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映画「ラストウォー1944 独ソ・フィンランド戦線」(フィンランドもの)

「ラストウォー1944 独ソ・フィンランド戦線」(評価:★★★★☆)

いやいやまたすっかりDVDのジャケットにだまされてしまいましたですハイ。この映画のジャケットをみると、銃を持って叫んでいるドイツの将校(確かにこいつは出てきますが)の姿があって、かつ副題も「独ソ・フィンランド戦線」とかって、モロに「戦記もの」というイメージを前面に押し出していますが、はじめに断っておきますね、もう大嘘もいいとこで、全くドンパチやらかす戦争映画ではありませんのであしからず。それにしても、この将校の奥にいるもう一人の片膝ついて銃を構えているやつは一体誰なんでしょうか?

あのう~どうしてこのトランスワールドアソシエイツとかいう会社の方、捕まらないんでしょうか?

でまあ、ボクも一旦は驚愕して「こぅのぅ・・・ホモ野郎っ!!」と怒り心頭でDVDを窓からフリスビーよろしく投げ捨てそうになったわけですが、いやいやどうして、なんともはや、実はものすごくよくできた素晴らしい映画ではないですか。正直、別の意味でびっくりしましたね。

この映画って、時は第二次世界大戦時、ドイツとは中立を保ち、むしろ支援する側に回っていた北欧(ノルウェースウェーデンフィンランド)の右側の国、つまりフィンランドの物語なんです。そういう中立を保った国内では、ナチスは一体何をしていたのか?そして、フィンランド人たちをどのように扱っていたのか?といったことが、この映画を見るだけで学べてしまうわけです。

この映画を一言で言ってしまうと、フィンランド人の片田舎に住む女性が、ある日出会ったドイツ人将校に一目惚れし、その彼との関係性を深めながら、戦火の中を生き抜いていく、という物語なんですね。現実にも、こういう現地(フィンランド)人とドイツの軍人との馴れそめは多かったようです。

だって、地元の田舎くさいフィンランド人なんかより、軍服にびしっと身を包み、精悍な顔立ちをしたアーリア人というのは、その行いはともかくとして結構モテたに違いありません。

で、この主演を演じた女優さんなんですが、なんとな~く不思議な魅力のある女優さんで、出てきた当初はおそらく誰もがこの女優さんを男だと思うはずです。で、しばらく見てると女性であることに気づきます。ただ、最初はものすごくヤボったく感じます。しかししばらく見ているとかわいく見えてきます。そして終盤はすごく美しく見えてくるんです。なんなんでしょうかこの女優さんは?もしも監督さんがこれらの一連の流れを意図的に試みたんだとすれば、これはもう巨匠と呼べるレベルではないでしょうか?

そして、随所で挟みこまれるフィンランドの山々とか森林とか夕日の映像が超絶に美しいんです。もう、ものすごい映画!これこそが本当に美しい映画で、まちがっても「ムーンライト」みたいな小手先感満載の作品なんかじゃないですよ(嫌いではないですが)。

しかも、この女優さんがテキパキと色んな仕事をこなすんですが、そのときの黒いエプロン?とか黒いスカーフ(ずきん?あるいは布でしょうか)を頭にぴしっと巻いたりして、確かにイスラムみたいではあるんですが、めちゃめちゃクールなんです。フィンランドの女性陣って黒が基本なんですかね。またその黒い服が白い雪と対になって、ものすご~く引き立つわけです。なんか、この女優さんとそっくりな子が主人公のマンガをどっかで読んだ記憶があるんですが、どうしても思い出せませ~ん。

ただ、当時のフィンランドは非常に貧しくて、まあ信じられないような風習が色々と残っていて、今の我々からする衝撃的なことを、そこいらのおじさんやおばさんが平気でやったりします。今みたいに権利!権利!の世の中からすると、もうメディアからは徹底的に叩かれることまちがいなしでしょう。

なお、この映画がこれまで紹介した映画と大きく異なるのは、このフィンランドという国がナチスドイツと同盟関係にあった(枢軸参加国)ということなんですね。つまり、この主役の女性はフィンランド人なので、ナチス相手でも堂々と言いたいことを言っても、さすがに最悪、殺されるまでには至らないわけです。なので、ナチスフィンランド人に対しては早々勝手なことはできないし、まあそういう事情も手伝って、ナチの将校と恋に落ちる現地人が多くいたんではないでしょうか。

ただ、当時ナチと交戦中だったソ連兵なんかの捕虜やユダヤ人に対しては、通常通り残虐行為が普通に行われます。そしてその処刑とかの最中に、平気でその前をこのフィンランド女性が横切ったりするので、もう見ててハラハラドキドキ、心臓に悪いです。

もう一つ強調したいのは、やはり大戦下における一連のナチのやり方に疑問を抱いた(ドイツの)軍人さんたちも結構いて、この映画でもそういう兵士の葛藤が描かれているんです。まあ確かなことはわかりませんが、現実でもきっとそうだったと信じたいですね。まちがっても先に紹介したヒトラーと戦った22日間のように、いくらナチとはいえ全員がガイキチのクズばかり、ということはあり得ないように思います。

ただし、基本的に軍隊は上官の命令が絶対ですから、日本の公務員みたいに上からの命令に背くことは許されません。また人間は、なぜか命令するよりもされる方を望む人が大多数のようで、そのことは権威者の指示に従ってしまう人間の心理を調べたミルグラムの実験」で明らかになっています。それを証明する事柄として、ナチスホロコースト(フランス読みでは「SHOAHショア」)のような悲劇・惨劇があるわけですが、じゃあ、それに対抗するためには一体何が必要なのでしょう?

それはやはり、理性しかないのではないでしょうか?この残虐な命令に打ち勝つためには、どう考えても理性的に判断したうえで、直ちに中止すべきなんです。なのになぜか、それができる人間は圧倒的に少数なはずです。なぜなら、大多数の人間が同調圧力に弱く、命令されることを好むからです。そしてその比率は、戦後70年を経た現在でもあんまり変わってはいないように感じますね。特に我が国のテレビやマスコミが大好きな国民を見てるとまさにそう感じます。

なのでそろそろ、不条理かつ理不尽な命令しか出さない上司のおっさんに、理性で対抗してみてはいかがでしょうか?「部長!話、長いっす」「部長!それ100パ無駄っす!」「部長!一生テレワークしててください!」などなど(これって理性?)。

 

(補足)最近、世界史の勉強に着手しました。手始めに世界史に詳しい方のブログで紹介されていた「一気にわかる世界史」を買いましたが、まだ最初しか読んでませんが、面白いです!

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