GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

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その他「映画のこと」+映画「マイ・プライベート・アイダホ」

評価:★★★★☆

さてさて、このブログですが、基本的に映画のネタバレは一切ありません。ストーリーやあらすじもほぼ皆無です。なぜなら僕としては、ストーリーやあらすじはあくまでも映画を実際に見たときに楽しむものであって、どうしても事前に知りたければ、そのときはAmazonとかで調べればいいと思ってるからです。

なので、むしろ僕自身が衝撃を受けたりとか、かっっけえ!と興奮冷めやらぬシーンを中心に紹介してます。そもそも、僕の場合、たとえクソ映画であってもそういうシーンが一つあるだけでその映画を好きになってしまう場合があるからです。例えば・・・・っと、例を挙げようとするとなかなか思い浮かびませんね。それはもう、その映画が好きになってしまってるからなんですが。

が、例えば最初に見たときはわけがわからなくて唖然としたクソ映画(と思った)ガス・ヴァン・サント監督の「マイ・プライベート・アイダホ」なんて、まさにそれ。リバー・フェニックスナルコレプシーという持病持ちの男娼役で、興奮すると道のど真ん中で寝てしまったりするつかみ所のない作品なんですが、今では大好きですし、一気にガス・ヴァン・サントさんのファンになったのもこの映画があったから。

だるそうに流れる音楽もサイケデリックで始終ラリってるような感じだし、時折挿入される静止画もナメてるとしか思えないんです。というのは、普通、劇中にこういう2~3秒程度の静止画を入れるのは「ミーン・ストリート」や「グッド・フェローズ」を作ったスコセッシ監督の十八番だし、「トレインスポッティング」とか「ブロウ!」でも散々パクられてましたが、それらすべて、ほんとに静止画、つまり写真を2秒ほど止めて使ってるわけですよ、当たり前ですが。

で、一方、問題の「マイ・プライベート・アイダホ」の場合は、その2~3秒を俳優たちが本当に止まってる、つまり、必死にその体勢で動かさないように体や息を止めて静止画のフリをしているだけで、実はふつうに動画なんですわ。そこがすごい、そこがクール、そこがクレイジー!なわけです。で、一体何のために?と聞きたくなりますが、ただ、そんなことをやらかした監督はガス・ヴァン・サント監督しかいなかったわけで、その発想がもう天才。それにちょい役で出てくるハンス役のドイツ人俳優ウド・キアーさんも本当に怪しくて最高です、こんな大人、ほんとにいるのかなあ。

この映画って、きっと20歳より前に見てもほとんど意味がわからないと思います、というか、今見てもよくわからないので何度も見たくなるというか。舞台は監督の愛するポートランドやシアトルとかの都市なんですが、ポートランドはその名の通り自然豊かな港町で、いまではアメリカで大人気の都市になってます。それとシアトルはグランジの発祥の地で、ニルヴァーナカート・コバーンなんかがよくボロボロのジーンズをはいて歌ってたけど、この映画ではそういうグランジファッションの芽生えがみてとれます。その一方で、始終、牛とか田園風景の映像が差し込まれるんだけど、そもそもポートランドといえばコンパクトシティのはしりで、中心部を離れれば広大な自然が広がっていて、そこで地産地消を掲げ、農作物を育て、その食材をレストランに提供するといった取り組みが積極的になされているわけですね。

さて「マイ・プライベート・アイダホ」ですが、ファッションも最高にクールなので、よくスタイリストさん達が参考にしてたりするようです。リバーフェニックスのサングラスに赤いパンツに細身のショートブーツとか、キアヌ・リーブスのボロボロのブラック・デニムにライダースとか、ムートンジャケットとか、黄色いトライアンフとか、とにかくクールなので、ファッション好きにはおすすめです。

あとはガス・ヴァン・サント監督の「マラノーチェ」や「ドラッグストア・カウボーイ」もすばらしい映画ですが、映像と音楽をメインとして、物語性をほぼ排除した実験映画「GERRY ジェリー」「エレファント」「ラストデイズ」の3作品はいわゆるクソ映画なので気をつけましょう、ほぼ眠くなります。ですが、唯一「エレファント」は好きなので機会があればこのブログに書きますね。

ところで、このブログですが、読んでくれる人がいるとは思ってなかったので「いいね」を付けていただき、なおかつ読者にまでなっていただいた方がいて、本当にありがたいと思ってます。感謝です。しかし、読者が200人以上いたり、映画の記事だけで200本以上書いていたり、年間400冊以上の本を読んだり、なんかすごい方ばかりで非常に恐縮してます。いつもありがとうございます。僕は年度末で超多忙ですが、皆様一緒に軽いステップで乗り切りましょう。

