GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

MENU

料理「ピェンロー(偏炉鍋)」

いやいやかなり期間が空いてしまいました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

10月の長期出張というタスク(任務)を終えたと思いきや、11月のプチ出張(1週間です!)、そしてそれが終わると年内最後のイベントを昨日終え、ようやく一息つき、年末モードになってきました。しかし、そんな多忙な毎日の中で、欠かさずも本と映画はそれぞれ10本以上読んだ(見た)でしょうか。やはり、これが僕のエネルギー源なんですね。その話題は後日書くとしますが、今日は一つ、ほとんど記事のないマイ料理について紹介します。

皆様は「ピェンロー(偏炉鍋)」という最強の鍋料理をご存じでしょうか。この料理が日本でメジャーになったのは、妹尾河童さんという作家さんが「河童のスケッチブック」という本で紹介したのがきっかけなんですね。意味は「中国の片田舎の素朴な鍋」といったニュアンスだそうです。

最初に作ったのは今からもう10年ほど前でしょうか、冷蔵庫に大量の白菜、鶏肉、豚肉、シイタケしかなくて、適当にネットで作れる料理を探していたら行き着いたように記憶してます。しかし、それ以来、我が家の冬はもうこのピェンローなくしてははじまりません。白菜が出回る季節は、もう30回は食べますかね、我が家の鍋料理で堂々の一位の座をもう10年は保持しています。

さて作り方はネット上で調べればすぐに出るかと思いますが、我が家流を紹介しておきましょう。食材は上記のほか、「木綿豆腐」と「緑豆はるさめ」があればもう最強です。それと絶対に欠かせないのが安い「ごま油」!業務スーパーででかいのを買っておきましょう。

【食 材】白菜、シイタケ、鶏肉、豚肉、木綿豆腐、はるさめ
【調味料】ごま油、コショウ、粗塩、一味唐辛子(七味ではないので注意!)
【備 考】食材の量は適当です。好きなものをたくさん用意した方がいいですが、鍋なので足りなければ追加するだけ。けど、白菜は葉の青い部分がたくさんある方がおいしいです。鶏肉はささみ以外で、豚肉もコマ肉でもOKですが、やはりバラ肉の方が格段においしいかと。

で、下に我が家流の作り方をお知らせしますが、多少違っても味にほぼ違いはないと思います。だってこの料理の醍醐味は「味付けをしない」ことなんですから!!つまり味付けは、各自が食べるときに「粗塩」と「一味唐辛子」で調整するものなんです。なので、作る人間に一切責任は無いというね、こんなすばらしい鍋はほかにありません。

【作り方】
①シイタケを水で戻す。普通のシイタケなら適当な大きさに切る。水に昆布を入れてもOK。
②白菜を緑の葉の部分と白い部分に分けて、白い部分をみじん切りにする。実はこの行程が一番大変で、逆に言うとこれが終われば料理はほぼ終わったも同然です。
③豆腐や肉は食べやすい大きさに切っておく。春雨は5分ほど水につけて、その後はざるに上げておく。
④でかい蓋付きの鍋(我が家は直径30cm、深さ10cm程度のものを使ってます)に「白菜のみじん切りにした白い部分」と「シイタケ」と「鶏肉」と「豆腐」をぶち込み、水をたっぷり入れて、「ごま油」を多めに回しかけ、白菜が透明になるまでぐつぐつ煮ます。20~30分ぐらいでしょうか。この白菜の白い部分が水に溶け出し、おいしいスープになるわけです。この際、水ではなく「だし汁」を入れてもOK。どっちでも大丈夫ですが、僕は自分で作っている「かつおだし」を入れてます。水は多めで、あふれそうなら別の鍋にとっておけば後で汁が足りなくなってきたときに補充できます。ちなみに「だしの素」を使うくらいなら水の方が断然いいです。特に日本人は「~~の素」とかって使いすぎなんですよ。
⑤煮込みすぎぐらいがちょうどよく、あとは食べる直前に豚バラ肉を鍋の中に投入していきます。そのとき、一枚ずつ箸で汁の下の方に沈ませていくとすぐに火が通ります。が、汁が十分に沸騰していないと肉がピンク色になってしまうので注意。で、バラ肉の投入を終えたら、鍋の具材の上に白菜の葉の部分(緑の部分)を山盛りに載せ、コショウとごま油を大量に回しかけ、その上から強引に押し込むように蓋をします。
⑥蓋をすることで上に載せた白菜の葉が蒸されるわけです。そして白菜の葉が食べられるくらいに柔らかくなっていれば完成!ポイントは、白菜の葉の部分は汁の中に入れずに蒸すことです。汁に入れてしまうと、色がどんどん変色して出がらしのお茶っ葉みたいな色になってしまうので、おいしさが半減してしまいます。
⑦あとは鍋を食卓に移動し、器に好きなだけとってスープを並々入れ、各自が塩と一味唐辛子をかけ、調整しながらひたすら食べていきます。この間、僕はさらにごま油をかけますし、刻んだネギを入れたりします。
⑧ここでのポイントは鍋を火から一旦下ろすことでしょうか。 ずっと火をかけっぱなしにしてしまうと、スープがどんどん蒸発してしまうし、白菜の葉の色が悪くなっていくからです。あっ、忘れてましたが、春雨は自分の食べる分だけを鍋本体に入れて少し汁につけて戻してから、自分の器に入れて食べます。これも、最初から全部はるさめを入れてしまうと、スープに溶けてしまうからなんですね。少し固めぐらいがおすすめです。
⑨あとは自分の器のスープの中に温めたご飯を入れて刻みネギを振りかけて「おじや」にしてもよし、ひたすら肉ばかりを食ってもよしで、自分なりの食べ方を構築しましょう。ちなみに僕は肉を食べるごとに粗塩を追加でふりかけて、塩がわずかに肉の表面に固形状態で残るぐらいが好きですね。まあ、味の善し悪しは「塩」と「油」で決まる!ということを肌で実感することができます。ちなみにうちの嫁さんはほとんど塩をかけない薄味が好みのようです。

