め、そこから終盤まで一気に突っ走るアイス・キューブの一連のシーンが最高で、最終的には体中に心地よい?カタルシスが存分に染み渡るわけです、僕の場合ですが。まあ、賛否両論はあるんですが、僕は断然ダウボーイ(アイス・キューブ)の決断を支持しますね。

つまり、この映画の主役はあくまでもトレではあるんですが、僕はむしろアイス・キューブの演じたダウボーイ視点でしかこの映画を見てなくて、まあトレが彼女といちゃついたり、親父と語り合ったりするシーンは嫌いではないけど、なぜかあんまり心惹かれないんですね、むしろどうでもいいというか。

ちなみにこの映画では、トレがいいとこのぼっちゃんで、アイス・キューブが根っからのストリートギャングという設定になってますが、笑えるのはアイス・キューブも現実には裕福な家庭で結構いい教育を受けて大学まで行っていて、ストリートギャングであったことは一度もないというところでしょうか。なのでなおさら劇中でのあのギャングスタぶりがホントにすごいんだけど。

あと、僕も大好きな映画「スタンド・バイ・ミー」の死体を見に行くというエピソードを徹底的に皮肉るシーンが冒頭にあって笑えます。ジョン・シングルトン監督が「オマイら白人の世界だと死体はそんな珍しいか?ここコンプトンだとしょっちゅうだぜ!」と宣言しているかのようですね。

最後に予備知識として、このアイス・キューブHIPHOPグループであるN.W.Aを仲間と結成して成功し、その後内輪もめで崩壊するまでを描いた「ストレイト・アウタ・コンプトン」も最高にクールな映画です。この映画の中でアイス・キューブ役を実の息子のオシェア・ジャクソン・Jrが演じてるんですが、まあ息子なのですごく似てるし、しかもハンサム度が上がってるのでちょ~かっこいいんですよね。その映画の中で、この「ボーイズン・ザ・フッド」に出演しているアイス・キューブのシーンなんかもあって、仲間に「おまえの映画よかったよ!」とかってからかわれたりとか、話が繋がって楽しめますので、ぜひ一緒に見ることをおすすめします。

ボーイズン・ザ・フッド [DVD]

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