GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

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その他「年度末を終えて」

皆様お疲れ様です。年度末の戦い、ようやく昨日終わりました。

いや~ホントに疲れましたね。2月から今まで、通算で4日ほどしか休めませんでした。もはや曜日の感覚もなくなり、もくもくと業務に打ち込む日々・・・・。

しかし、ようやく僕の戦いは終わりました。まるで映画「プラトーン」でラストにチャーリー・シーンが独りごちる「僕の戦いは終わった・・・敵は自分たちの中にいた・・・」というシーンのようですね。

詳しくはいえませんが、年明けから年度末にかけて毎年4つの業務に追われるんですが、今年はなぜか+1の5つだったために、その最後の一つがジワジワと効いてきて、この時期まで引っ張られ、この前の金曜日にようやく終わったと思って帰宅したんですが、その後すぐに先方から電話があって、また土曜日の午前中に会社に戻りという・・・・あ~しんどかった。

しかし、晴れてそれも完了し、ようやく大好きな映画を見たり、庭の野菜を収穫したりと、色々と好きなことができそうです!

今日も買い出しに行ってDVDレンタルして料理作って掃除して、なんかようやく人間らしい生活ができそうです。久しぶりに昼間の町中を歩いてみたけど、ソメイヨシノが咲いててきれいだし、雑草ですらすくすく元気に成長してて目に優しいし、やはり世界はすばらしい!家の庭もレタスとかが大量に育ってて、やっぱり春なんですねえ~。

皆様年度末本当にお疲れ様でした。

天才、ホリエモンさん

さてさて、人気者で大天才のホリエモンこと堀江貴文さんです。変換も一発で出て、さすが時代の寵児こと堀江さん。ホリエモンの本は大好きでおそらく7割方は読んでますが、ファンではあっても決して信者ではありません。なので内容はほとんど覚えてないというか。まあ、毎回同じことばかり言ってるからでしょうか。けれど、それでもついつい読んでしまうのはやっぱりおもしろいからなんですよね。

最近読んだのは「本音で生きる」とか「好きなことだけして生きていく」でしょうか。少し前に読んだ「刑務所なう。」とか「刑務所わず。」とかもおもしろかったです。特に「刑務所わず。」は表紙のイラストが最高です!

それに「本を1000冊読んで考えた」とか「マンガを1000冊読んで考えた」もすごくよかったんですが、笑ったのは1000冊どころか100冊ぐらいしか紹介されていないことでした。1000冊載ってねえ~じゃん!と怒り心頭でしたが、まあホリエモンなので許せるというか。

ただ、読んでいつも思うのは、こんな生き方僕には絶対にできない!!!というか、ホリエモンしか無理だろ!ということなんですね。いや、むしろしたくないと思うのが正直なところでしょうか。だって、電車の待ち時間もタクシーでの移動中も食事中も友達と会っているときもデートしてるときも常にスマホ片手にあれこれ指示を出して文章を校正して情報を収集しまくっている。。。って、一体誰にそんなマネができるんでしょうか。

僕は移動中はまず寝てますしタクシーもほとんど使いません。スマホも嫌いでガラケーに戻したいぐらいだし、アプリもほとんど使いません、というか99%のアプリは要らない!と思いますし、もっと言えば情報なんてそんなに要りません。最近のはやりとかニュースにも全く興味がないし、ホリエモンさんの言う効率化を実践したいともあまり思わないんです。

堀江さんは時間を最大限に節約し、効率的に仕事に集中できるように自炊も家事も洋服選びも全てアウトソーシングしているみたいだけど、僕にとってはそういう面倒くさい非効率なこと、つまり料理とか掃除とか洋服選びとか、それ自体がすごく楽しいし好きなんですよね。

要するに堀江さんの対極にいるのが僕の大好きな勢古浩爾(せここうじ)さんとかphaさんで、僕はその両極端の作家さんがどちらも好きなんですが、これはなぜなんでしょう。そういう両極端の作家さんの本を読んで、自分のバランスをとっているのかもしれません。ただ、どちらの作家さんにも共感できる事柄がたくさんあって、まあ人間はそうそう割り切れるもんじゃないということでしょう。

そもそもホリエモンさんは単純にセレブリティで、すでにイチローみたいに殿堂入りしている存在なわけですよ。その時点でその他大勢の一般大衆とは全く立場が違いますので、堀江さんのブログのメルマガ会員になったり、堀江さんのイノベーション大学校に通っていくら起業しようが、プロジェクトを実現しようが、小さな成功は手にしたとしても、結局は堀江さんみたいな存在には絶対になれないように感じます。

堀江さんはそのことに気づいているのかどうかはともかくとして、わかっていても巧妙に隠しつつ、そういうやる気を刺激し、起業を呼びかけてはいますが、それで一番得しているのはなにより商売上手で天才のホリエモン自身なんですよね。その点が憎いほど天才的で、何でも商売や本にしてしまう堀江さんの真骨頂!