この鍋は恐ろしく簡単ですし、スープのおいしさも半端じゃなく、かつ毎日食べても不思議と飽きないので、鍋好きで忙しい方にはひたすらお勧めの一品です。我が家では、恐ろしいことに日曜の夜に作ってから食材を補充しつつ、翌週の金曜日までずっと夜はこのピェンローだったという記録をもってます。それほどにこの鍋は最高ですので興味のある方は是非!

河童のスケッチブック (文春文庫)

河童のスケッチブック (文春文庫)

 

 

 

映画「VICE」&「記者たち」

「VICE」評価:★★★★☆                           「記者たち」評価:★★★☆☆

いやあ~この2本、めちゃめちゃ面白かったです。単なる偶然なんですが、この2本をセットで見たのが特によかった。「VICE」って、「悪癖」とか「堕落」とかイマイチいい意味では使われてないようなんですが、「副」とか「代理の」という意味もあって、「vice‐president」とすると「副大統領」って意味になるそうです。とはいえ、多分に「悪の」という意味もあるんだと思いますが・・・。

この映画は、かのブッシュ政権イラク戦争当時、副大統領を務めたバリバリネオコンディック・チェイニーに焦点を当てたもので、若き日のディック・チェイニーが如何にして成り上がり、副大統領にまで登り詰め、イラク戦争をはじめるに至ったのか、その辺の事情を相棒のドナルド・ラムズフェルトと一緒にとても丁寧に描かれています。

一方の「記者たち」の方は、当時のイラク戦争に突っ走る政府見解を徹底的に取材して、数ある新聞社の中で唯一真実を発信し続けた新聞社である「ナイト・リッダー」の記者たちの奮闘を描く社会派映画なんですが、物事を両面から見ているようで非常にためになりましたですハイ。

いやあ~、オリバー・ストーンの「ブッシュ」はともかくとして、まさかディック・チェイニーが主役の映画が作られるなんて、やはりこれがアメリカの懐の深さなんでしょうか。この映画、もう最高でした。

ディック・チェイニーって、なんとなく冷徹なバリバリのネオコンでイケイケの帝国主義者みたいな印象があったんですが、家庭では奥さん思いで二人の娘のやさしいパパさんなんで、見終わってかなり印象が変わりました。

ホワイトハウス入り当時は、ラムズフェルドの雑用係みたいな立場からはじまるんですが、次第にラムズフェルドと仲良くなって、ともに長期にわたり共和党政権(ニクソン、フォード、パパブッシュ、息子ブッシュ)の屋台骨となって支えていくんですね。

チェイニーがなにより優れていたのは、どうでもいいバカげた壮大な話をさも意味ありげで革新的なアイデアのように話す能力で、いつもニヤニヤ周囲を小馬鹿にしているラムズフェルドと一緒にどんどんのし上がっていくわけです。これって結構見てて痛快でした。

笑ったのはチェイニーが言い出した「一元的執政府」という概念で、要は行政府(大統領府)が立法(連邦議会)とか司法(連邦裁判所)を無視して承認を得ずに政策決定していくというモンテスキュー三権分立を全否定する考え方なわけです。

まあ、9/11後の非常時であることなんかを言い訳にして、弁護士の入れ知恵やお墨付きをもらいながら、どんどん自分たちのやりやすい方向にホワイトハウスを改造していくわけです。これをみると、息子ブッシュは単なる傀儡だったのかな~とも思えてきて笑えます。またそのバカ息子ぶりをサム・ロックウェルがとても上手に演じてます。いやぁ~いい役者ですね。ただし、それをいうとチェイニーを完璧なまでに演じきったクリスチャン・ベールはもうとんでもない怪優ですよ。そもそも役者名がクレジットされない限り、誰もクリスチャン・ベールだって気づかないわけで。

しかしこのブッシュ政権って、今のイラクやシリアの大混乱やISの台頭を引き起こした張本人なわけだから、間違いなく負の歴史として語り継がれるでしょう。ただ、僕としては、この現実をブッシュ政権(チェイニー、ラムズフェルド、ライス、パウエル、ウォルフォウィッツら)だけのせいにするのは違うと思うし、結局はそれを支持した国民はどうなのよ?ってことなんですよ。

なぜなら、少しでも中東の情勢を知っていれば、世俗主義者のサダム・フセイン原理主義者のオサマ・ビンラディンが共闘するはずもなく、むしろ敵対さえしていたわけで、それすら知らずに政府発表を鵜呑みにして支持した国民も当然同罪に決まってます。

こういうことを書いていると、なんとな~く衆愚政治という言葉が頭に浮かんできます。つまりは民主主義といった統治形態は、国民のレベルが下がって無関心、無勉強、無自覚な国民が増えると、投票率や政府への監視能力が低下し、それを受けて政府も無方向・無秩序な状態に陥って、結局は国家が堕落・腐敗していくというね。しかもそこに、政治からは独立した監視機構であるはずのマスコミが取り込まれてしまうと、政府主導のファシズムに国民は踊らされて思考停止状態に陥ってしまうわけです。

なんかこれって今の日本みたいじゃないですか?

