さてさてこのゴールデンウィークですが、みんな大好き?A24の製作・出資・配給映画を立て続けに観ました。A24というのはアメリカのニューヨークにある映画プロダクションのことで、映画の製作、出資、配給を行う会社なんですね。
多分よく知られている作品としては、アカデミー賞を受賞して以前ボクもブログに書いた「ムーンライト」や、ハーモニー・コリンの「スプリング・ブレイカーズ」なんかがあります。
なんか最近とくに、BRUTUSとかPOPEYEなんかの映画特集でも「A24の映画がすごい!」とか「これからは映画は制作・配給会社で選ぶ時代!」とかって過剰にもてはやされてますので、本当にそうなのか?それトゥルースなのか?ってことで、立て続けに以下の4本を見て検証してみましたですハイ。
①「The Last Black man in San Francisco」(評価:★☆☆☆☆)
②「アンダー・ザ・シルバーレイク」(評価:★★★★☆)
③「Mid 90s」(評価:★☆☆☆☆)
④「20センチュリーウーマン」(評価:★★★☆☆)
で結論から言うと、あまりにも当たり外れがデカすぎるプロダクションってところだと思います。
だってまず①の「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」ですが、もうクソつまっ!単に不法侵入の自己中な黒人をスケボーに乗せてスロー映像で美化してるだけじゃないっスか先輩!もう狙いすぎで、冒頭の意味不明な防護服を着たやつらとか、そもそも物語が成り立ってないのに、そこに意味ありげなスローモーション映像を多用して、さらに主役を際立たせるためなのかギャングスタ系の黒人を5人ほど意味なく登場させて、もう全く意味不明。観る価値ゼロでした。
要はとある黒人が元々住んでいた家を取り戻したくて、すでに他人が住んでるにも関わらず、勝手に不法侵入してペンキを塗ったりして執拗にその家の手入れをしたり、もう自己中きわまりない物語です。はじまって5分でこいつが警察に捕まってくれれば映画として成立しなかったのは言うまでもありませんが。
で、次の「アンダー・ザ・シルバーレイク」ですが、これは予想に反してものすごく面白かったです。ただ、物語自体はかなりわけがわからなくて、広げた風呂敷やまき散らした伏線の8割方は回収されませんが、別の意味でディビット・リンチ作品をもっと明る目に再構築したような作りで、最後までハラハラ・ドキドキ、最高に楽しめました。
要はハリウッドの近くに位置するシルバーレイクという街で、ある無職の青年が同じアパートの女の子に恋をして、その子が忽然と姿を消してしまい、あとはその子を探し回るだけの話なんです。で、途中、車に傷を付けるガキとか、ドッグキラー(犬殺し)とか音楽家とかわけのわからない奴らがたんまり出てきて、そいつらがこの青年にボコられたりして、その意味すらわからないままに物語は進行しつつ、少しずつ色んな謎が明らかになってくるという。
なんでしょうか、こういうストーリーでも映画として成立しているのが素晴らしいし、ある意味、今後も語り継がれるものすごく革命的な映画ではないでしょうか。あっ、唐突に思い出しましたが、僕の大好きなポール・トーマス・アンダーソン監督の失敗作で、ホアキン・フェニックス主演のクソ映画「インヒアレント・ヴァイス」もきっとこういう方向を目指していたのかもしれませんが、その出来は遙かにシルバーレイクの足下にも及びません。それほどにシルバーレイクの方は素晴らしい映画です。
なんかの記事で「トマス・ピンチョンも真っ青のストーリー」とかって書いてあったので、あらためてトマス・ピンチョン、読んでみようかな~と思いました。
で、問題の「Mid 90s」ですが、なにが「90年代愛に溢れた映画」だよ!ふざけんな、金返せ。もう最低のクソつまクソはったりクソファッション系くそ雰囲気ムービーの最高峰!と言っても過言ではないほどのクソさ。
なんか「これが今(1990年代)のアメリカのリアルだぜ!本物のロスだぜ!これがストリートだぜ!」とでも言いたいのでしょうし、その鼻息の荒い気持ちもわからないではないですが、まずこの主役の12歳くらいの子供は必要だったんでしょうか。どうせオーディションで選ばれた中流階級の子役なのかは知りませんが、まずこの少年というか子供がかわいすぎ!で、そもそもこんな風にいつもニコニコしてる子が「自分の居場所がないっ」とかって設定が嘘くさいし、さらにこいつのアニキが最低のクズ野郎で何か気に入らないとすぐにこのかわいい子をボコボコに殴ったりして、かと思うといきなり泣き出したりとかってもうっ。・・・あのぅ~意味わかる人いますか~?