だってホリエモンのブログのメルマガ会員の月額料金は1,000円で、すでに1万人の会員がいるそうなので、それだけで月収1,000万円ですよ、1,000万円!そのほかにイノベーション大学校の会費は月額料金が10,000円だっていうし。

なにより、村上龍さんもよく言ってますが「人は自分でもできると思うことや作品なんかに感動なんかしない。自分には絶対無理だと思うからこそ感動できるんだ!」と断言してます。僕もまさにそう思いますね。

なので、僕はホリエモンさんの生き様に猛烈に感動し、本も大好きではあるんですが、それは自分には絶対にできるわけがないからこそであって、なので、僕がホリエモンさんのブログとかHIUの会員になることは永久にありません。

であればこそ、ホリエモンさんの受け売りではなく、自分自身で「本音で生きて好きなことだけをして生きていく」方法を探す必要があるんだと思いますし、それこそ自分だけの人生の醍醐味でもあるわけで。

 

本「アメリカの卑劣な戦争」

最近、映画ばかりでしたので、久しぶりに本の紹介です。

さて、ジェレミー・スケイヒルさんの「アメリカの卑劣な戦争」なんですが、お正月に読みます宣言してからおよそ2ヵ月近くかかってようやく読み終わりました。って、もうこの読み終わるスピード自体が僕の気持ちを代弁しているというか。

この人の本、前に紹介した「ブラックウォーター」もそうでしたが、アマゾンのレビューでは高評価なんですが、僕の読解力や記憶力のスペックが低すぎるのか、あまり楽しめませんでした。訳が微妙なのか、元々の原文でもつまらないのかまではわかりませんが、もう少し書き方や構成を工夫すればいいのにと残念に思います。きっと永久に文庫化はされないでしょう。

この本はブッシュ政権からオバマ政権に変わって、アメリカの対テロ戦争がどのように変わったかということを、イエメンやソマリアのほか、ビン・ラディンを殺害したパキスタンでの事例に基づき、時系列で詳細に綴った本なんです。その意味で、やはりものすご~く貴重な本なんですが、大学でイスラム原理主義を研究する学生なんかじゃない限り、この先一生読まなくても誰も困りません。が、やはり僕には貴重な内容でしたね。

そもそも、大半の日本人のアメリカ大統領の認識って、ブッシュがトム・クランシー・コンバット・コンセプト(TCCC)を地でいくネオコンのイケイケで、一方オバマは博愛主義でリベラルで弱者の味方で対テロ戦争は縮小路線、といったイメージがあるはずです。

が、実はオバマはブッシュがやりたくてもできなかったことを承認して現実のものに変えたとんでもないイケイケ大統領だったんですね。で、それは一体何かというと、大きく2つあって、1つは「アメリカ(ホワイトハウス)が驚異と見なしたテロリストのいる国に対し、その国への事前通告や承認なしにアメリカ軍(統合特殊作戦コマンド)を派遣して殺害することができ、かつ大統領が緊急と判断した場合においては、議会の承認を得ずに作戦を実行することができる」ということ。そしてもう1つは「仮にテロリストと判断された容疑者がアメリカ国籍を有する場合であっても、大統領が必要と判断した場合においては、議会の承認を得ずに暗殺することができる」ということなんです。

つまり、アメリカは、テロリストがいるであろう国には勝手に特殊部隊を送れるし、そのテロリストがアメリカ人であっても、テロリストと見なされた時点で、そいつの有する一切の権利(裁判を受ける権利や弁護士を雇う権利などなど)が全て消え失せるということなんですね。これってものすごく異常なことなんですが、全く日本では報道されないばかりか、むしろ誰も知らないんじゃないでしょうか。