ところで、今こう書いている最中、どうもISの指導者であるアブ・バクル・アル・バクダディが殺害されたようですね。2013年、カリフ制国家の樹立と自身のカリフへの即位を声高に宣言して以来この6年、ようやくその活動に終止符が打たれた模様です。しかし、このバクダディをアメリカ軍が1年近く拘束していたことはあまり知られていません。つまりは、いくらでもバクダディの後継者はいるわけで、アメリカがそれを事前に察知することも不可能なわけです。

これを機にアメリカは中東から撤退するのかどうかはわかりませんが、結局アメリカは部外者に違いなく、中東のことは中東でっていうのがセオリーなんでしょう。けれど、過去の遺恨である西洋の論理によるイスラエルの建国とパレスチナ問題や、中東の国境線をズタズタに引き裂いたイギリスとフランスの悪名高いサイクス・ピコ協定なんかも絡んでますし、さらに近年のアラブの春以降のエジプトやリビアの混乱や、シリアのアサド政権へのイランやロシアの関与、スンニ派シーア派の確執の拡大、サウジやパキスタンの動向など、なんだか間違っても第3次世界大戦なんかにならなければいいのですが。

それはそうと「バイス」の途中の偽のエンドクレジットには大笑いしましたので、見てない人は自信を持っておすすめです、笑いますよ。

あ~、かなり長くなりましたので「記者たち」は次回に書くことにします。 

バイス [DVD]

バイス [DVD]

 
ブッシュ [DVD]

ブッシュ [DVD]

 
記者たち 衝撃と畏怖の真実 [DVD]

記者たち 衝撃と畏怖の真実 [DVD]

 

映画「ウトヤ島、7月22日」

評価:★★☆☆☆

いやいやかなり期間が空いてしまいました。毎年恒例のイベントのため、この1ヵ月間全く映画を見れない日々が続きました、もう地獄ですハイ。ので、その仕事から解放されたあと、速攻でTSUTAYAに寄ってずっと見たかった「ウトヤ島」を借りました。

この映画は以前にもブログで紹介したように、2011年に起きたノルウェー連続テロ事件の惨劇を、ウトヤ島を舞台として73分ワンカットで撮ったという衝撃的な作品なんです。

で、とんでもなく期待して見たんですが、なんなんでしょうかこの消化不良感は。娯楽性、メッセージ性、そして苦業性(娯楽の反対語)のすべてにおいて中途半端感が甚だしいんです、ものすごく残念ですはい。この映画は実話を元に描かれているのですが、それを知らずに見た人はおそらく一切楽しめないこと間違いありません。

一言でいうなれば小さな島(300m×300m程度)での壮大な鬼ごっことしか思えないんですね。そもそも犯人(アンネシュ・ブレイビクというガイキチ)は、ずっとズバズバ銃撃しながら移動しているので、その音を聞けばだいたいの位置はわかるにも関わらず、なぜか主人公のカヤはどんどん犯人に(音の方に)近づいていってしまうんです。ただ、犯人はスタームルガー社のミニ14というセミオートマチックライフルを使用していて、実際の銃声はバスッ!バスッ!っっていう変わった音なので、最初はそれが銃声だと誰も気がつかないんですよね。それと小さな島なので、反響して音源が捉えにくいといった事情もあったのかもしれません。

しかしまあとにかく、劇中ずっとそのバスッ!バスッ!という音を背景に走り回る若者たちの姿が延々と繰り返されます。ただ、どう見ても700人がこの島にいて逃げ回っているようには思えないんですよね。なんか100人ぐらいにしか見えないという。

確かに事件から8年足らずであの惨劇を映画化したことは敬服に値します。この映画を撮ったエリック・ポッペ監督って、もうものすごい人ですよ。そしてこの惨劇を決して忘れてはならないし、絶対に繰り返してはいけないという主張もわかります。しかし、そんなことが果たして本当にできるのでしょうか?

もはや銃乱射事件が恒例行事になってしまったアメリカもそうですが、こういう自動小銃や武器が誰でも買える国である以上、絶対にこういう事件はなくならないはずです。おそらく日本だって銃が簡単に手に入れば、瞬く間に銃乱射事件大国になりますよ多分ね。なぜなら、人間も世の中も完全じゃないからです。そしていつの世も、不平や不満、偏った選民思想を持つ輩はいくらでもいますから。

しかし、この消化不良の原因は何なんでしょうか。監督がただ事実(まあ、映画の内容は完全な創作のようですが)だけを描き、後の解釈は受け手に委ねる、といった最近はやりの舐めた創作手法はわからなくもありませんが、僕はもっと決めつけてほしかったんです徹底的に。

何をって、この事件の犯人であるアンネシュ・ブレイビクという奴がもう完全に逝ってしまっているクズだということをです。なぜ警察は射殺しなかったんでしょうか。そもそも、小難しい社会経済政治的な解釈は一切不要で、こいつは単なる大量殺人犯なだけで、それ以上でもそれ以下でもないんです。

こいつはご丁寧に犯行前に1,500ページに渡るキチガイじみた書記をアップするとともに、銃撃に疲れてくるとわざわざ事前に警察に電話してちゃっかりと「ボクちゃんもう疲れちゃったので自首しますので確保してください」みたいなことを伝えてたわけですよ。要するに単なるわがままで分からず屋の凝り固まったナルシストの小僧じゃないですか。

この事件を知って、ボクはノルウェーとかスウェーデンとかフィンランドとか北欧の福祉国家の限界を感じましたね。なにより一番気になるのは、受刑者の権利が保障されていて、刑務所内でプレイステーションなんかで毎日楽しく遊んでいるアンネシュ・ブレイビクがこの映画を見たか?ってことなんです。もし見たとすれば、こいつはその時絶対笑ったにちがいないって思ってます。

