GIGI日記~映画とか本とか~

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映画「エイプリル・ソルジャーズ」ほか(デンマーク抵抗もの)

①エイプリル・ソルジャーズ(評価:★★★☆☆)
②誰がため(評価:★★★★★)(2019/5/25解説済)

ナチス占領モノもたくさん見てます。その中でも、1940年4月にわずか一夜の戦いで占領を許したデンマークが舞台の映画を挙げてみました。①がドイツ侵攻時のお話で、②がドイツ占領後のお話という流れになります。

そもそもデンマークという国は、ドイツの北側に突き出たユトランド半島北部に位置する小国で、地図を見てみるとこの国がドイツと地続きでつながっていて、なのに北欧の一国に数えられること自体、なんとなく不思議な感じがします。

で、たった一夜で降伏し、自国をドイツに明け渡してしまったデンマークですが、その一夜に国境付近では一体どんな戦闘やドラマが繰り広げられていたのか?それを描いたのがこの「①エイプリル・ソルジャーズ」なんです。

が、もう冒頭から度肝を抜かれること請け合いです。というのは、まず、ドイツ軍の動きを監視していた国境警備隊ですが、そいつらは小さな掘っ立て小屋にたった2人しか詰めてません。で、こいつらはタバコ吸いながらだるそうに「あっ、なんか、ドイツ軍の動きが活発だすっ」とかって呑気に報告してるんです。この戦時下に。

まあそれはともかくとして、その直後にドイツ軍が国境を越えて侵攻してくるわけですが、それを向かい撃つは、なんと、その名も高きデンマーク軍の誇る「自転車(じてんしゃ)部隊!」という暴挙。あのぅ~一体どうやってドイツの頑丈かつ機敏な装甲車を自転車部隊で食い止めるというのですか?

そもそも、この自転車部隊の隊員らもドイツ軍が攻めてくるとは全く考えてはいなかったようで、訓練中に軍曹が「よし、では1分30秒以内でパンク修理だっ!」とかって命令しても、「そんなの無理に決まってんじゃん・・・」などと、軍人と言うよりはピクニックに出かけた学生的な立ち位置でして。

少なくとも、デンマーク軍って、軍隊という割にはものすごく緩いし、上官も比較的優しいので(怖くないので)、もうはじまって10分ぐらいで、この若い兵士達が皆殺しにされてしまうかもしれないという不吉な予感が脳裏を離れませ~ん。なんかとんでもない残虐非道かつ不条理な弱い者いじめ映像が今にも画面いっぱいに繰り広げられそうで、もう心臓がバクバクドキドキ心配になります。

しかし、まあそこは、優秀な少尉の奮闘でどうにか回避されるわけですが・・・。それと、自転車部隊の隊員達がせっせと自転車に機関銃とかの武器をくくりつけたり、車列を乱さずに走行したり、山林の中を自転車を担いで登ったりと、意外にもそういうシーンがかなり新鮮で、まさに自転車部隊に焦点を当てた映画としては世界初の快挙ではないでしょうか。

そういう視点からすると、この映画は非常に画期的とさえいえるかもしれませんが、とにもかくにも隊員が学生にしか見えませんので、題名は「エイプリル・スチューデント」の方がよかったように感じます。

で、この映画の続編的な意味では、つまり占領後のナチ統治下のデンマークはどうなってしまったのか?ということが気になりますが、それは以前、このブログで絶賛しましたレジスタンス映画の最高峰「②誰がため」を見るしかないでしょう。このナチ支配下にありながら、勇敢にも反旗を翻したデンマークの伝説的英雄、フラメンシトロンのはかない生き様を描いています。まあとにかく、このフラメンの佇まいがもう最高にクールでかっこいいんです。

で、最近気づいたのは、こういうレジスタンス達っていうのは、要は軍人ではないので軍服を着てないわけです。かといって小汚い格好をしているわけでもなくて、スリーピースのスーツ着て、ちゃんとネクタイもして、サスペンダーしめて、帽子かぶって、といった風に、大半は紳士然としたファッションでキチっと決めているわけですよ。

まあボクなんかからすると、そんな格好でよく戦えるよなあ~とかって思いますが、そんなフォーマルなファッションなのに、ナチが怪しい動きをするや否や、懐からおもむろに銃とか軽機関銃を取り出して、ナチに向かってズダダダダダダダダダダダダダッッッ!と一斉射撃をカマすシーンはもう最高のカタルシスであること必死!!ちなみにそういうシーンは、今回紹介した「エイプリル・ソルジャーズ」では皆無ですのであしからず。

まあとにかく、ルックスとか人気だけで映画の主演を決めているようなお子ちゃまな日本映画界では絶対にこういう名作は生まれませんね。映画の文法そのものが異なっているとしか言いようがありません(ジャニーズとか変なアイドルとか、みんな光の中に消え去ってください)。

ともあれ、この2本ですが、是非続けてみることをおすすめします。

誰がため [DVD]

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  • 発売日: 2010/06/25
  • メディア: DVD