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本「一気にわかる世界史」

さてさて、先般紹介した「一気にわかる世界史」という秋田総一郎さんという方の書かれた本を読みましたが、すご~くいい本でした。文明誕生から現在まで、世界の中心となった地域や国々と、その周辺への中心の移動、つまりは「となりのとなり理論」による世界の発展の流れが非常にわかりやすく簡潔に書かれてます。まさにこれから本格的に世界史を学び直そうとするボクのようなペーペーにぴったりの名著でした。

興味のある方は買って読んでいただくとして、ここではさわりだけ紹介します。文明の誕生から現在までの世界の中心をかなりおおざっぱに整理すると以下のようになります。

西アジアメソポタミア:現在のイラク、イラン、トルコ、エジプト)B.C.3500~500
ギリシャ・ローマ(現在のギリシャ、イタリア)B.C.500~A.C.500
イスラム(現在のイラク、エジプト)A.C.500~1500
④西ヨーロッパ(現在のイタリア、スペイン、オランダ)A.C.1500~1700
⑤イギリス A.C.1700~1900
アメリカ A.C.1900

なんと、最も初期の頃に栄えたのはメソポタミアの中心であった現在のイラクですよイラク

で、注目すべきは、その中心地の繁栄期間が、現代に近づくにつれどんどん短くなってきているということなんです。①の中心の時代は3000年もありましたが、それ以降の②③では1000年④⑤に至っては200年にまで縮まっています。

何が言いたいのかというと、第二次世界大戦というのは、当時世界の中心であった⑤のイギリスにドイツが刃向かった戦争であって、この戦争によってイギリスは疲弊し、世界の中心から脱落・衰退していき、アメリカにその座を明け渡したわけです。

で一方、これまでは世界の覇権国であったアメリは、今後この世界の中心である期間がどんどん短くなっていくという傾向に加え、現在のコロナ情勢の影響で、世界の中心から脱落・衰退していくことはほぼ確実かと。ほぼ100年という周期になりますね。これは歴史的に見ると、かなり短い方ではないでしょうか。

また、このような中心の移り変わり大国の衰退と滅亡の理由として、本書では「これまでの成功体験や伝統の積み重ねによる社会の硬直化」が挙げられています。なんだか大企業がダメになってしまうパターンと同じような話ですが、それ以外にも「柔軟さと寛容さの消失」も挙げられていて、これにはなるほど~と唸りましたね。

たとえば、かつてのローマ帝国を例に挙げると、当初から帝国内にいたゲルマン人をローマ人はかなりバカにして蔑んでいたようなんです。その交渉術や戦上手でもあるゲルマン人を決して認めずに鼻で笑うかのような扱いをしていたことが、結果的にはゲルマン人に反感や不満を募らせ、最終的には(ゲルマン人に)滅ぼされてしまうわけですね。

これって今の日本を見ても、古い体質の会社とか特に公務員の世界なんかで顕著なことで、上の人間が部下を優秀なのに「若いから」とか「女性だから」とかどうでもいい理由を付けて、自分のプライドを守るために認めようとしないのと全く同じではないですか。

そしてもう一つは「近代化とは模範である」というきわめて簡潔な考え方ですが、これはつまり、近代化のためにはうまくいっている先進国を模範とすること、つまりは「成功者をまねること」なんだそうです。

これを実践せずに、自国の伝統や文化を守るためにあえて保護政策のような対策を取った国(日本の鎖国も同様です)、つまりは技術者を海外から招いたり、企業を誘致したりしなかった国、つまりはインド中国がこれにあたりますが、結果として近代化に大きく後れを取ったわけです。

このことはイスラム圏でも明らかになっていて、イスラム原理主義固執する硬直化した中東の国々の中で、特にトルコが世俗化や民主化を進め、積極的に先進国の技術を取り入れた結果、新興国となりつつあることが明らかになっています。

それに加え、社会主義という国家主導の政体もまた、発展を妨げることが今では明らかになっています。だって、ソ連邦の崩壊やソ連影響下の東ドイツ北朝鮮の悲惨な有様をみれば、現代では社会主義という政体はほぼ機能しえないのは歴史が証明しているわけでして。

なんだか、この本を読んで色々と考えさせられましたね。こうなると今後、日本はどうすればよいのかわからなくなってきました。大事なことを再度整理します。

①これまでの成功体験や伝統の積み重ねによる社会の硬直化は危険
②柔軟さと寛容さの消失もまた危険
③近代化とは模範である(成功者をまねることが重要)

ああっ、こういうことを初めて知ったアラフォーの自分が恥ずかしい、という。が、人間、自分の思い立ったときに本気で勉強する、というくらいでいいんじゃないでしょうか。何歳までにとか、何歳からとか、関係ないですよ。というわけで、この夏は資格の勉強のほか、世界史の勉強もしてみよっと。なんだか楽しくなってきましたね。

一気にわかる世界史

一気にわかる世界史

 

映画「アクト・オブ・ウォー 」(ハンガリー抵抗もの)

「アクト・オブ・ウォー」(評価:★★★☆☆)