あっ、この映画の「カメラを止めるな」みたいな「ワンカット72分」とかいうお決まりの宣伝文句はほぼ無意味ですので、これからそれを期待して見る人は気をつけましょうね。

 

海外ドラマ「ツイン・ピークス新シリーズ」

いやいや僕としたことが「ツイン・ピークス」の続編が2年前の2017年に作られていたという事実に全く気づかずに生きてました、ごめんなさい。このことに気づいたのは「トゥルー・ディテクティブ」というドラマにハマってそのDVD-BOXを熱帯雨林Amazon)で物色していたときにたまたま知ったからなんです。

それはそれはもうものすごい衝撃で、すぐにレンタル屋に借りに行って、今まで出張の合間や休日に観まくって、しかもそれだけでは飽きたらずに「ローラ・パーマー最後の七日間」も観て、そして今はファーストというか、古い方のツイン・ピークスをまた見直しているという体たらく。で、ブログも全く更新できずじまいという。

しかし、こんな幸せな時代に生きていることってもう本当に幸福ですよね。「スター・ウォーズ」の続編も作られて、「閃光のハサウェイ」も映画化され、そして「ツイン・ピークス」の続編まで見られるなんて。そういう時代に生きていることを神に感謝せずにはいられないというか。もうスキップしてゲオに借りに行っちゃいました(アマプラ無料期間も終わってしまったので・・・)。

ただ、なんでこの続編が作られたのにまったく気づかなかったのかが謎なんですが、要は僕が海外ドラマシリーズにあまり興味がなかったからなんですかね。「24」は途中で飽きたし「Xファイル」もUFOネタしか観てないし、少し前にマニアの中で絶賛されていた「ブレーキング・バッド」もイマイチだったし、要は海外ドラマをナメていたわけですはい。しかし最近は「トゥルー・ディテクティブ」なんかのとんでもないハイレベルな作品もありますので、今後ドラマシリーズも要チェックですが、そうなるともう一生かかっても観きれないというか。

さて、新生ツインピークスですが観ましたよ全18話。一気に観てしまって今は旧バージョン29話を観てる途中です。あ~もう仕事休んでずっと観ていたい。で、このシリーズに限っては、細かな解説は無意味かな~と思いましたねあらためて。

そもそもデイヴィッド・リンチ監督の映画って説明してどうこうという範疇からはかけ離れた作品ばかりで、大好きな「マルホランド・ドライブ」もそうですが、説明という概念とは対極に位置する作品、それがリンチ映画なわけで。

ストーリーは至ってシンプルで、ワシントン州ツインピークスという製材業の盛んな片田舎で、ローラ・パーマーという女子高生が惨殺され、その捜査のためにFBIのデイル・クーパー捜査官(カイル・マクラクラン)がやってきて、少しずつ事件にまつわる謎を解明していく、という話なんですが、まあとにかくみょ~な薄気味悪さと可笑しさが絶妙に混在してるんですわ。

薄気味悪さと言っても、例えば「リング」なんかのちょ~怖いホラーとは違って、とにかく気味が悪いんです。相変わらず小人とか巨人とかのフリークスがたくさん出てくるし、そいつらの声も奇妙なサラウンドでみょ~に耳に残るし、片目のアジア系の女性とか、片腕のオヤジとか、とにかく変な奴らがたくさん出てきます。まるでサーカスみたいなイメージです。

ただ、新シリーズの方はその薄気味悪さが多少は緩和されていて、ギャングの兄弟はお茶目だし、その取り巻き?のバニーガールみたいな女の子達(特にキャンデイ)もかわいいし。

あと新シリーズで笑えるのはエンディング間近になると必ずBAN BAN BAR(バン・バン・バー)(ロードハウス)の場面に変わって、よく知らないバンドが1曲必ず歌い切るというとこ。1フレーズではなくて、3~5分ほどずっとそのバンドが歌ってる映像が流れるだけで、ある意味物語とは全く関係ないんですね。最初は何か意味があるのかと思ってワクワクずっと待ってたんですが、結局それがその話のエンディング・ロールになっているってことに気づくんです。この手法って一昔前なら絶対に許されませんよ。これが許されているということ自体が、今の海外ドラマってかなり監督の自由度が増しているってことだし、だからこそ「トゥルー・ディテクティブ」みたいな傑作が生まれたのでしょう。いやいやこれはいいことですよ。

しかし、新生ツイン・ピークス、面白すぎて関連本である「ツイン・ピークス・シークレット・ヒストリー」と「ツイン・ピークス・ファイナル・ドキュメント」も買っちゃいました。この2冊もむちゃくちゃ面白くてファンには絶対におすすめです。けど、高いんだよなあ~。ちなみ「ツイン・ピークス読本」はイマイチでした。

最近のネットとかテレビが「ジャニーズ」とか「あおり」一色なのにうんざりしている皆さんに痛烈におすすめです。あ~日本のマスコミとテレビ局は一人残らずニフラムドラクエの呪文)してほしいです。

ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー

ツイン・ピークス シークレット・ヒストリー

 
ツイン・ピークス ファイナル・ドキュメント

ツイン・ピークス ファイナル・ドキュメント

 
INTO THE BLACK LODGE ツイン・ピークス読本
 

 