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映画「トレーニング・デイ」

評価:★★★★★

これまたものすごい映画です。ジャンル的には刑事モノまたは麻薬捜査官モノなんですが、ギャングあり、警察上層部の腐敗あり、新人の成長ありで、まちがっても一つのジャンルでは括れません。しかも、見終わって気づくのですが、これは実はたった一日の出来事を描いた映画なんですね。つまり24(トゥエンティー・フォー)みたいな。ものすご~く内容の濃い一日なんです。きっとこんな一日を体験してしまったら、2~3日は起き上がれないといったような。

まあとにかく、主演のイーサン・ホークデンゼル・ワシントンがすばらしい。イーサン・ホーク演じるジェイクは、麻薬捜査課に配属になったばかりの新米刑事で、そのヘタれ具合がいいんです。イーサン・ホークは「今を生きる」からのファンですが、結局「今を生きる」の中で未だに売れてるのはイーサン・ホークだけで、あとの皆さんはどこかに行ってしまいました。

対して、上司役のアロンゾをデンゼル・ワシントンが演じているんだけど、おそらくこの映画まで本格的な悪役をやったことはなかったと思います。まあ、この映画の場合、ほんとに悪役なのか?と問われると、そうとは言い切れないところが微妙なんですが。

それまで、僕の中でのデンゼル・ワシントンはどちらかというと優等生的イメージが強かったので、この映画を見たときにはそのギャップにぶっタマげましたね。一言でいうなれば、本物にしか見えない、といったところでしょうか。麻薬捜査課の有能なリーダーで、目的のためならば規則を破ることもいとわないというポリシーがもう大好きです、しびれますね。

結局のところ、イーサン・ホークのヘタレ具合と、デンゼル・ワシントンの常に余裕たっぷりなスタンスが絶妙にハマリ合うことで、物語に陰影を与え、かつその相乗効果によって、刑事物でもバディームービーでもない形容しがたい作品として奇跡的に成立しているように感じます。そしてそれはキャスティングの勝利であって、演技力のハンパないこの二人だからこそ実現できたというか。

特に好きなシーンは、アロンゾが新人のジェイクに無理矢理ヤクを勧めるシーンです。ジェイクが何度もいやがって断り続けるんですが、そうすると道路の真ん中でいきなり車を止め、やおら銃をジェイクに突きつけ「麻薬捜査官が潜入捜査中にヤクを勧められたらオマエは断るのか!」とか、クラクションを鳴らしてくる後続車に向かって「Shut the fuck up!!うるせえ!黙ってろ!」とかって怒鳴り散らしたりとか、もう完璧に狂ってます。パワハラどころか犯罪ですね。まあ、言ってることは筋が通っているんですが。

それと大好きなのが、二人がサンドマンという売人の家に家捜しに行くシーンで、違法捜査なのでサンドマンの奥さんが「ふざけんな!」とかって騒ぎ出すんだけど、そうすると周りにたむろってるストリート・ギャングたちがぞろぞろ集まってきて銃撃してくるんです。そして、その時のギャングのほとんどが「腰パン」なんだけど、パンツ丸出しなのが普通で、中にはぎりぎりおしりの割れ目の上まで見えてるやつがいたりとか。しかもズボンがかろうじて股に引っかかってる状態なので、それが絡まってちゃんと走れなくてなかなか二人に追いつけないという。なお、最近日本ではこの腰パンはあまり見かけなりましたが、日本の若者もここまでしないとダメという教科書のようなシーンです。

あと、アロンゾ率いる麻薬捜査課のチームの面々も大好きです。みんな悪そうでとても刑事には見えないし、一癖も二癖もありそうな輩ばかりで、全く信用できません。アロンゾが言うように「オオカミに勝てるのはオオカミだけだ!」というポリシーとぴったりマッチしていて説得力が増します。

ともあれ、この映画に出てくる黒人ギャングとかチカーノ(メキシコ系)ギャングはほんとに怖くて、こんな怖い人達の前で演技すること自体が拷問というか。たぶん、本物の方々もかなり雇ったのではないでしょうか。そして、その意味で、これらの大量にいるギャングを食う演技を見せるデンゼル・ワシントンさんは本当にすごいです。