今度はドイツ占領下のハンガリーが舞台のユダヤ人抵抗ものです。これまで色々と見過ぎて、もはや区別がつかなくなってきましたが、ハンガリーが舞台のレジスタンスものって、ボクとしてはこの映画が初かと。ちなみにハンガリーという国は、ドイツの右のポーランドのすぐ下にあります。

ただこの映画って、全編ハンガリー語ではなく英語で、かつ制作国もイギリスだし、しかも語り部の俳優が(アメリカ人の)ハーベイ・カイテルおやじなので、なんとなく違和感が拭いきれませ~ん。しかも、見終わったあと痛切に感じたのが、このハーベイ・カイテルおやじが、映画の骨子、つまりハンガリーユダヤ人抵抗組織の逸話を孫に語って聞かせる」というこの入れ子構造って果たして必要だったんでしょうか。

なんかプライベート・ライアンのパクリというか、ライアン二等兵語り部みたいな。ただ、プライベート・ライアンには実は致命的な欠陥があって、「じゃあライアン二等兵が知るはずのない序盤のトム・ハンクスの行動は(※語り部トム・ハンクスじゃないのに)一体どうやって知りえたの?」という。

ともあれ、近年の傾向なんでしょうか、こういうナチスに立ち向かった雄志的な映画がヨーロッパの色んな国で作られつつありますね。あまりにも悲惨すぎてやられっぱなしの自国の歴史を少しでも肯定的に捉えたいがためでしょうか。

色々とみてきて思うのは、なにもナチばかりがクソだったというわけでもなく、占領下または併合下の被占領国の警察機関とか憲兵もまた同じようにクソだったということです。特にこいつらの場合、自国民を弾圧したり取り締まる側にいるので、もはや始末に負えません。あと、ナチス憲兵にせっせと密告する輩もたくさんいます。もう見ていて胸くそが悪くなること請け合いですね。

そんな中、この物語の主人公、通称ソンソンは、愛する奥さんを病で亡くしたのを機にに立ち上がるんです。なぜなら、奥さんが早々に亡くなってしまったのも、病院からユダヤ人だからという理由で追い出されたから、つまりはナチスのせいだったからなんです。なぜ、ユダヤ人が迫害されなければならないのか、なぜ、大人しくナチス憲兵の言うことを聞かなければならないのか。

今考えれば当然ですよね。ただ、こういうナチスの悪行を、連合国側(イギリス、フランス、アメリカ)はしばらく見て見ぬふりをしていたのもまた事実。第二次大戦当時、世界は植民地の獲得に精を出し、東南アジアやアフリカのほとんどが列強国の植民地だったわけです。従って、大国(列強国)の論理や白人至上主義みたいな差別意識が、アジア人やアフリカ人に対するのと同様、ユダヤ人にも向けられていたとしても何ら不思議ではありません。

なお、第一次世界大戦(WWⅠ)では全世界で1,800万人が、第二次世界大戦WWⅡではおよそ5,500万人以上の死者を出したようです。どうですか、この途方もない数字は

ちなみに現在世界中で大騒ぎのコロナ情勢ですが、世界全体の感染者数が1,600万人を超え、死者数は64万人を超えたようです。が、この大戦の死者数とは比較にすらなりません。そう考えると、やはり戦争というのはとんでもない愚行であることがよくわかりますね。

この映画がどこまで史実に乗っ取っているのかはわかりませんが、やはり言葉の問題が気になりました。このソンソンという主人公はハンガリー人なんですが、そもそもドイツ語をしゃべれたんでしょうか。劇中ではたびたびナチス将校の軍服を奪って、ナチ高官のフリをして本物のナチをだまし討ちにするわけですが、それってドイツ語を自在に操れないと不可能なんですが、映画では何せ双方ともに英語ですので・・・。

まあ、このソンソンらがナチどもに機関銃やライフルで立ち向かうシーンはそれなりにカタルシスがありますが、やはり冒頭に述べたハーベイ・カイテルを起用した入れ子構造とか、言葉の問題とか、まあイマイチな出来でした。なんとなく最後まで嘘くさい話ですが、なぜかこの映画のジャケットだけはウソがありませんでした。さすがに販売元のアルバトロスとしても、そこまでやっちゃうのは気が引けたのかもしれません。

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映画「ヒトラーを欺いた黄色い星」(ベルリン抵抗もの)

ヒトラーを欺いた黄色い星(評価:★★★★☆)

いやあ、また良作に巡り会ってしまいました。これだから映画はやめられません。この映画、ものすごくいい映画でした。どうしてなぜこれほどの良作が日本ではほぼスルーされてしまうんでしょうか。

第二次大戦のさなか(1941年10月18日)、ベルリン在住のユダヤ人に対し、ポーランドの収容所への強制移送がはじまりました。それから終戦まで、最終的には5万人以上のユダヤ人が移送されたわけですが、実はゲシュタポ等の強制連行から逃れ、ベルリンに潜伏し続けたユダヤ人が7,000人近くいたようです。そしてそのうち終戦まで身を隠し、どうにか助かったのはおよそ1,500人程度だったようです。えっと、この映画を見る限りでは、残りの5,500人がどうなったのかはわかりません。

