GIGI日記~映画とか本とか~

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映画「摩天楼を夢みて」

評価:★★★★★

僕の人生のベストテンに入るお気に入りの一本です。これは当時DVDが廃盤で、手に入れるのがすごく大変だったんですが、最近は再販されたようですね。とにかく是非とも営業職とかセールスマンの人には見てほしいというか。ちなみにセールスマンって呼称はまだ通じるのでしょうか。

さて物語ですが、不動産屋ミッチ&マレー社の社員達が必死こいて二束三文のゴミみたいな土地をとにかく売りさばくために、リーズ(leads=ネタ=顧客リスト)に載ってる顧客にしつこく何十回も電話しまくり、口八丁手八丁で嘘八百を並べ立てるというただそれだけの映画なんです。最初から最後まですっとその繰り返しで、うまくいかないとみんなでその顧客リストのせいにするという。「リーズなんだよ、全てはリーズ、リーズで決まるんだっ!」などなど、リーズ(leads)というセリフが100回は出てきて笑えます。

社員役としてジャック・レモンアル・パチーノエド・ハリスアラン・アーキンなんかが出てて、皆さん見事にセールスマンになりきっていてホントにすばらしいです。特にレビーン役のジャック・レモンなんてほとんどウソしか言ってないし、誰もいない公衆電話から電話を掛けてるくせに「今、空港から電話してて、すぐ次の便に乗らなきゃならない」とか、秘書なんていないくせに「グレース!前の物件は今いくらになった?」とかって秘書に確認するフリをしてみたり、ずっと会社にいるくせに「今ちょうどこの町に出張で来てまして」とか、とにかく自分はものすごく忙しいセールスマンで、自分と会えること自体が奇跡、それほどに有能な社員である、というような虚構を必死に電話中に演出しまくってるんです。そこがすばらしいんですよ。

「は~い、シェリー・レビーンジャック・レモン)で~す。ミセス、ナ~イボーグ!おすすめのリオ・ランチョの物件がありましてね~」とかって、その甘~くゆっくりとした語り口がとにかく聞いていて最高に心地いいことこの上ないんです。ジャック・レモンってやっぱり偉大な役者ですね、ラストのアル・パチーノとの掛け合いもすばらしいんですし。

あと最高なのは、本社から派遣されてきた幹部のアレック・ボールドウィンが「では、はじめるぞ!」とかいってダメ社員たちに檄を飛ばす一連の長回しのシーンなんですが、こいつは若造のくせに売りまくってるのでえばってて上から目線で高い時計を自慢したりとか、とにかくとんでもなくやなやつなんですよね。

で、ジャック・レモンエド・ハリスアラン・アーキンの面々はもう徹底的に扱き下ろされて罵倒されまくって、グウの音も出ないほどにやり込められるんですが、笑えるのはその重要なミーティングにすら、肝心のアル・パチーノ(リッキー・ローマ役)は出ていないという。笑いましたね。

この事務所の中ではアル・パチーノは結構売れてるセールスマンなので、まあそういうやつは我が道をゆくで、売りさえすれば会社の命令なんてどうでもいい、というスタンスがかっこいいんです。なので平気でミーティングもシカトという徹底ぶりで、もうド勝手で大好きです。

で、エド・ハリスといつもつるんでるアラン・アーキンも最高で、色々しゃべってはいるんですが、そのセリフのほとんどがエド・ハリスの言ったことをそのままオウム返しにしてるだけなんですよ。これを意識してやるんだからとんでもない演技力!

あとは劇中ずっと激しい雨が降り続いていて、建物の外にもほとんど出ないので、ずっと「キリング・ゾーイ」みたいに閉塞感が漂っていてクラクラするんだけど、それがエンディングのシーンでようやく建物の外に出てみると、雨がやんでて外はキラキラ晴れてるですよ。このシーン、見事だと思います。これが何とも希望にあふれていて、戦い続ける営業マンにエールを送っているようにも感じられて少し勇気がでるんですよね。なので、日々の営業で疲れている人はこの映画はとんでもなくおすすめです。

摩天楼を夢みて プレミアム・エディション [DVD]

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