GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

MENU

映画「トレーニング・デイ」

評価:★★★★★

これまたものすごい映画です。ジャンル的には刑事モノまたは麻薬捜査官モノなんですが、ギャングあり、警察上層部の腐敗あり、新人の成長ありで、まちがっても一つのジャンルでは括れません。しかも、見終わって気づくのですが、これは実はたった一日の出来事を描いた映画なんですね。つまり24(トゥエンティー・フォー)みたいな。ものすご~く内容の濃い一日なんです。きっとこんな一日を体験してしまったら、2~3日は起き上がれないといったような。

まあとにかく、主演のイーサン・ホークデンゼル・ワシントンがすばらしい。イーサン・ホーク演じるジェイクは、麻薬捜査課に配属になったばかりの新米刑事で、そのヘタれ具合がいいんです。イーサン・ホークは「今を生きる」からのファンですが、結局「今を生きる」の中で未だに売れてるのはイーサン・ホークだけで、あとの皆さんはどこかに行ってしまいました。

対して、上司役のアロンゾをデンゼル・ワシントンが演じているんだけど、おそらくこの映画まで本格的な悪役をやったことはなかったと思います。まあ、この映画の場合、ほんとに悪役なのか?と問われると、そうとは言い切れないところが微妙なんですが。

それまで、僕の中でのデンゼル・ワシントンはどちらかというと優等生的イメージが強かったので、この映画を見たときにはそのギャップにぶっタマげましたね。一言でいうなれば、本物にしか見えない、といったところでしょうか。麻薬捜査課の有能なリーダーで、目的のためならば規則を破ることもいとわないというポリシーがもう大好きです、しびれますね。

結局のところ、イーサン・ホークのヘタレ具合と、デンゼル・ワシントンの常に余裕たっぷりなスタンスが絶妙にハマリ合うことで、物語に陰影を与え、かつその相乗効果によって、刑事物でもバディームービーでもない形容しがたい作品として奇跡的に成立しているように感じます。そしてそれはキャスティングの勝利であって、演技力のハンパないこの二人だからこそ実現できたというか。

特に好きなシーンは、アロンゾが新人のジェイクに無理矢理ヤクを勧めるシーンです。ジェイクが何度もいやがって断り続けるんですが、そうすると道路の真ん中でいきなり車を止め、やおら銃をジェイクに突きつけ「麻薬捜査官が潜入捜査中にヤクを勧められたらオマエは断るのか!」とか、クラクションを鳴らしてくる後続車に向かって「Shut the fuck up!!うるせえ!黙ってろ!」とかって怒鳴り散らしたりとか、もう完璧に狂ってます。パワハラどころか犯罪ですね。まあ、言ってることは筋が通っているんですが。

それと大好きなのが、二人がサンドマンという売人の家に家捜しに行くシーンで、違法捜査なのでサンドマンの奥さんが「ふざけんな!」とかって騒ぎ出すんだけど、そうすると周りにたむろってるストリート・ギャングたちがぞろぞろ集まってきて銃撃してくるんです。そして、その時のギャングのほとんどが「腰パン」なんだけど、パンツ丸出しなのが普通で、中にはぎりぎりおしりの割れ目の上まで見えてるやつがいたりとか。しかもズボンがかろうじて股に引っかかってる状態なので、それが絡まってちゃんと走れなくてなかなか二人に追いつけないという。なお、最近日本ではこの腰パンはあまり見かけなりましたが、日本の若者もここまでしないとダメという教科書のようなシーンです。

あと、アロンゾ率いる麻薬捜査課のチームの面々も大好きです。みんな悪そうでとても刑事には見えないし、一癖も二癖もありそうな輩ばかりで、全く信用できません。アロンゾが言うように「オオカミに勝てるのはオオカミだけだ!」というポリシーとぴったりマッチしていて説得力が増します。

ともあれ、この映画に出てくる黒人ギャングとかチカーノ(メキシコ系)ギャングはほんとに怖くて、こんな怖い人達の前で演技すること自体が拷問というか。たぶん、本物の方々もかなり雇ったのではないでしょうか。そして、その意味で、これらの大量にいるギャングを食う演技を見せるデンゼル・ワシントンさんは本当にすごいです。

あと、チカーノ・ギャングのスマイリーを演じたクリフ・カーティスさんは、ジョニー・デップ主演の「BLOW(ブロウ)」でパブロ・エスコバルを演じていたりとか、ものすご~く味があって色んな役のできる俳優さんです。ほか、レイチェル・ワイズ主演の「ニューオーリンズ・トライアル」なんかにも出ていますが、最初は彼だと全く気がつかないのがやはりすごい。ちなみにどちらも最高の映画ですね。

まあ、見所満載で、麻薬捜査課を一日体験入学したい方、本物の腰パンを体得したい若者にはおすすめです。あ~アロンゾの若かりし頃とかカジノでの一件のサイドストーリーを作ってほしいですね。

トレーニング デイ 特別版 [DVD]

トレーニング デイ 特別版 [DVD]