ここで忘れてはならないのが、ナチスドイツと戦ったのは、何も連合国や占領された国々のレジスタンスばかりではありません。では誰が戦ったのか?それは当時ベルリンに住んでいた一部の市井「しせい」と読みます。ボクは「いちい」と読んでました・・・汗)の人々、つまり理性(良識、良心)のあるドイツ人達なんです。

そしてこの映画では、ユダヤ人の視点から、現在存命の当の本人のインタビューを織り交ぜつつ、必死にユダヤ人を匿ってくれたドイツ人らを描いているんです。ちなみに、もしも匿っていることがナチスにバレたら、たとえドイツ人といえどその一家全員が処刑されてしまうんですよ?

そうです、これこそが、真に「戦う」ということなんですよ。

間違ってもホリエモン衆院選出馬当時、「スタッフはみんなよくやってくれてます。みんなと一緒に戦っているんですっ(※この「戦う」はOKです)」と訴えた堀江さんに対し、スタジオの古舘伊知郎「こちらも(スタジオで)戦っているんだっ!」などと上から目線で怒鳴ってましたが、おいおいオマエ、ふざけんなよ!と(今さらですが)言いたいです。

この国のマスコミというのは、何らリスクを負うことなく、何の裏付けも取ることなく、大本営発表を鵜呑みにし、事件や事故を面白おかしく報道し、そして視聴率を稼ぐだけ稼いだ後は、全てを忘れ去り、その結果に対し何ら責任を負うことはありません。加えて、そういうスタジオ連中が信じられないような給料をもらっているわけでして。

なぜならこの国のテレビ局は、総務省の管轄によって保護・規制され、新規参入が事実上不可能な聖域として、国によって手厚く守られているからなんです。そして、そういう構造をぶちこわすために戦ったのが堀江さんだったわけですが、それらに乗っかる権力層や既得権益層に徹底的に弾圧されてしまいました・・・・。

まあとにかく、この映画では、いつ見つかって処刑されるかもわからない状況の中で、命をかけてユダヤ人を匿った良識あるドイツ人達が描かれていて、先のブログで書いたように、やはり「こういう状況下では理性で立ち向かうしかない」というボクなりの結論が裏付けられた思いでした。

特筆すべきは、こういう理性あるドイツ人達って、そのほとんどがまた貧しいわけです。部屋も2部屋しかなかったり、食べるものにも困っていたりと、要は自分たちも生活が非常に苦しい中で、他人の世話を、ましてやユダヤ人を匿って保護するというのは、正直なかなかできることではないですよ。で彼らは、別に誰に言われたわけでも、強制されたわけでもなく、自発的にそういう救済行動に出るわけです、そう、自身の理性に従って。そこがすばらしいんです。

で、当然、自らの保身のため、ユダヤ人を売ったり密告するようなドイツ人もたくさんいるわけです。まあ、こいつらって、ライブドア事件当時、堀江さんを売った(貶めた)奴らと同じ類いの人たちですね(ただ、堀江さんは、とても実刑2年を食らうほどの罪は一切犯しておりませんが・・・・)。

まあともかく、我が国でも、こういう理性ある人間が増えることが、後の日本の行く末を決定づけるような気がします。相も変わらず思考停止のマスコミは、連日コロナとジャニーズしか報道しませんが、あまりにも低レベルなので一切ボクは見てませんし興味もありません。

そもそも、コロナって、今後どうなるかは誰にもわからないはずです。だって「新型」なんですから。そして、ワクチンができるまで、きっと抜本的な対策は不可能なはずです。なぜなら、コロナウィルスの黙示録的な映画コンテイジョンのラストでも、最終的にはワクチンが開発されてエンディングを迎えたわけですし。

となると「国が何も言わない!」とか「国と都で言ってることが違う!」とか「国は再度宣言を出すべきだ!」とか、もう皆さん不満タラタラの最前線の様ですが、そもそもこの国のダメダメな行政や自治体なんかに一体いつまで期待してんの?と聞きたいですね。

つまりは、そんなことぐらい、自分たちで(つまりは家族で、あるいは会社で、あるいは組織で)決めろ!と言いたいです。いつまでも大本営発表に頼っていると、どんどん理性的な判断ができなくなりますよ(ダメダメなマスコミみたいに)。

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映画「ザ・ハント ナチスに狙われた男」(ノルウェー抵抗もの)

「ザ・ハント ナチスに狙われた男」(評価:★★★☆☆)

いやいや第二次大戦ナチスものって一体何本あるんでしょうか。見ても見ても全く収束せず、むしろどんどん拡散して行ってるような、まるで今のコロナ情勢みたいですね。で、実はノルウェーものがまだあったんですね。

この映画は、ドイツ占領下のノルウェーに設けられたドイツの軍事拠点である航空管制塔の破壊のために、イギリスで訓練を受けたノルウェー特殊工作員12名が漁船に乗り込み、ノルウェーに接岸した直後のシーンで物語がスタートします。名付けて、作戦名は「マーティン・レッド作戦」!!もう作戦名がかっこいい。

