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映画「バニシング・イン・60」

評価:★★★★★

アメリカを代表する伝説のカーキチ、H・B・ハリッキー監督の「バニシング・イン・60」です。まあ、大丈夫だとは思いますが、間違ってもニコラス・ケイジ主演の「60セカンズ」を借りないように気をつけてください。全くの別物です。

この映画もマイベストの一本で、当時、生まれてウン十年たって、この映画を知らなかった自分に怒りすら感じたのを覚えてます。もしも映画好きを公言する人でまだ未見の方がいれば、いますぐTSUTAYAへGO!!

簡単にいうと、車の修理屋でかつ車の事故なんかの保険の調査員でもある主人公(ハリッキー)が実は単なる車泥棒で、「60秒でどんな車も盗み去る!」と豪語する小悪党なんだけど、そのくせ保険のかかってない車は絶対に盗まないという、チンケな美学を持っているんですね。で、ある日、高級車やレア車ばかりを40台集める仕事を受け、仲間と一緒にその仕事に取りかかるという物語なんですが、見るときはこのブログの文章すべて忘れてしまって構いません。

そもそもこの映画はストーリーなんて二の次で、黄色いマスタングが町中をものすごい爆音とともに猛スピードで走り回り、分離帯とか店とか車とかの物体に散々ぶち当たって、ぶっ壊れて、吹っ飛んで、ボロボロになって、それでも走り続けるという、アメ車の限界に挑んだような、ひいてはアメリカの自動車産業を賛美するかのような、すさまじい映画なんです。

しかも、この映画はハリッキーが監督・脚本・主演を兼ねており、私財をなげうって完成させたそうで、すでに70年代初頭に「Buffalo '66」のヴィンセント・ギャロみたいなとんでもない人がいたんですね。いや~アメリカという国は本当にすごい。しかし、このハリッキーさん、「バニシング・イン・60」の続編を撮影中、スタント時に亡くなってしまったんです。たぶん生きていれば、きっとものすごい映画を量産したんでしょうが、本当に残念でなりません。

そもそもカーチェイス映画は色んなのがあって、例えばスティーブ・マックイーンの「ブリット」とか、マット・デイモンの「ボーン・アイデンティー」、デニーロの「RONIN」とかがわりと有名だし、あとほぼ見てないけどポール・ウォーカーの「ワイルド・スピード」シリーズとか、まあ掃いて捨てるほどあります。が、それら全部ひっくるめても、この映画には到底かないません(そういえば、ポール・ウォーカーも事故で亡くなってしまったんでした。残念)。なぜなら、カーチェイスシーンがなんと40分もあって、映画史上まだこの記録は塗り替えられていないそうですが、一体だれがそんなバカな映画を作るんでしょうか。

しかも、映画の中には本当に事故ったシーンも含まれていて、ハリッキーも実際にケガしたんだそうです。日本だとすぐ「安全管理は徹底してたのか!」とか「しかるべき許可をきちんと取ってたのか!」とかってすぐ問題になりそうですが、おそらくハリッキーさん、無許可も結構使ってるんじゃないでしょうか。

そもそもクロード・ルルーシュ監督(しかし名前がかっこいい!)のたった9分間の伝説的短編映画、「rendez-vous(ランデヴー)」も無許可ですし。こちらも早朝のパリをフェラーリが爆走するだけのふざけた映画なんですが、撮影は一発勝負だったようですし、カーキチは許可とか安全の対局にいるのではないでしょうか。興味のある方はyoutubeでどうぞ。

好きなシーンは冒頭の車の中のシーンで、ダッシュボードの上にサングラスが5つ置いてあるシーン、しかしかっこいい!。これはタランティーノがなんかの映画でマネしてたように思います。たしか「フロム・ダスク・ティル・ドーン」だったかな?確証はありません。これは車持ってたら絶対マネするのになあ~。

もう一つは、ハリッキーが盗んだ車の横を、ゆっくりとタバコをくゆらせ、窓についたゴミとかをいちいち取りながら、一台一台じっくりと眺め歩くシーンが逸品です。ただ、そんなにかっこつけても所詮は盗んだ車だろ~が!と突っ込みたくなります。が、ハリッキーさんは本当にかっこいいんですね。普通の役者としても男前なんです。

なお、タイトルクレジットでキャスト(starring)に「ELEANOR(エレノア)」と表示されたときは震えましたね。つまりはこの映画の主演はハリッキーでも誰でもなく、マスタングだ!という信念がすばらしい。いや~車愛ですねえ~。

あと窃盗仲間のサングラス姿がみんなかっこいいのと、ハリッキーがユージーンとケンカばかりしてるのも見所ですね。

さて、伝説のカーキチ映画、当然必見ですが、レンタル屋には「バニシング・ポイント」とか「バニシング・イン・ターボ」とか似たタイトルの映画がたくさんあるので、必ず後ろを見て、ハリッキーが監督であることを確認しましょう。

ちなみにハリッキーの第二作「ジャンクマン」は、この映画を切り貼って作っているので、シーンは同じモノが多いし、繋ぎもよくないので、ほぼ見ないで大丈夫です。 

バニシング IN 60 [DVD]

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