例えば、アメリカ政府に気に入らない人間がいた場合に、そいつをテロリストと決めつけさえすれば、暗殺してもOKと言ってるわけですよ。で、そんなのウソだと思うかもしれませんが、実際にアンワル・アウラキさんというアメリカ国籍のイスラム教の導師(宗教家)とその息子はその判断によって殺されてしまいました。で、現在では二人がテロリストでも何でもなかったことが明らかになってます。

それと、オサマ・ビン・ラディンが殺害された際には、世界中のメディアが雄叫びを上げて歓喜に駆られた報道が延々となされました。が、実はあれってアメリカの国際法を100%無視したド勝手な国家的犯罪行為だったのは全く知られていません。

実際、アメリカは事前通告なしに勝手にパキスタンに領空侵犯し、国境から内陸240kmほどのアボッターバードにあるビン・ラディン邸まで飛んでいって、真夜中にビン・ラディンと女性を含めた非武装の護衛とその家族を殺しまくって、ビン・ラディンの遺体だけをヘリに乗っけて、その他の遺体は放置したままスタコラサッサと逃げ帰ったという、パキスタンの国家主権を脅かすようなふざけた行為だったんです。

しかも、パキスタン軍に察知されないように、作戦にはご丁寧にも15億ドルかけてステルス仕様に改造したブラックホーク・ヘリが2機使用されたことからしても、パキスタン政府なんてハナっから全く相手にしていないという徹底ぶりで、この一部始終をオバマ大統領は幕僚と一緒にモニターで見学していたというのだから恐ろしい限りです。そしてこの件をアメリカは超法規的措置やら国家機密などと繰り返すばかりで未だにろくに説明もしていません。

挙げ句に「ゼロ・ダーク・サーティ」なんていう扇情映画まで作って正当化するという手の込みよう。ただ、ジェシカ・チャスティンは好きな女優で、映画もなかなかよくできてて好きな映画ではあるんですがね・・。ちなみに、この本を読んでから「ゼロ・ダーク・サーティ」を見ると、この作戦がすぐに許可されなかった理由とかの舞台裏がよくわかります。

その他、この本にはドローンを使用したテロリストの殺害の様子なんかがふんだんに紹介されていますが、その半分以上(おそらく7割以上)が全く関係のない民間人が犠牲になっているという体たらく。

想像してみてください。あなたが友人や家族を招き、夜、庭でバーベキューを楽しんでいたとします。みんなおしゃべりしたり歌ったりダンスしたりと、日曜の夕べをそれぞれに満喫しています。するといきなり上空にヘリコプターが現れ、ヘリから統合特殊コマンドの精鋭が落下してきて、地面に着地したのが砂煙の中で辛うじて見えたと思ったその時、ピシッ!ピシッ!という音とともに次々に友人と家族が射殺されていきます。そして自分も腕や足を撃たれ地面に瀕死で倒れ込むのも束の間、おもむろに両腕を後ろ回しに捻られ「オマエはテロリストだな!じっとしていろ!」などと乱暴に扱われ、家族が横たわっているを見て泣きわめいていると、バシッ、バシッと数発殴られて気を失います。その後、どこかの違法な刑務所に連れて行かれ、1週間ほど独房に監禁され、身に覚えのない尋問に加え、怒声や罵詈雑言を浴びせられます。で、2週間後に情報に誤りがあったことや無実であることが判明し、何の謝罪もなくゴミのように釈放されます。

って、もしこんな事が自分に起こったらどうでしょうか?どう考えてもなりますよ、テロリストに!そして復讐のために立ち上がるに決まってるじゃないですか。僕はこんな事が起こればテロリストになって核で武装しますね。っていう、まあ極めて当たり前の気持ちや感情こそが、世界でテロがなくならない最大の原因だと思ってます。要するにアメリカは他の国のことは放っておけばいいわけですし、そんな金があったら自分の国の貧困問題に取り組めというか。どうしても介入したかったら、学校作ったりインフラ整備したり、医療支援したり、そっちに力を入れればいいわけで。

 ただ、この本は2012年頃までの対テロ戦争しか書かれていませんので、オバマの2期後の政策や、ISの台頭やシリアの現状とか、現トランプ政権がやっていることは全く知ることができません。なので、続編を期待してます。きついけど出たらたぶん買うんだろうなあ。だって日本のメディアでは全く無視されている事柄ですしね。 

アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈上〉

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アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈下〉

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ゼロ・ダーク・サーティ スペシャル・プライス [DVD]

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映画「さらば青春の光」

評価:★★★★★

この時期、年度末で忙しくてなかなかアップできません。残念!