で、当然ボクとしては、その特殊工作員達がナチス相手に死闘を繰り広げる物語とばかり思っていて、最初からアドレナリンが分泌されまくりの、テンション上がりまくりのトランス状態だったんですが、はじまって5分経過したところで・・・・・愕然

実はその秘密作戦って、とっくにナチス側にバレていて、まあ一連の擦った揉んだはありますが、工作員12人のうち11人があっという間に殺されるか捕るかしてしまいます。で、これってはじまって15分くらいの話なので、全くネタバレにすらなりません。

それ以降は、どうも物語の方向性が変わってきて、当初の作戦の目的なんて速攻で消え去って、たまたま捕まらなかった工作員の1人が、無事中立国であるスウェーデンに逃げきることが、むしろこの物語や作戦のメインテーマとなってきます。

なので「ザ・ハント」、つまりは逃げるノルウェー工作員それを徹底的に追いつめナチスという構図、要は国を上げた壮大な鬼ごっこと化していくわけですが、なんかもう、ここまでくると、どうでもいい感が否めませんでした。

だって、大きく掲げた「マーティン・レッド作戦」が速攻で出鼻をくじかれたわけですから、もうこの12人は負け戦(つまり負け犬)ですし、そいつらが生き延びようがなんだろうが、目的は何一つ達成できなかったわけですから、あえてこの工作員達にスポットを当てる必要があったのかと。確かにノルウェーとしては、この作戦や工作員達があまりにも悲惨で不憫なので、どうしても歴史的に何らかの意味を与えたかったんでしょうが、やはり負け犬の遠吠え感犬死感は否めません

まあ、ともあれ、その工作員を追い詰めるナチス将校として、イギリス俳優のジョナサン・リース・マイヤーズ君がとんでもなくいい演技をしていることが唯一の救いでしょうか。彼は、ユアン・マクレガーと共演したグラム映画の最高峰「ベルベット・ゴールドマインで彗星のごとくデビューを果たしましたが、それ以降はまともな映画に恵まれず、依然として鳴かず飛ばず状態でしたが、いやいや結構がんばってるではありませんか!

彼は始終、苦虫を噛みつぶしたような顔をしてるんですが、突然「シャイセッ!Scheisse!(クソッ!)」と叫ぶシーンはもう最高です。見終わった後は、もうすっかりこの「シャイセ」マネしちゃいました。これからは「ファックfuck!」ではなく「シャイセッ!Scheisse!」の時代到来かと。

まあしかし、この逃げる工作員ですが、彼を全面的に否定はしませんが、周りの人に助けてもらってばっかりで、見ていてイライラしてきます。こいつのために民間人が犠牲になるくらいなら、むしろ死んでくれた方がよっぽどいんじゃね?みたいな。

それと気になったのが、ナチスドイツのよく言えばきめの細かさ、悪く言えば神経過敏っぷりでしょうか。たとえば先のブログで紹介した「ハインドリヒを撃て」チェコレジスタンスとか、「バトル・オブ・ワルシャワ 名もなき英雄」ポーランドの密使の場合もそうですが、こういう少人数の工作員がドイツ領内へ侵入することを、いちいちドイツ軍はスパイや諜報活動で事前につかんでいて、そこにかなりの人員を割いてそういう小さな反乱の芽を速攻で摘んでしまおうとするんです。これってドイツ人特有の生真面目さでしょうか。

はっきり言ってボクがナチスなら、そういう少人数の工作員がドイツ内に入っても、ダルいしめんどくさいので、もうほっといてもいんじゃね?ぐらいに思うわけですが、それをナチスいちいちネチっこく聞き込みして調べて追跡して捕らえようとするんです。なんか、そういうきめの細かさは、もっと別のところに活かした方がいいように思うわけです。で、そういうドイツ人特有の気質きめの細かさが、最もダークサイドかつ負のベクトルに向いてしまったことでホロコースト(フランス読みでは「SHOAHショア」)のような悲劇につながったように思います。

まあ、イマイチな映画ですし、この映画によって「マーティン・レッド作戦」をどんなに再構築しても「犬死」感は否めませんが、収穫としてはジョナサン・リース・マイヤーズ君の「シャイセッ!」ぐらいでしょうかね。是非、お子様と一緒に「シャイセッ!」と叫ぶながら鬼ごっこをしてみてはいかがでしょうか。

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映画「ラストウォー1944 独ソ・フィンランド戦線」(フィンランドもの)

「ラストウォー1944 独ソ・フィンランド戦線」(評価:★★★★☆)

いやいやまたすっかりDVDのジャケットにだまされてしまいましたですハイ。この映画のジャケットをみると、銃を持って叫んでいるドイツの将校(確かにこいつは出てきますが)の姿があって、かつ副題も「独ソ・フィンランド戦線」とかって、モロに「戦記もの」というイメージを前面に押し出していますが、はじめに断っておきますね、もう大嘘もいいとこで、全くドンパチやらかす戦争映画ではありませんのであしからず。それにしても、この将校の奥にいるもう一人の片膝ついて銃を構えているやつは一体誰なんでしょうか?