海外ドラマ「TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ/シーズン1」

評価:★★★★★

この休み中にアマプラ特典で全8話(1話1時間なので8時間)を見ましたが、もう数年ぶりの衝撃、打撃!攻撃的おもしろさ。とにかくものすごいドラマで、まだ見ていない人で、お盆休みが取れる方は、是非アマプラ30日間無料サービスに登録すべし!そして観るべし!としか言いようがないおもしろさ。

そもそも僕はアメリカの海外ドラマシリーズがあまり好きでなくて、これまで観たのは「Xファイル(UFOネタとかスモーキングマンのみ抽出して)」と、「ブレーキング・バッド」ぐらいのもので、それすらもイマイチ感が否めなかったわけです。

が、なんですかこの「トゥルー・ディテクティブ」などという読みにくく発音しにくいドラマシリーズは。何かいい邦題はなかったのでしょうか?が、これ、とんでもないドラマです。というか、100%映画でしょ?しかも売れっ子俳優マシュー・マコノヒーと、キレたら何をするかわからないガイキチオヤジのウディ・ハレルソンですよ!もうドラマではあり得ないキャスティング。

かと勝手に思ってたんですがなんですか、最近ではハリウッドのトップスターでもこぞってドラマに出たがるようじゃないですか?なんでも、24(トゥエンティー・フォー)の大ヒットや、アマプラやネトフリの普及で、ハリウッド俳優はドラマも絶好のビジネスチャンスの場と見なしているようなんですわ、全く知りませんでしたハイ。

僕はもういいオッサンなので、アメリカの海外ドラマは落ち目の俳優が行き着く先かと勝手に思ってました。ちなみに日本ってまるっきり正反対で、売れっ子はテレビ、落ち目は映画や舞台とか演劇に行っているようですが、日本ではその流れは今どうなんでしょうかね。まあ、全く興味がないのでどうでもいいですが。

さてさて、この「トゥルー・ディテクティブ」ですが、マシュー・マコノヒー演じるラスト・コールと、ウディ・ハレルソン演じるマーティン・ハートの二人の刑事が管轄するルイジアナ州で17年前に起きた猟奇的殺人事件を捜査する顛末を、現代から振り返りながら描いたものなんです。

で、なにせその事件って17年前の話なので、現在は警察を引退し、適当な暮らしをしていてアル中みたいなラストと、探偵業を開業したマーティンを、現在の州警察がなぜか事情聴取するといった展開でだらだら進んでいきます。

何がすごいって、物語は聴取中にしょっちゅう17年前のラストとハートの話が織り込まれているわけですが、二人とも本当に若いというか、若く見えるんですね。マコノヒー(ラスト役)もイケメンで生意気そうな刑事という印象だし、ハレルソン(マーティン)も髪がフサフサの茶髪で、気が優しくて力持ち的な印象で、17年前って言われても、マジでそういう風に見えるんですね。そのメイクとか髪型がものすごく凝っていて、もうホンモノなんですわ。

普通、日本とかだと、その若いときの役柄を別の役者がやったりするんですが、このドラマでは、本当に実際の二人が演じているのがすばらしいんです。まずそこが一つ。

そして、あとは誰もがレビューで指摘しているように、マシュー・マコノヒーの演技がハンパない、といった一言に尽きます。聴取を受けているときの仕草とか動作がもうホンモノにしか見えません。しょっちゅう、哲学的で難解なたわごとを言ったりタバコ吸ったりしてるんですが、そんな難しいセリフの最中も、ビールのアルミ缶をナイフで切り取って灰皿をつくったり(2015年なので聴取する部屋には灰皿がない)、人型の人形を作ってみたりするんですよ。セリフだけでもこ難しいのに、こういう作業もずっと役柄としてやるっていうのは、とんでもなくハードルが高いと思うんですが、マコノヒー兄貴はいともたやすくやってのけます。はい、日本の役者の皆さん、一体何人がこの演技できますか?今こそこのドラマを見て、役者引退を考えていただければ幸いです。

で、あとは大好きなガイキチオヤジのウディ・ハレルソンさんなんですが、やはりここでも始終キレまくった暴力オヤジを披露するかと思いきや、いやいや、結構いいオヤジ役を演じてるんですね。結構優しくて仲間思いでなんかな~と、ちょっと物足りなさを感じていると、出ました中盤でハレルソン得意の大暴れキチガイ超~恐いギャングスタークソオヤジぶりを余すことなく発揮!!!

ただ、ウディ・ハレルソンがぶち切れるのは全8話を通して2回ほどでしょうかね。しかもあの顔と体のくせに結構繊細でナイーブな役柄で、奥さんもミシェル・モナハンなので美人だし、若い女にも結構モテるという何気に結構うらやましい役柄で、だからこそハレルソンは出演を決めたのかな~なんて思ってしまったり。

まあ、最初はちょっと物語の構造が複雑なので面食らいますが、ポイントは①17年前の猟奇的殺人事件、②背景にあったのがブードゥ教などの悪魔崇拝、③ラストとマーティンの2人が当時の事件を担当していたこと、④そして現在、ラストとマーティンは警察辞めていて、なぜか刑事2人がまた過去の事件を調べている、⑤そしてなぜか、この二人の刑事は、当時の事件に主眼をおいているというより、当時のラストとマーティンの行動や出来事に興味を持っている。以上の5点でしょうか。

大体、上記の内容を把握しておけば、混乱なくこのドラマを楽しめること間違いなしです。ちなみに、タイトルの「ディテクティブ」って「探偵」っていう意味なんですが、これも物語の一部を暗示してますので覚えておきましょう。

ところで、これってもうドラマではなく僕的には「8時間の映画」という解釈です。それほどに完成度が高くお金もかかってて役者のレベルも高いです。今後こういうドラマが増えて来るとなると、海外ドラマも見逃せなくなってくるわけで、なんだかサポート範囲が劇的に広がったというか・・・。