さてさて70年代イギリス青春映画の金字塔「さらば青春の光」です。こちらもマイ・ベストの一本。初めて見たのは高校生の時で、そのファッションとムーブメントの激しさと笑えるオチに衝撃を受けたのを覚えています。以来この映画も毎年一回は必ず見てますね。

舞台は1960年代のロンドン、主人公のジミーはどこかの会社で社内の各部署に郵便物をカートで届けるという地味~な仕事をしていて、さえない毎日ではあるものの、週末はバックミラーのたくさん付いたスクーターに乗って仲間とどんちゃん騒ぎを繰り返すことこそが彼の生き甲斐。

モッズスタイルに身を包み、着る服は上下ピチピチにまで絞りに絞ったジャケットやパンツスタイルで、こんなファッションとかムーブメントがあったことに驚愕!ドラッグをきめ、ザ・フーの音楽に合わせて体を激しくゆすってクラブの2階から飛び降りたりとか、結構「無茶をする奴」として仲間からは一目置かれているんです。

劇中、スクーターに乗ったモッズが大量に集まって「オレらはモッズ!モッズだぜ!モッズなんだよ!文句あるか!」と大合唱しながら行進するシーンがあるんだけど、あまりにもばかばかしくて笑えます。けれど、若いってきっとこういうコトなんでしょう。集団による熱狂と陶酔!今まさに自分がここにいるというまるで世界の中心のような万能感!

しかし結局みんなわかってるんですよ、これは束の間の休息であることを。なので、祭りが終われば自然と毎日の生活に戻らなくてはならないのは言うまでもなく、だからこそその一時が光り輝くわけで。な~んて偉そうなことを書きましたが、まあ当たり前の話で、毎日がお祭りだとありがたみが薄れてしまうというような。

なのにジミーだけは真剣そのもので、そういう集団的なカタルシスがジミーの抱える空虚さにぴったりハマってしまうんです。毎日の生活とお祭りとのギャップが大きければ大きいほど、深入りしすぎて戻ってくるのに時間がかかるというか。

要するにジミーは仕事なんて辞めて「モッズ」というスタイルやムーブメントそのものを仕事にしたい!と考えるようになるんですね。まるで高橋ツトムさんのマンガ「爆音列島」の主人公が族を仕事にしたいと考えるように。けどこれって60年代ならいざ知らず、今の世の中ならやり方次第で結構仕事になるかもしれません。

で、結局ジミーは、普段の生活にすんなりとフィットして戻っていく仲間たちとうまくいくはずもなく、どんどん孤立して自暴自棄になってみるみる落ちぶれていく、という典型的なダメ人間のお決まりのパターンなんです。もうかわいそすぎて見てられません。

そもそも「最低限のお金だけ稼いで好きなことだけをして生きていく」というのはすばらしい生き方だと思うし、劇中でジミーだけがハブになっていくのはちょっと納得がいきませんが。もう2、3人同調する奴がいても良さそうだけど、結構みんなシビアなんですよね。

物語の中盤、ジミーがジーパンを体にフィットさせるために、デニムを履いたまま風呂に浸かるシーンは最高で、父親から「オマエ、ズボンも脱がずに何やってんだ!」とかって嘲笑されると、ムキになって「ズボンじゃない、リーバイスだ!」といい返すシーンがたまりません。この頃からリーバイスは若者のマストアイテムなんですね。このシーンを見る度に、僕もジーパンを履いたまま風呂に浸かりたくなります。

改めてこの映画について書いてみると、何となく、若者と大人、仕事とムーブメント、仲間とファッション、協調と対立みたいな色んな要素がちりばめられているのに気がつくんだけど、すべて相反する概念ではなくて、全て融和と共存が可能な概念だと勝手に思ってます。

今はもう60年代ではないし、全てぐちゃぐちゃでいいに決まっていて、どれかを選ぶとどれかを捨てるとか、そんな二者択一的な単純な概念ではなくて、全て実現すればいいじゃん!と思っちゃいます。そしてそうすることができる時代に僕らは生きているし、それだけ今の時代はすばらしいんですよきっと。そんなことを感じる映画なので、毎日が生きづらいと感じてる人にはおすすめですね。今の時代「ジミーは決して1人じゃない!」ということに気づかせてくれます。