あのう~どうしてこのトランスワールドアソシエイツとかいう会社の方、捕まらないんでしょうか?

でまあ、ボクも一旦は驚愕して「こぅのぅ・・・ホモ野郎っ!!」と怒り心頭でDVDを窓からフリスビーよろしく投げ捨てそうになったわけですが、いやいやどうして、なんともはや、実はものすごくよくできた素晴らしい映画ではないですか。正直、別の意味でびっくりしましたね。

この映画って、時は第二次世界大戦時、ドイツとは中立を保ち、むしろ支援する側に回っていた北欧(ノルウェースウェーデンフィンランド)の右側の国、つまりフィンランドの物語なんです。そういう中立を保った国内では、ナチスは一体何をしていたのか?そして、フィンランド人たちをどのように扱っていたのか?といったことが、この映画を見るだけで学べてしまうわけです。

この映画を一言で言ってしまうと、フィンランド人の片田舎に住む女性が、ある日出会ったドイツ人将校に一目惚れし、その彼との関係性を深めながら、戦火の中を生き抜いていく、という物語なんですね。現実にも、こういう現地(フィンランド)人とドイツの軍人との馴れそめは多かったようです。

だって、地元の田舎くさいフィンランド人なんかより、軍服にびしっと身を包み、精悍な顔立ちをしたアーリア人というのは、その行いはともかくとして結構モテたに違いありません。

で、この主演を演じた女優さんなんですが、なんとな~く不思議な魅力のある女優さんで、出てきた当初はおそらく誰もがこの女優さんを男だと思うはずです。で、しばらく見てると女性であることに気づきます。ただ、最初はものすごくヤボったく感じます。しかししばらく見ているとかわいく見えてきます。そして終盤はすごく美しく見えてくるんです。なんなんでしょうかこの女優さんは?もしも監督さんがこれらの一連の流れを意図的に試みたんだとすれば、これはもう巨匠と呼べるレベルではないでしょうか?

そして、随所で挟みこまれるフィンランドの山々とか森林とか夕日の映像が超絶に美しいんです。もう、ものすごい映画!これこそが本当に美しい映画で、まちがっても「ムーンライト」みたいな小手先感満載の作品なんかじゃないですよ(嫌いではないですが)。

しかも、この女優さんがテキパキと色んな仕事をこなすんですが、そのときの黒いエプロン?とか黒いスカーフ(ずきん?あるいは布でしょうか)を頭にぴしっと巻いたりして、確かにイスラムみたいではあるんですが、めちゃめちゃクールなんです。フィンランドの女性陣って黒が基本なんですかね。またその黒い服が白い雪と対になって、ものすご~く引き立つわけです。なんか、この女優さんとそっくりな子が主人公のマンガをどっかで読んだ記憶があるんですが、どうしても思い出せませ~ん。

ただ、当時のフィンランドは非常に貧しくて、まあ信じられないような風習が色々と残っていて、今の我々からする衝撃的なことを、そこいらのおじさんやおばさんが平気でやったりします。今みたいに権利!権利!の世の中からすると、もうメディアからは徹底的に叩かれることまちがいなしでしょう。

なお、この映画がこれまで紹介した映画と大きく異なるのは、このフィンランドという国がナチスドイツと同盟関係にあった(枢軸参加国)ということなんですね。つまり、この主役の女性はフィンランド人なので、ナチス相手でも堂々と言いたいことを言っても、さすがに最悪、殺されるまでには至らないわけです。なので、ナチスフィンランド人に対しては早々勝手なことはできないし、まあそういう事情も手伝って、ナチの将校と恋に落ちる現地人が多くいたんではないでしょうか。

ただ、当時ナチと交戦中だったソ連兵なんかの捕虜やユダヤ人に対しては、通常通り残虐行為が普通に行われます。そしてその処刑とかの最中に、平気でその前をこのフィンランド女性が横切ったりするので、もう見ててハラハラドキドキ、心臓に悪いです。

もう一つ強調したいのは、やはり大戦下における一連のナチのやり方に疑問を抱いた(ドイツの)軍人さんたちも結構いて、この映画でもそういう兵士の葛藤が描かれているんです。まあ確かなことはわかりませんが、現実でもきっとそうだったと信じたいですね。まちがっても先に紹介したヒトラーと戦った22日間のように、いくらナチとはいえ全員がガイキチのクズばかり、ということはあり得ないように思います。

ただし、基本的に軍隊は上官の命令が絶対ですから、日本の公務員みたいに上からの命令に背くことは許されません。また人間は、なぜか命令するよりもされる方を望む人が大多数のようで、そのことは権威者の指示に従ってしまう人間の心理を調べたミルグラムの実験」で明らかになっています。それを証明する事柄として、ナチスホロコースト(フランス読みでは「SHOAHショア」)のような悲劇・惨劇があるわけですが、じゃあ、それに対抗するためには一体何が必要なのでしょう?