あと、チカーノ・ギャングのスマイリーを演じたクリフ・カーティスさんは、ジョニー・デップ主演の「BLOW(ブロウ)」でパブロ・エスコバルを演じていたりとか、ものすご~く味があって色んな役のできる俳優さんです。ほか、レイチェル・ワイズ主演の「ニューオーリンズ・トライアル」なんかにも出ていますが、最初は彼だと全く気がつかないのがやはりすごい。ちなみにどちらも最高の映画ですね。

まあ、見所満載で、麻薬捜査課を一日体験入学したい方、本物の腰パンを体得したい若者にはおすすめです。あ~アロンゾの若かりし頃とかカジノでの一件のサイドストーリーを作ってほしいですね。

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映画「バニシング・イン・60」

評価:★★★★★

アメリカを代表する伝説のカーキチ、H・B・ハリッキー監督の「バニシング・イン・60」です。まあ、大丈夫だとは思いますが、間違ってもニコラス・ケイジ主演の「60セカンズ」を借りないように気をつけてください。全くの別物です。

この映画もマイベストの一本で、当時、生まれてウン十年たって、この映画を知らなかった自分に怒りすら感じたのを覚えてます。もしも映画好きを公言する人でまだ未見の方がいれば、いますぐTSUTAYAへGO!!

簡単にいうと、車の修理屋でかつ車の事故なんかの保険の調査員でもある主人公(ハリッキー)が実は単なる車泥棒で、「60秒でどんな車も盗み去る!」と豪語する小悪党なんだけど、そのくせ保険のかかってない車は絶対に盗まないという、チンケな美学を持っているんですね。で、ある日、高級車やレア車ばかりを40台集める仕事を受け、仲間と一緒にその仕事に取りかかるという物語なんですが、見るときはこのブログの文章すべて忘れてしまって構いません。

そもそもこの映画はストーリーなんて二の次で、黄色いマスタングが町中をものすごい爆音とともに猛スピードで走り回り、分離帯とか店とか車とかの物体に散々ぶち当たって、ぶっ壊れて、吹っ飛んで、ボロボロになって、それでも走り続けるという、アメ車の限界に挑んだような、ひいてはアメリカの自動車産業を賛美するかのような、すさまじい映画なんです。

しかも、この映画はハリッキーが監督・脚本・主演を兼ねており、私財をなげうって完成させたそうで、すでに70年代初頭に「Buffalo '66」のヴィンセント・ギャロみたいなとんでもない人がいたんですね。いや~アメリカという国は本当にすごい。しかし、このハリッキーさん、「バニシング・イン・60」の続編を撮影中、スタント時に亡くなってしまったんです。たぶん生きていれば、きっとものすごい映画を量産したんでしょうが、本当に残念でなりません。

そもそもカーチェイス映画は色んなのがあって、例えばスティーブ・マックイーンの「ブリット」とか、マット・デイモンの「ボーン・アイデンティー」、デニーロの「RONIN」とかがわりと有名だし、あとほぼ見てないけどポール・ウォーカーの「ワイルド・スピード」シリーズとか、まあ掃いて捨てるほどあります。が、それら全部ひっくるめても、この映画には到底かないません(そういえば、ポール・ウォーカーも事故で亡くなってしまったんでした。残念)。なぜなら、カーチェイスシーンがなんと40分もあって、映画史上まだこの記録は塗り替えられていないそうですが、一体だれがそんなバカな映画を作るんでしょうか。

しかも、映画の中には本当に事故ったシーンも含まれていて、ハリッキーも実際にケガしたんだそうです。日本だとすぐ「安全管理は徹底してたのか!」とか「しかるべき許可をきちんと取ってたのか!」とかってすぐ問題になりそうですが、おそらくハリッキーさん、無許可も結構使ってるんじゃないでしょうか。

そもそもクロード・ルルーシュ監督(しかし名前がかっこいい!)のたった9分間の伝説的短編映画、「rendez-vous(ランデヴー)」も無許可ですし。こちらも早朝のパリをフェラーリが爆走するだけのふざけた映画なんですが、撮影は一発勝負だったようですし、カーキチは許可とか安全の対局にいるのではないでしょうか。興味のある方はyoutubeでどうぞ。

好きなシーンは冒頭の車の中のシーンで、ダッシュボードの上にサングラスが5つ置いてあるシーン、しかしかっこいい!。これはタランティーノがなんかの映画でマネしてたように思います。たしか「フロム・ダスク・ティル・ドーン」だったかな?確証はありません。これは車持ってたら絶対マネするのになあ~。