しかし、どうでもいいことですが、この映画と同名のお笑い芸人さんがいることにびっくり!この人達はこの映画のファンなんでしょうかね。検索ワードでこの映画よりも芸人さんの方ばかり出ることが今の時代を象徴してますね。お笑いとかほとんど見ないのでちょっと残念ではありますが・・・。

みなさん、年度末地獄もあと一ヶ月、ジミーみたいに目にクマができない程度にがんばりましょう。

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その他『見たい映画「ウトヤ島、7月22日」』

唐突ですが、今猛烈に見たい映画がありまして、それは「ウトヤ島、7月22日」です!

この映画って日経新聞の映画紹介コラムではじめて知ったんですが、2011年に起きたノルウェー連続テロ事件の惨劇を、ウトヤ島を舞台として73分ワンカットで撮ったという衝撃的な作品なんです。ただし、僕にとっては「カメラを止めるな!」みたいなワンカットというところは別にどうでもよくて、この衝撃的な事件が、事件からはや8年足らずで映画化されたということ自体に衝撃を受けたわけです。

そもそもノルウェーにとって、この事件は今世紀最大の大量殺人事件(テロとはいえ犯人が一人なのに対しなんと80人近い犠牲者が出ました)であり、そういう国民を生んでしまったこと自体が国際的に見ても恥ずべき大事件であって、できるだけ穏便に周囲が忘れ去るまで、事を荒立たせずにひっそりと蓋をしておきたいような事柄であるわけですよ。しかしながら、ノルウェーオスロ出身のエリック・ポッペ監督はそうすることを許さなかったんですね。そこがすごいんです。

僕としては映画っていうのは大きく大別すると2つに分かれると思っていて、一つはアクションやサスペンス、ラブロマンスやコメディー、それにSFやファンタジーや冒険なんかの、みんな大好き「娯楽映画」。で、もう一つは社会的な事件や歴史的な惨劇をモチーフにしたような、見ててひじょ~に苦しい映画たちです。そして僕は、娯楽映画以上にこの苦痛で重苦な苦業映画が大好きなんですね。そういえば、こういう映画って「社会派映画」とかって言われてるんでしたっけ。

例えば、1973年に南米のチリで起きた軍事クーデターと大量虐殺を描いたコンスタンチン・コスタ=ガブラス監督の「ミッシング」とか、ナチスソ連侵攻とその過程で消滅させられた村落を描いたトラウマ映画のベストワン「炎628」とか、同じく第二次大戦中、ポーランド軍人2万人がソビエトで秘密裏に虐殺されていた事実を描いたアンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」とかは、すべからく苦業映画ですし、内容が重すぎて見た後は何日も引きずるほどの衝撃。

さて、この事件の犯人であるアンネシュ・ベーリング・ブレイビクですが、こういう凶悪犯を死刑にできない法律というのは、北欧の福祉国家として有名なノルウェーという国の行き過ぎと限界、矛盾と無念を感じます。

なお、本当かどうかはわかりませんが、なんでもアンネシュ・ブレイビクは刑務所の中で「刑務所内のゲーム機をもっと新しいPS3とか4に変えろ!」などと、その刑務所内の処遇改善のための活動に精を出しているようです。って、こんなことがはたして許されるのでしょうか?こんな暴挙をよくノルウェー国民は暴動も起こさずに耐えてますよね。しかし、こういう奴ですら許すのがキリスト教の教えではあるわけですが・・・。

何が言いたいのかというと、僕は映画とか音楽というのは、当然娯楽ではあるんですが、一方でその娯楽性を隠れ蓑として、歴史的悲劇や惨劇とか、抑圧されたマイノリティーの現状とか、風化させてはならない社会的問題を世の中に伝え訴えることのできる最大の武器だと思ってるんですよね。まあ当然、その実現のためには制作過程でスポンサーを巧妙にだまし続ける必要があるわけですが。