それはやはり、理性しかないのではないでしょうか?この残虐な命令に打ち勝つためには、どう考えても理性的に判断したうえで、直ちに中止すべきなんです。なのになぜか、それができる人間は圧倒的に少数なはずです。なぜなら、大多数の人間が同調圧力に弱く、命令されることを好むからです。そしてその比率は、戦後70年を経た現在でもあんまり変わってはいないように感じますね。特に我が国のテレビやマスコミが大好きな国民を見てるとまさにそう感じます。

なのでそろそろ、不条理かつ理不尽な命令しか出さない上司のおっさんに、理性で対抗してみてはいかがでしょうか?「部長!話、長いっす」「部長!それ100パ無駄っす!」「部長!一生テレワークしててください!」などなど(これって理性?)。

 

(補足)最近、世界史の勉強に着手しました。手始めに世界史に詳しい方のブログで紹介されていた「一気にわかる世界史」を買いましたが、まだ最初しか読んでませんが、面白いです!

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一気にわかる世界史

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映画「ヒトラーに屈しなかった国王」ほか(ノルウェー抵抗もの)

「①ヒトラーに屈しなかった国王」(評価:★★★★☆)
「②ナチスが最も恐れた男」(評価:★★★★★)

第二次世界大戦時、破竹の勢いで領土を拡大するドイツに対し、ヨーロッパの各国が抵抗したわけですが、ボクの知識レベルが低く、その辺の歴史がなかなか理解できないので、改めて世界史を勉強し直すことにしました。そのため、今世界史に関わる本を相当数ブックオフおよびAmazon でゲットしちゃいました。

基本的には、第二次世界大戦におけるヨーロッパ各国の立ち位置としては、主に以下の3つに大別されます。まあこう見ると、枢軸国、連合国、あとは共産主義ソ連の三つ巴的なニュアンスでしょうか(エゥ-ゴ VS ティターンズ VS ネオジオンみたいな)。

①ドイツと同じ枢軸国(ドイツ、イタリア、あと日本も!)か、ドイツを(仕方なく)支持する枢軸参加国(ハンガリールーマニアブルガリアフィンランド
②中立国(スイス、スウェーデン、スペイン、ポルトガル
③連合国側でドイツに降伏し、支配・占領された国ポーランドチェコスロバキアオーストリアバルト三国ノルウェーデンマーク、オランダ、ベルギー、フランス)
※そして連合国(イギリス、フランス、アメリカほか)と共産主義勢力ソ連

まあ、ヨーロッパの大半を支配したドイツに対し、フランスも早々に降伏し、イギリスも頼りないので途中からアメリカがちゃっかり参戦し(ソ連もちゃっかり日ソ中立(不可侵)条約を破棄します)、その結果、圧倒的な物量でドイツと日本がボコボコにされたのは周知の事実。しかし、日本はユダヤ人の迫害の様な大罪は犯していなかったので、悪の枢軸などと呼ばれるのは甚だ心外ですが・・・。

前置きが長くなりましたが、ボクは上記に挙げた③ポーランドチェコスロバキアオーストリアバルト三国ノルウェーデンマーク、オランダ、ベルギー、フランスなどのレジスタンス達に興味があって、それを映画化した作品を収集しまくっているわけです。少し整理しましょうか。ちなみに地理的にはなかなか憶えにくいので(ボクだけでしょうか?)、ざっくり以下のように整理します(色々間違ってるかも)。

ドイツの右(東)ポーランドチェコスロバキアハンガリーソ連(東部戦線)
ドイツの左(西)
:オランダ、ベルギー、フランス(西部戦線
ドイツの下(南)オーストリア、スイス、イタリア
ドイツの上(北)
デンマーク、<海挟む>ノルウェースウェーデンフィンランド

そして、それらの国を舞台として製作されたレジスタンス映画を以下のように整理・再構築します。

ポーランドもの:「バトル・オブ・ワルシャワ」「リベリオン ワルシャワ大攻防戦」
チェコスロバキアもの:「ハインドリヒを撃て!」「ナチス第三の男」
デンマークもの:「エイプリル・ソルジャーズ」「誰がため」

そして、今回は冒頭のノルウェーものを紹介します。

「①ヒトラーに屈しなかった国王」(評価:★★★★☆)
「②ナチスが最も恐れた男」(評価:★★★★★)

この2本、もうものすごくよかったです。②の方は以前紹介しましたが、再度レビューすることにします。

まず、「①ヒトラーに屈しなかった国王」の方ですが、まずノルウェーという国は、元々はスウェーデンノルウェーの連合国で、それを解消・独立するため、デンマークのカール王子(ホーコン7世)をノルウェーに招いたという歴史的な経緯があります。そして、カール王子のお兄さんがデンマークの国王なんですが、この辺はこの北欧と呼ばれる国々の歴史的な背景や強い結びつきがあってこその事柄だと思います。が、その辺はもう少し勉強しないとわかりません。

ともかく、ここで大事なことは、ノルウェーカール国王(のちにホーコンに改名)は元々はノルウェー生まれではなく、デンマークの出生で、ある日突然ノルウェー国王として招かれることになり、そしてそれをノルウェーの国民が快くも受け入れた、ということなんです。