もう一つは、ハリッキーが盗んだ車の横を、ゆっくりとタバコをくゆらせ、窓についたゴミとかをいちいち取りながら、一台一台じっくりと眺め歩くシーンが逸品です。ただ、そんなにかっこつけても所詮は盗んだ車だろ~が!と突っ込みたくなります。が、ハリッキーさんは本当にかっこいいんですね。普通の役者としても男前なんです。

なお、タイトルクレジットでキャスト(starring)に「ELEANOR(エレノア)」と表示されたときは震えましたね。つまりはこの映画の主演はハリッキーでも誰でもなく、マスタングだ!という信念がすばらしい。いや~車愛ですねえ~。

あと窃盗仲間のサングラス姿がみんなかっこいいのと、ハリッキーがユージーンとケンカばかりしてるのも見所ですね。

さて、伝説のカーキチ映画、当然必見ですが、レンタル屋には「バニシング・ポイント」とか「バニシング・イン・ターボ」とか似たタイトルの映画がたくさんあるので、必ず後ろを見て、ハリッキーが監督であることを確認しましょう。

ちなみにハリッキーの第二作「ジャンクマン」は、この映画を切り貼って作っているので、シーンは同じモノが多いし、繋ぎもよくないので、ほぼ見ないで大丈夫です。 

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映画「ブロークバック・マウンテン」

評価:★★★★★

けっこう有名な映画「ブロークバック・マウンテン」です。とにかく大好きな映画。これもマイベストの一本。こちらも2枚組の「プレミアム・エディション」を買っちゃいました。やはり年に1回は必ず見ますね。

物語は60年代のアメリカのワイオミング州を舞台に、二人のカウボーイの激動の20年を描いた映画なんですが、なぜかゲイ・ムービーとして有名になってしまいました。が、僕にとってそれはどうでもよくて、むしろカウボーイの仕事や生活を描いた映画として、また60年代の貧困白人労働者や季節労働者のリアルな生活を描いた映画として、とても興味深くて新鮮な映画です。

主人公の二人は放牧された羊を獣(クマとかオオカミ?)から守るため、羊と一緒に大自然の中を移動し、羊の番をしながらテントを張って寝たり、野営地でダッジオーブンを使って食事を作ったりと、随所にキャンプ的要素が満載で、無性にアウトドアに出かけたくなります。まあ出かけませんが。

とにかく、その山間部の大自然の美しさがすばらしく、昼間は暑くても夜は急に冷え込んだり、時に雪が降ったりと、天候や季節変化の描写がリアルで見ていて全く飽きません。途中、熊が出てくるシーンはかなりビビりますので要注意。

とまあ、そんな中でカウボーイの二人、ジャック(ジェイク・ギレンホール)とイニス(ヒース・レジャー)は一夏を二人で過ごし、お互いに強く惹かれ合っていくわけです。今の時代、だいぶ世間の理解も進み、ゲイとかレズビアントランスジェンダーといった多様な性を認める社会になってきてるけど、当時はもろに差別の対象だったわけで、場合によっては殺されてしまったりとか、本当に恐ろしい時代だったんですよね。その意味で、そういった同性愛者の権利のために戦ったハーヴェイ・ミルクさんなんかは本当にすごい人で、その辺はガス・ヴァン・サント監督の「ミルク」に詳しいので興味のある方はどうぞ。

さてさて、特に好きシーンは、その運命を変える一夏を過ごしたあと、二人は数年ぶりに再会するわけですが、ジャックが来るのを家でせわしなく待ってるイニスのシーンです。とにかく落ち着きなく、絶えず貧乏揺すりをして、音がすれば窓の外を確認し、部屋を歩き回って、ビールをがぶがぶ飲み、タバコをすぱすぱ吸って、それでもなかなか来ないのでぐったりとソファに座り込んでグロッキー状態という・・・。このシーン、もう大好きです。しかしアン・リー監督はよくわかってらっしゃる。

もう一つ外せないのが、ジャックが奥さんのラリーン(アン・ハサウェイ)の両親を自宅に招いて感謝祭をともに祝うシーン。食事がはじまって、ジャックが子供にテレビを消させるんだけど、ラリーンの父親(グレアム・ベッケル)が「アメフトは男のスポーツだ!男らしく育てたいだろ!」とか言ってテレビを付けなおし、それをまたジャックが消しに行き、それを父親がまたしつこく付けに行って・・・・。という、子供のケンカみたいなくだらないシーンなんだけど、このグレアム・ベッケル親父はとにかくちょ~怖そうで、ほかにキアヌ・リーブス主演の「陽だまりのグラウンド」なんかにも出てるんだけど、凄みのある大男で絶対に怒らせたくないおっさんの一人というか、怖いよ~う。ちなみに映画でのその後の顛末は笑えます。