で、日本の映画界を見ると、そういう映画ってはたしてどの程度作られてますでしょうか?ってことなんです。平成をみてもオウム真理教とか福島第一原発事故とか色んな大事件がありましたが、ほとんどそんな映画は目にしません。 森達也監督のドキュメンタリー映画「A2」などが一応は知られていますが、ほとんど主要メディアでは相手にされませんでしたし、相変わらずアニメの実写化とかアイドルのプロモーションビデオみたいな映画ばかりが巷にあふれかえってます。まあ、それはそれでしょうがないんですが、誰も戦わずに、そっと蓋をしてゆっくりなかったことにしようとしているのが本当に寂しい限りです。

その意味で、この映画を撮ったエリック・ポッペ監督はすごい監督だし、コロンバイン高校銃乱射事件が起きたわずか4年後にガス・ヴァン・サント監督が「エレファント」を撮ったこともやはりすごいですよね。

しかし「ウトヤ島、7月22日」は公開が3月8日なので、年度末で超多忙なので見に行けないだろうなあ~。

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その他「映画のこと」

淀川先生じゃないけど、映画って本当にいいものですよね。この世界には一生かかっても見きれない映画とか本、マンガとかアニメがあふれていて、そんな大量の創作物の中から、自分のお気に入りの一本・一冊を発見できた時の喜びといったらもうっ!

昔、知り合いに「最近の話題についていけないので、何か話題になるような映画を紹介してほしい」って言われたことがあったんですが、その時はもうびっくりして不覚にも少し後ずさったのを覚えてます。というのは、僕はその時まで「他人との話題づくりのために映画を見る」という考え方を知らなかったんですよ。

まあ、なんでもそうですが「好きだから見る」のであって、理由なんてないんですよ、好き以外に。なんか知らないけど気づいたら勝手にやってることっていうのは、つまりは自分の好きなことであって、そこに理由はいらないんです。そしてそれが僕の場合、映画だったり本だったりマンガだったりするわけです(あとアニメも)。

なので、「大ヒットして話題なので見に行かないと!」という脅迫観念的なノリはほとんど理解できないんですが、もっと寂しいのが「ヒットしてないから見に行くのやめよう」という無意味で消極的な逃避行ですかね。世の中と自分とで比較して、世の中の方を優先してしまうというのは日本人的発想なのかもしれませんが、そろそろそういうムラ社会的発想は卒業した方がいいのかと。

だってあまりヒットしなかった「ハン・ソロ」最高でしたし。まあ、ちょっとハン・ソロがいい奴すぎるのが鼻につきましたが、ランド役の役者がクリソツですばらしかったし、ファルコン号もかっこよかったし「ケッセル・ランを12パーセク!」とかって最高でした。とはいえ、レンタル屋のパッケージを見ても「アカデミー賞何部門受賞!」とか「全米何週間一位独占!」とかしつこく書いてあるのは、やはりそういう感覚で映画を見る人が多いということなんでしょうが。

例えば、僕は昔からことあるごとに新海誠監督の「雲のむこう、約束の場所」とか「秒速5センチメートル」とか「星を追う子ども」のすばらしさを訴えていたんですが、全く誰にも相手にされずにゲンナリしてたんですよ。しかしそれが「君の名は」の歴史的大ヒットであれよあれよという間にみんなが見に行ってしまって・・・ああっ!どうしてっ!という。

って書いてて唐突に思ったのは、要するに僕の伝え方がよろしくなかったんだということなんですね。で、そういう悔しさもあってこのブログを始めたわけです。映画のすばらしさを伝えるのは難しくて、どう考えてもマスコミの巨大なメディア力には叶わないけど、こういうブログでも少しは反撃できるんじゃないのかと。イメージとしては「天空の城ラピュタ」で、ムスカの乗る巨大な飛行船ゴリアテに対抗するドーラとかパズーとかシータが乗ってるタイガーモス号みたいな。針の一突きといいますかね。

ましてや世の中には町山智浩さんのような天才的な映画評論家がいるし、ライムスター宇多丸さんの「映画カウンセリング」なんて最高におもしろいし、副島隆彦さんのアメリカ映画の本質を突いた「ハリウッドで政治映画を読む」や「ハリウッドで政治思想を読む」なんてとんでもなく衝撃を受けた本で、今でも僕のバイブルになってます。

話がとりとめもなくなってきましたが、僕の場合の映画のように、何か好きなものを持ってることって、結局は自分の生きるエネルギーとか活力になるものなので、そういうものを一つでも持っていると、きっと人は強くなれる!と勝手に思ってます。