このことが、ホーコン国王の全ての行動の基本原則になっていて、その姿勢は、ナチスノルウェーに侵攻してきた際にも決して揺らぐことはありません。それを整理すると、以下のようになります(なんか今回は整理してばかりです)。

ノルウェーは各国の個別性と領域支配を前提とする主権国家であり、他国の侵略行為は断固として承認し得ない(認めないし従わない)こと。
ノルウェー立憲君主制(君主の権力が憲法により制限されている)のため、国王が内閣・大臣を無視して(ないがしろにして)行政権を行使することはできない。
国の行く末を決めるのは国民であって、国王の権力は形式的なものに過ぎない。
ノルウェーの国民は、国王のためでなく、全ては祖国のために行動しなければならない。そしてそれは国王も同様である。

この原則に基づいてホーコン国王は国王たらんとしているので、ナチスドイツが侵略してきて自国民が蹂躙されるのを知ると、そのジレンマに悩むわけです。さっさとナチスに降伏して国民の被害を最小限に抑えるのか、それとも断固としてナチスの侵略行為は認めず、国民の被害をある程度は許容するのかというね。

まあその辺は映画を見てもらうとして、この映画が突出してすごいのはナチス接近中を示す重低音(効果音)なんですね。ナチスが侵攻してきた際に、国王一行は首都オスロにいて、そこに居続けるとさすがに危ないので、汽車とか車で北へ北へと逃げるわけですよ。しかしナチスの追跡もハンパじゃなくて、行く先々で結構な数のドイツの戦闘機(メッサーシュミット?)とか爆撃機が飛来するわけです。で、その度に国王一行は走って逃げるんですが、そのときの効果音がまるでターミネーター2」の近未来の廃墟シーンみたいに、ヴォ~~~ン!ヴォ~~~ン!ヴォ~~~ン!ヴォ~~~ン!っと重低音が響き渡って、自宅のホームシアターの5.1chサラウンドスピーカーの効果も手伝って、もう臨場感満点でものすごく怖かったですハイ。要するにその効果音が流れはじめるとドイツ空軍が迫ってるぞ~コラッ!という意味なんですが・・・。ともかく、国王が逃げ惑うシーンは是非スピーカー音量を150%ほど上げてお楽しみください。

ちなみに、このホーコン国王ウィキペディアで写真も見れますが、ルックスも非常に毅然とした人物で、まあ映画では単なるジジイではあるんですが、彼の立ち振る舞いとかセリフに僕は泣きましたね。

今の我が国のように、自己PRと自己保身または金持ち優遇政策(つまり自分たち議員のこと)のことばかりで、国民のことなんてこれっぽっちも考えていない政治家どもにこの名作をプレゼントしたいです。あとバカの一つ覚えのように毎日「コロナ何人」としか言わない思考停止なマスコミも同罪ですが。

で、このホーコン国王は結局イギリスに亡命するわけですが、その後はノルウェーレジスタンス活動を最大限に支援する裏方のような立場につくんですね。そのあたりは、ノルウェーの英雄でレジスタンスのリーダーであるマックス・マヌスの戦いを描いた「②ナチスが最も恐れた男」を続けてみることを痛烈にお勧めします。あまり憶えてませんが、劇中でマックス・マヌスが変なヒゲのジジイから勲章をもらって「光栄であります!」とかって挨拶してたんですが、要はそのジジイこそが、このホーコン国王だったんですね。ようやく謎が解けました。

ちなみにこのマックス・マヌスなんですが、顔は優男(本物は、も?イケメンです)で体も小柄なんですが、もうキチガイみたいなやつで、2階(3階かも)の窓から飛び降りて骨折したり、その後囚われ先の病院から看護婦を口説いて逃亡したり、もうハチャメチャなやつです。で、そのレジスタンス活動に参加する仲間達も究極にかっこいいんです。キチガイマックスを筆頭に、頭脳派のグンナー、腕っぷしの強いコルベイン、洒落者でマックスとすぐに意気投合したグレガス、そしてキザなラクなどなど、この仲間達って本当にいいんです。なんかこれを見ていると、デニーロのワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカの前半を思い出しました。

ファッションもお洒落で、特に洒落者グレガスのスリーピースのスーツにネクタイ、シャツの首元にスカーフ(ネクタイスカーフというんでしょうか?)、サスペンダーはお約束で、そしてフラットキャップを粋にかぶったスタイルは必見です。

ただ、マックスだけが作業服みたいないで立ちで少しダサ目ですが、まあ似合ってますよね。このマックスを演じた役者さんはアクセル・ヘニーさんと言って、ノルウェーオスロ出身の役者さんで、ものすごくいい味を出しているんですが、現在は完璧にハゲてしまったようです・・・。しかもボクと同い年という・・・。

まあとにかく、マックスが自転車に乗りながら後ろ向きに機関銃をシュダダダダダッッッ!!!と連射するシーンはもう最高にかっこいいです。それともう一点、見るべきはナチスの高官の女になってしまう金髪の秘書役の女優さんなんですが、もう最高に超絶にきれいです!もうこの子だけを2時間見ていたい!というほどの美人さんなので、世の小汚い(会社で何の役にも立ってない)おっさん達も、キャバクラなんか行かずに、まずはこの子を見るべきかと。