しかし、マシュー・マコノヒーって僕的には「ニュートン・ボーイズ」あたりで出てきて「ダラス・バイヤーズ・クラブ」で脚光を浴びた俳優程度の認識でしたが、そのレベルでもあの演技!すさまじいですねハリウッド映画界の層の厚さは。物語終盤、マコノヒー演じるラストが「インタビュー・ウィズ・バンパイア」のトム・クルーズにそっくりなので笑えます。メイクチームが同じだったんでしょうかね。

さて、僕にとってこのドラマは究極に面白くてモロにドツボでしたので早速中古でコンプリートBOXをゲットしました。しかしそういうことって結構久しぶりかも。ちなみにシーズン2と3では全く話も俳優も変わります。シリーズ完結型の映画なんですね。これも斬新ですわ。とにかく刑事物が好きでお盆休みをもてあまし気味のオッサン達には自信を持っておすすめですね。なお、ちょっとエッチなシーンもあるので奥様とは一緒に観ないことを忠告しておきます。

ダラス・バイヤーズクラブ [DVD]

ダラス・バイヤーズクラブ [DVD]

 

本「記者、ラストベルトに住む」

これ、ずっと読みたかった本なんです。しかし、買ってから気づいたのですが、この本の著者って実は日本人だったんですよ。カバーがかなり意図的?作為的?に作られていて、僕は最初、このカバーのおっさんが著者だと思っていたわけです。すると実際はこの人はジョーというアメリカ人で、著者である日本人が親しくしている取材者の一人なんでした、いやはや・・・。

この時点でまず衝撃を受けましたが、けれど、すごくいい本で面白かったです。ただ、あまりにも過酷な現実ですので、面白いというよりは悲惨きわまりないというか。

まず基礎知識として、ラストベルト(錆びついた工業地帯)というのはアメリカ中西部の五大湖周辺の州のことで、ミシガン州ウィスコンシン州、アイオア州、イリノイ州インディアナ州オハイオ州ペンシルバニア州など、かつて鉄鋼業や製鉄業の栄えた地域のことです。「かつて」というのがポイントで、今では寂れて廃れてしまったからそう呼ばれるわけであって、なにも昔からラストベルトと呼ばれていただけではありません。昔はハイテク産業の西海岸サンフランシスコの「シリコン・バレー」に対抗して「スティール・バレー(製鉄の谷)」などと呼ばれ、高卒のブルーカラー層が製鉄業や製造業でまっとうな給料を稼ぎ、仕事や暮らしに誇りを持ち、分厚いミドルクラス層を形成していた地域なわけです。

で、作者が実際に住んでみたのには大きく2つの理由があるわけです。一つは、これらの地域の人々は歴史的に民主党支持者が多かったわけですが、2016年の選挙では、イリノイ州以外の州全ての州で共和党であるトランプを支持するという歴史的大転機となりました。作者はその点に着目し、なぜ伝統的な民主党支持を覆したのか、そして共和党に入れた人は、トランプに一体何を期待したのかということを探ることなんです。そもそも、このラストベルトの大部分をトランプが制したことが、大統領になれた大きな理由なわけですから。

もう一つは、人々の本当の暮らしぶりは実際にそこに住んでみないと見えてこないし、実際に地元で生活して地域の人々ともっと深く仲良くならないと決して本音は語ってもらえないといった、まさにジャーナリストの鏡のような決断によるものでした。

そして作者が実際に3ヵ月間住んだのは、オハイオ州北東部トランブル郡のウォーレンという街で、家賃が月400ドル程度のアパートなんです。このウォーレンという都市は同州マホニング郡のヤングスタウンと並ぶくらい有名な労働者の街だったんですが、もう寂れてしまって近所にはジャンキーなんかが結構多く生活する地域となっていて・・・。ちなみに「ヤングスタウン」という都市は、かのブルース・スプリングスティーンが1995年に鉄鋼業の衰退を嘆く曲のタイトルにもなってます。

で、まあ色々と衝撃的な事実が色々とわかってくるわけですが、それは実際に本書を読んでいただくとして、ここではそれらのいくつか紹介するにとどめます。

まず一つ、米国では現在、ラストベルトみたいに特に貧しい州では、白人の中年層(45~54歳)で薬物による死亡率が上昇するという異常事態が起きているということなんです。現に作者の隣に住んでいた青年がドラッグで死んでしまったり、取材した39歳のデイナという女性の弟も実際に亡くなっていたり、ものすごくリアルタイムで進行中なんですわ。つまり、一般的な先進国のモデルでは、医療技術の進歩により死亡率は当然下がっているのに、米国白人中年層だけは上がっていて、そしてこの要因も、心臓病や糖尿病などの典型的な疾病疾患ではなく、自殺や楽物乱用に依るものなんだそうです。

特にオハイオ州を含めたアパラチア地方南西部では、2000年代初頭以降ですでに薬物の過剰摂取による死亡率が都市部を抜き去っていて、こういった薬物汚染の背景には、職がなく、またあっても不安定でかつ低賃金なサービス産業ばかりで、希望や展望の損失が大きな理由としてあげられているんです。

そしてもう一つは、取材した人達の大部分が「自分にとってのアメリカ・ドリームとは、請求書におびえずに普通に生活できることだ。」とか「年収4~5万ドル(400~500万円)稼ぐことさ!」っとかって言ってることなんですが、それってもはや「ドリーム」とは呼ばないわけで、単に普通の暮らしがしたいってことじゃないですか。