雲のむこう、約束の場所 [DVD]

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ライムスター宇多丸の映画カウンセリング

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ハリウッドで政治思想を読む (オルタブックス)

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映画「摩天楼を夢みて」

評価:★★★★★

僕の人生のベストテンに入るお気に入りの一本です。これは当時DVDが廃盤で、手に入れるのがすごく大変だったんですが、最近は再販されたようですね。とにかく是非とも営業職とかセールスマンの人には見てほしいというか。ちなみにセールスマンって呼称はまだ通じるのでしょうか。

さて物語ですが、不動産屋ミッチ&マレー社の社員達が必死こいて二束三文のゴミみたいな土地をとにかく売りさばくために、リーズ(leads=ネタ=顧客リスト)に載ってる顧客にしつこく何十回も電話しまくり、口八丁手八丁で嘘八百を並べ立てるというただそれだけの映画なんです。最初から最後まですっとその繰り返しで、うまくいかないとみんなでその顧客リストのせいにするという。「リーズなんだよ、全てはリーズ、リーズで決まるんだっ!」などなど、リーズ(leads)というセリフが100回は出てきて笑えます。

社員役としてジャック・レモンアル・パチーノエド・ハリスアラン・アーキンなんかが出てて、皆さん見事にセールスマンになりきっていてホントにすばらしいです。特にレビーン役のジャック・レモンなんてほとんどウソしか言ってないし、誰もいない公衆電話から電話を掛けてるくせに「今、空港から電話してて、すぐ次の便に乗らなきゃならない」とか、秘書なんていないくせに「グレース!前の物件は今いくらになった?」とかって秘書に確認するフリをしてみたり、ずっと会社にいるくせに「今ちょうどこの町に出張で来てまして」とか、とにかく自分はものすごく忙しいセールスマンで、自分と会えること自体が奇跡、それほどに有能な社員である、というような虚構を必死に電話中に演出しまくってるんです。そこがすばらしいんですよ。

「は~い、シェリー・レビーンジャック・レモン)で~す。ミセス、ナ~イボーグ!おすすめのリオ・ランチョの物件がありましてね~」とかって、その甘~くゆっくりとした語り口がとにかく聞いていて最高に心地いいことこの上ないんです。ジャック・レモンってやっぱり偉大な役者ですね、ラストのアル・パチーノとの掛け合いもすばらしいんですし。

あと最高なのは、本社から派遣されてきた幹部のアレック・ボールドウィンが「では、はじめるぞ!」とかいってダメ社員たちに檄を飛ばす一連の長回しのシーンなんですが、こいつは若造のくせに売りまくってるのでえばってて上から目線で高い時計を自慢したりとか、とにかくとんでもなくやなやつなんですよね。

で、ジャック・レモンエド・ハリスアラン・アーキンの面々はもう徹底的に扱き下ろされて罵倒されまくって、グウの音も出ないほどにやり込められるんですが、笑えるのはその重要なミーティングにすら、肝心のアル・パチーノ(リッキー・ローマ役)は出ていないという。笑いましたね。

この事務所の中ではアル・パチーノは結構売れてるセールスマンなので、まあそういうやつは我が道をゆくで、売りさえすれば会社の命令なんてどうでもいい、というスタンスがかっこいいんです。なので平気でミーティングもシカトという徹底ぶりで、もうド勝手で大好きです。

で、エド・ハリスといつもつるんでるアラン・アーキンも最高で、色々しゃべってはいるんですが、そのセリフのほとんどがエド・ハリスの言ったことをそのままオウム返しにしてるだけなんですよ。これを意識してやるんだからとんでもない演技力!

あとは劇中ずっと激しい雨が降り続いていて、建物の外にもほとんど出ないので、ずっと「キリング・ゾーイ」みたいに閉塞感が漂っていてクラクラするんだけど、それがエンディングのシーンでようやく建物の外に出てみると、雨がやんでて外はキラキラ晴れてるですよ。このシーン、見事だと思います。これが何とも希望にあふれていて、戦い続ける営業マンにエールを送っているようにも感じられて少し勇気がでるんですよね。なので、日々の営業で疲れている人はこの映画はとんでもなくおすすめです。

摩天楼を夢みて プレミアム・エディション [DVD]

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