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映画「エイプリル・ソルジャーズ」ほか(デンマーク抵抗もの)

①エイプリル・ソルジャーズ(評価:★★★☆☆)
②誰がため(評価:★★★★★)(2019/5/25解説済)

ナチス占領モノもたくさん見てます。その中でも、1940年4月にわずか一夜の戦いで占領を許したデンマークが舞台の映画を挙げてみました。①がドイツ侵攻時のお話で、②がドイツ占領後のお話という流れになります。

そもそもデンマークという国は、ドイツの北側に突き出たユトランド半島北部に位置する小国で、地図を見てみるとこの国がドイツと地続きでつながっていて、なのに北欧の一国に数えられること自体、なんとなく不思議な感じがします。

で、たった一夜で降伏し、自国をドイツに明け渡してしまったデンマークですが、その一夜に国境付近では一体どんな戦闘やドラマが繰り広げられていたのか?それを描いたのがこの「①エイプリル・ソルジャーズ」なんです。

が、もう冒頭から度肝を抜かれること請け合いです。というのは、まず、ドイツ軍の動きを監視していた国境警備隊ですが、そいつらは小さな掘っ立て小屋にたった2人しか詰めてません。で、こいつらはタバコ吸いながらだるそうに「あっ、なんか、ドイツ軍の動きが活発だすっ」とかって呑気に報告してるんです。この戦時下に。

まあそれはともかくとして、その直後にドイツ軍が国境を越えて侵攻してくるわけですが、それを向かい撃つは、なんと、その名も高きデンマーク軍の誇る「自転車(じてんしゃ)部隊!」という暴挙。あのぅ~一体どうやってドイツの頑丈かつ機敏な装甲車を自転車部隊で食い止めるというのですか?

そもそも、この自転車部隊の隊員らもドイツ軍が攻めてくるとは全く考えてはいなかったようで、訓練中に軍曹が「よし、では1分30秒以内でパンク修理だっ!」とかって命令しても、「そんなの無理に決まってんじゃん・・・」などと、軍人と言うよりはピクニックに出かけた学生的な立ち位置でして。

少なくとも、デンマーク軍って、軍隊という割にはものすごく緩いし、上官も比較的優しいので(怖くないので)、もうはじまって10分ぐらいで、この若い兵士達が皆殺しにされてしまうかもしれないという不吉な予感が脳裏を離れませ~ん。なんかとんでもない残虐非道かつ不条理な弱い者いじめ映像が今にも画面いっぱいに繰り広げられそうで、もう心臓がバクバクドキドキ心配になります。

しかし、まあそこは、優秀な少尉の奮闘でどうにか回避されるわけですが・・・。それと、自転車部隊の隊員達がせっせと自転車に機関銃とかの武器をくくりつけたり、車列を乱さずに走行したり、山林の中を自転車を担いで登ったりと、意外にもそういうシーンがかなり新鮮で、まさに自転車部隊に焦点を当てた映画としては世界初の快挙ではないでしょうか。

そういう視点からすると、この映画は非常に画期的とさえいえるかもしれませんが、とにもかくにも隊員が学生にしか見えませんので、題名は「エイプリル・スチューデント」の方がよかったように感じます。

で、この映画の続編的な意味では、つまり占領後のナチ統治下のデンマークはどうなってしまったのか?ということが気になりますが、それは以前、このブログで絶賛しましたレジスタンス映画の最高峰「②誰がため」を見るしかないでしょう。このナチ支配下にありながら、勇敢にも反旗を翻したデンマークの伝説的英雄、フラメンシトロンのはかない生き様を描いています。まあとにかく、このフラメンの佇まいがもう最高にクールでかっこいいんです。

で、最近気づいたのは、こういうレジスタンス達っていうのは、要は軍人ではないので軍服を着てないわけです。かといって小汚い格好をしているわけでもなくて、スリーピースのスーツ着て、ちゃんとネクタイもして、サスペンダーしめて、帽子かぶって、といった風に、大半は紳士然としたファッションでキチっと決めているわけですよ。

まあボクなんかからすると、そんな格好でよく戦えるよなあ~とかって思いますが、そんなフォーマルなファッションなのに、ナチが怪しい動きをするや否や、懐からおもむろに銃とか軽機関銃を取り出して、ナチに向かってズダダダダダダダダダダダダダッッッ!と一斉射撃をカマすシーンはもう最高のカタルシスであること必死!!ちなみにそういうシーンは、今回紹介した「エイプリル・ソルジャーズ」では皆無ですのであしからず。

まあとにかく、ルックスとか人気だけで映画の主演を決めているようなお子ちゃまな日本映画界では絶対にこういう名作は生まれませんね。映画の文法そのものが異なっているとしか言いようがありません(ジャニーズとか変なアイドルとか、みんな光の中に消え去ってください)。

ともあれ、この2本ですが、是非続けてみることをおすすめします。

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