この点が僕にはものすごく衝撃的でした。アメリカって、その割合がどの程度なのかはわかりませんが、ミドルクラスが没落し、日本でいうところの普通の暮らしがもはや成り立たなくなっている人達がものすごい勢いで増えているわけですよ。

ネットで統計情報を拾っても「上位1%の人々の平均収入が、下位50%を占めるの人々(1億1,700万人)の平均の81倍」とか「上位1%の総資産でアメリカ人全体の34%を占めている」とか「1980年代にアメリカ人の50%を占めたミドルクラス(中産階級)は、2010年には40%まで減少した」などと色々挙げられているけど、こういう統計ってその下位にいる実際の人々の顔が全く見えないわけですよ。その意味で、そういう人達の意見や暮らしぶりをレポートした本書は非常に意義のある成果であって、しかもこの作者が日本人であったことに僕は拍手とエールを送りたいです。そんでもって、この作者が書いた「ルポ トランプ王国」も買っちゃいました。

まあ、こういう傾向が今後日本にも波及するのかどうかは、アメリカと日本では政治・経済・社会システムが大きく異なるので何ともいえないところですが、資本主義の末期症状であることは変わりないので、今の我々の生活を見直す(または感謝する)ための恰好の例にはなるかと思います。

特に最近は、この本以外にもアメリカの路上生活者(ホームレス)ならぬ車上生活者を取材した「ノマド:漂流する高齢労働者たち」やボブ・ウッドワードの「FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実」なんかも読んで、他にも「超・格差社会アメリカ」や「ホワイト・ワーキング・クラスという人々」といった本が待機中ですので、機会があればコメントしたいと思ってます。

記者、ラストベルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂

記者、ラストベルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂

 
ノマド: 漂流する高齢労働者たち

ノマド: 漂流する高齢労働者たち

 
FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実

FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実

 

 

映画「試験明けに見た映画②」

さて試験明けに見た映画の続きです。以降で残りの5本を紹介します。いやいや、久々に出ましたね、五つ星が!!!

⑥ロスト・マネー偽りの報酬(評価:★★☆☆☆)
⑦ゴッズ・オウン・カントリー(評価:★★★☆☆)
ラッカは静かに虐殺されているAmaプラ)(評価:★★★☆☆)
⑨地獄への道:モスルの戦い (Amaプラ)(評価:★★☆☆☆)
バトル・オブ・ザ・セクシーズ(評価:★★★★★)

えっと、もはや説明するのも面倒な「⑥ロスト・マネー」なんですけど、これって僕は最初はリーアム・ニーソン主演の「96時間」みたいな元凄腕のCIAモノを勝手に期待していたんですが、それはとんでもない勘違いで。

まず、はじまって2分でリーアム・ニーソンが死んで退場します、はい、そして、以降はその奥さんである黒人のおばさんが主演を張るというどんでん返し、見事に期待を裏切られました。で、それ以降、楽しめるのかというと非常にビミョ~で、ダラダラゆる~く話は進んでいきます。で、なにせ主演が小太りのおばさんなので、あまり見るべきところもなく、しかも面白くないので、あきらめかけていた矢先、話は急展開!という。かろうじて★1つは免れました、いや奇跡ですよ。

最近、先に紹介した「バハールの涙」もそうですが、女性陣ががんばる映画が増えているような気がします。それ自体はすばらしいんですが、なんか展開とか描写がモッサリしていて、「オーシャンズ8」のようにもっとスタイリッシュにはいかないんでしょうか。あと、おばさんが主演なのはジーナ・ローランズの「グロリア」とかパム・グリアーの「ジャッキー・ブラウン」みたいに、よほどプロットに厚みがないと厳しいですよね。

で、次に「⑦ゴッズ・オウン・カントリー」なんですが、これってもろに「ブロークバック・マウンテン」のイギリス版という。しかも、監督がフランシス・リーという人で、ブロークバックのアン・リーと同じ「リー」だし。パクリ中のパクリです。要は、イギリスの牧場で働く青年ジョン君が、臨時で雇った季節労働者であるルーマニア移民の男性ゲオルグ君と恋に落ちるという物語なんです。

驚いたのが、この映画の主演のジョシュ・オコナーって、先に紹介した「暁に祈れ」の主演を務めた役者さんなんですよ。(と、勝手に断言してましたが、実は別人でした。「暁に祈れ」の方はジョー・コールさんという役者で、微妙に名前も似てるんですわ。参りましたね。)

このジョシュ・オコナー君みたいな大してルックスのよくない青年が主演として抜擢されるのが、日本と世界の映画界の最大の違いですね。ジャニーズ主演とかマジ勘弁。

で、じゃあサイクブーなジョシュ・オコナー君の演技はどうなのよ?というと、意外にも、ものすご~くいいんです。リアリティとか存在感がハンパじゃないんですよね。映画自体も決して悪くないですし、意外に僕は好きでもあるんですが、他のレビューとかの感想によくあるような、「すごく美しい映画だった」とか「まさに神の宿る場所」・・・などとは僕はみじんも思いませんでした。

そもそも、牧場でいきなり牛が糞をしたり、羊が他の獣に襲われてしまったり、糞尿にまみれた牛舎を掃除したり、汚いワラ葺きの小屋で雑魚寝したりとか、もう美しいどころか不潔で不衛生で不快きわまりないんです。それに舞台であるイギリスの風景もいつも曇っててはっきりしない天気で景観的美しさは皆無でしかなく。