で、このアニキが貧乏のどん底かというと別にそうではなく、洋服とか帽子(キャップ)とかスニーカーとかたんまり持ってるんですよ。何一つ不自由していないわけでして。
なので、まずこの兄弟が何でそこまでフラストレーションをためているのかが理解不能。そして、この主役のかわいい子が、スケボー大好きな年上の17歳くらいの少年達の仲間入りをして、一緒になって酒飲んだりタバコ吸ったりマリファナ吸ったりとかって、どうしてそれがストリートなんでしょうか。
で、じゃあ家庭環境が崩壊しているのかと言えば、この兄弟の一人親であるお母さんはすごく優しいし、子供たちをいつも心配して気にかけてるので別に忘れられているわけでもなく。あのぅ~すごくいいお母さんだと思うんですが~かんとくぅ~。
まあそんなわけで、子供達にスケボーやらせてそれをスローモーションにしつつ、さらにタバコ吸わせて酒飲ませればもうそれだけで青春ストリート映画のできあがり!みたいな安易なノリだけのふざけた悪解釈がボクには看過できませんでした~。
とにかく、これを作った人たちはもう少しマジメに真剣に「アウトサイダー」とか「ボーイズン・ザ・フッド」を観た方がいいですよマジで。特にアウトサイダーのジョニーなんてもはや完璧に両親から無視されてゴミ扱いだし、ボーイズン・ザ・フッドのダウボーイなんて母親から愛されるどころか逆に憎まれてますからね。
ただ唯一の救いは、この映画に出ていた少年たちはそれなりにいい演技をしてましたので、あとは出る映画を選んだ方がいいかと。
で最後は、エル・ファニングちゃんの「20センチュリーウーマン」なんですが、これって1979年が舞台の映画なんですね。僕は現代ものかと思ってました。で、主演はアネット・ベニングおばさんなんですが、やはり大スターだけあって、顔にシワが増えておばさん化が進んでも、やはりものすごく魅力的です。
表情がころころ変わるし、セリフの間の取り方とか、話し方とか、ものすご~く上手ですね。こういう表情を演技として自然に実践できることがすばらしい。で、彼女の息子役をルーカス・ジェイド・ズマンという青年が演じてますが、彼がまたいい演技をしてるんです。
要は家族ものつまりは母と子の親子の物語で、そこに幼なじみのエル・ファニングや下宿人の年上の女性や大工のおっさんなんかの色んな人たちが絡んでくるという設定で、彼らの会話の掛け合いが非常に楽しいです。なんとなくイーサン・ホークとジュリー・デルピーの「恋人までの~」シリーズに共通する楽しさで、やはりそこはアネット・ベニングの素晴らしさによるところが大きいと思いました。
一方、エル・ファニングちゃんですが、彼女は顔とかもパンパンで、一歩間違えると子豚みたいなドブスになりかねないところを微妙にどうにか保っているというルックスではないですか。まあ、その一歩間違えるとドブスラインを絶妙に保持している危うさが人気の秘密なんでしょうか。ある意味、ハリー・ポッターシリーズの美少女エマ・ワトソンちゃんは対極の美しさという。
ただ、この映画の唯一の欠点は、やはり先の「Mid 90s」と同様、 その主演の少年達の切実さがひとかけらも伝わってこないという点です。要は彼らが悩んだり荒んだりするほどに貧困ラインギリギリの生活をしているわけではなく、むしろ中流以上の生活をしていて別にそこまで追い込まれる必然性がないわけです。
つまり映画としての前提条件がすでに間違っているので、そこを必死に、タバコ、マリファナ、酒、そしておきまりのスケボーを出すことでうやむやにしてしまえ!という作為的かつ安易な手法が映画そのものを台無しにしてしまうというような。
まあ、この4本だけではA24映画の判断はできかねますので、借りてきた残りの4本も早速見てみようと思ってます。では皆様も良い週末を!