とはいえ、牧場での仕事は結構細かく描写されていて、カウボーイの生活を知る意味では非常にためになりました。けど、こういう過酷で厳しい環境で生きる人々を描いた映画にすぐ「神(GOD)」とかを付けることで、なんとなく純文学的な崇高さを出そうという趣向、もうやめませんかね。ブラジルを舞台にした「シティ・オブ・ゴッド」もそうでしたが。なぜ、悲惨きわまりない場所とかハンパなく汚い場所に「神」とか「夢の島」とか、正反対の名前を付けるのでしょうか。

ちなみに、ジョシュ・オコナー君がものすごくいいと言いましたが、ゲロ吐いたり、酔っぱらったり、いつもだるそうにしてる姿は、ある意味「暁に祈れ」(のジョー・コール君)と全く同じで、むしろそういう演技しかできないのかと心配になりましたね。もしかすると元々そういう奴なのかも・・。いや~しかしシブい役者ですわ。

さて次にアマプラでずっと見たかった「⑧ラッカは静かに虐殺されている」と「⑨地獄への道:モスルの戦い」ですが、まず、ラッカはシリアの都市で、モスルはイラクの都市で、どちらもISに占領された地域なんですね。日本にはほとんど情報が入ってきませんが・・・。

で、「⑧ラッカは静かに~」の方は、ISの暴挙や愚行を世界に訴えるために結成された市民ジャーナリスト集団である「RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)」を追ったドキュメンタリー映画なんです。シリアに残った国内組と、トルコやドイツに逃れた国外組が、巧みにSNSやネット環境を駆使して写真や映像のやりとりをし、ニュース映像として世界に配信を続けていて、彼らは銃ではなくそういう映像や情報でISに立ち向かっているわけです。が、当然ISからも敵対視され、一部のメンバーのみならず、家族や親類まで殺され、それでも闘うことを止めていないのがすごいんです。

彼らって、シリアでは中産階級の家庭で育っていて、彼らの望むモノって実は我々と何も変わらないんですよ。仕事して、友達と騒いで、結婚して、家族と過ごして、子育てをしてっていう、日本では当たり前にできることが、シリアではできないんですね。そういう国がたくさんあることを本当は我々は知らなければならないんですが、マスコミは吉本の報道なんかにかかりっきりのようですし、もう日本のマスコミは終わってますね、この国のお笑いや役者、アナウンサー、コメンテーター全て光の中に消え去ってほしいです(ドラクエニフラムを唱えたい)。で、このドキュメンタリー、見てると悲惨すぎで泣けてきます。RBSSのメンバーの人達は今でも生きているのかが心配でなりません。

で、もう一つの「⑨地獄への道」ですが、これは日本語字幕がひどすぎました。これってgoogle翻訳じゃね?的なレベルで、字幕が必ず2行で表示されていて、文字化けとか直訳的な翻訳で、ものすごく読みづらい英語でうんざりしてきます。「このことに私が気づかされたのは事実だ」とか「この悲劇は多くの中の一つだ」とか、もう勘弁して。

で、ドキュメンタリー自体もイギリス人っぽい記者が危険地帯に出向き、モスルの惨状を伝えるわけですが、先の「⑧ラッカは静かに~」と比較すると、こちらは大勢の北部同盟なんかの軍に記者が守られているので、そこまで緊張感がないし、しかも46分くらいのドキュメンタリーなのですぐに見終わってしまって。はっきり言ってよく覚えてませんし、いまいちでしたね。

さて、最後に「⑩バトル・オブ・ザ・セクシーズ」ですが、久々に出ました5つ星です!堂々、僕のマイベストに入りました~(祝)。これって「アイ・トーニャ」と同じかそれ以上に面白いです。

この映画も実話モノで、アメリカで1970年代から80年代に掛けて活躍した女性のテニスプレイヤーであるビリー・ジーン・キングさんを描いた映画なんです。彼女はアメリカでは伝説的なテニスプレイヤーで、彼女が立ち上がるまで、女性テニス界の賞金はなんと男性の8分の1だったそうです。で、この映画は、彼女が女性のテニス界の権利を勝ち取るまでの一部を描いた映画なんですが、なんと演じているのが「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンさんなんですよ(ハリー・ポッターシリーズのエマ・ワトソンではありませんので注意!)、もう衝撃的!。

はっきり言って、エマ・ストーンさん、もう最高ですわ。 彼女は笑顔がとにかくすばらしい。というか、とにかく表情が豊かでコミカルで、彼女が出ているだけで映画が成立しているというか、この事実に「ラ・ラ・ランド」で気づき、本作で確信しましたですハイ。能面みたいにいつもテレビ写りのいい顔しかしない日本の大量の大根役者達とは大違いです、はい、みなさん、これが本当の女優ですからね。

しかも、この映画もファッションとか映像が70年代の雰囲気がものすごくよく出ていて、とにかくかっこいいんです。それとこのビリー・ジーンさんですが、実はレズビアンだったようで、劇中でもそういうシーンがあるんですが、もうゾッとするぐらいエロいので男性陣は要注意!・・・まあ、実をいうと別に直接的なセクシー描写は全くないんですが、なぜかモロにドキドキしてしまうという。このシーンを演じたエマ・ストーン、それに撮影班、よくわかってますわ。 あと、男性テニスプレイヤーのボビー・リッグス役を演じたとスティーブ・カレルさんがもう最高に笑えます。ほんと、天才ですよね。とにかく、エマ・ストーンの魅力が炸裂の本作、これが映画です、これが女優です、そして特にテニス好きの方にはすこぶるおすすめです。

ゴッズ・オウン・カントリー [DVD]

ゴッズ・オウン・カントリー [DVD]