それと中盤、ヘルス・エンジェルスの残党みたいな二人組がイニスにボコられるシーンがあるんだけど、このシーンもお気にです。この二人は最初は威勢がいいんだけど、すぐに「今日は勘弁しろ!」とかって大人しくなって、だったら最初から騒ぐなというか。

しかし、イニスの妻役のミシェル・ウィリアムズはやっぱりここでも野暮ったくてウジウジしてて、あんまり好きじゃないなあ~。「ブルー・バレンタイン」でも「テイク・デイズ・ワルツ」でもそういう役が多いからでしょうか。しかし、そう思わせること自体、やはりすごい女優です。

カウボーイ、キャンプ、アウトドア、山登り、そしてここでもカーハート!なんかが好きな人にはとにかくおすすめの一本です。 音楽もとてもすばらしいです。

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映画「ブラックホーク・ダウン」

評価:★★★★★

僕は戦争映画も大好きなんですが、この映画はその最高峰と自負してます。これもマイ・ベストの一本(一体、マイベストが何本あるのか・・・)。好きすぎて「ブラックホーク・ダウン コレクターズ・ボックス」まで買っちゃいましたし、それに飽きたらずに原作本も買って読みました。

当時は映画館に見に行ったんですが、あまりにリアルな映像と一部残酷な描写に耐えきれず、途中で映画館を出た記憶があります。で、数年後、なんとなく続きが気になり、レンタルして恐る恐る見たんですが、そのおもしろさにもう仰天。それ以降、完全に虜になり、こちらも年一回は必ず見てます。

この映画は、クリントン政権下に、ソマリアの内戦に秘密裏に介入したアメリカ特殊部隊の秘密作戦を描いた映画なんですが、戦闘シーンのリアルさはもちろん、なんか細かいところがいちいち好きなんですよね。

例えば、作戦自体が一般兵には直前まで全く知らされなかったり、直前の作戦会議の内容も結構いいかげんで大ざっぱなことしか決まってなくて「こうやってビルの四隅にデルタ(フォース)を配置して、その間、ビルの正面にレンジャーがハンヴィーで待機して、あとは人質を乗せたら退却しろ!ただし、対象のビルはまだわからない!」とかって、じゃあ一体どうしろっての?っと突っ込みたくなるほどアバウトな作戦会議で笑えます。しかも、上官に質問するのは何となくタブーみたいな空気が流れていて、その会議に出ている将校とか軍曹たちも何も言わないんです。

今の時代すぐに「説明責任!」とか「上はちゃんと説明すべき!」とか当たり前に言いますが、この映画だと相当にアバウトな作戦会議なのに、誰も文句一ついえず、不安要素ばかりのまま作戦に参加せざるを得ない、という不条理の固まりみたいな映画です。

好きなシーンはたくさんあって、序盤に車両部隊を率いるマクナイト中佐(トム・サイズモア)が、現場で哨戒機から作戦を取り仕切るハレル中佐に「白昼に車両部隊だけで攻撃機もない。daylightだぜ!命取りだぜ!」とかって不満をぶちまけるんだけど、ハレル中佐はどこ吹く風で「人生は完全じゃないさ。」とやり返すのが好きですね。

あと、中盤にマシューズ中佐がリズミカルに「ブラックホーク・ダウンッ!ブラックホーク・ダウンッ!」や「プリティ・バッド!」とかって逐次戦況を伝えるシーンです。本来、とんでもない事態なので叫んだり感情をあらわにしがちですが、一切感情を排し、冷静かつ客観的に事実だけを伝えるといった落ち着いたスタンス。これが、地上部隊率いるマクナイト中佐と対照的でおもしろいです。マクナイト中佐は始終「味方は十字砲火を浴びてる!もっと早く指示を出せ!さっさと現場に誘導しやがれ~!」とかって怒鳴ってるんだけど、マシューズ中佐は「哨戒機から本部経由なので伝達が遅れる。だからスピードを落とせ。」とか、ひじょ~にリアルかつ冷酷に無理難題を伝えます。マクナイト中佐は「集中砲火を浴びてるのに落とせるわけね~だろ!」と絶叫!かつてここまで、作戦本部、哨戒機(現場本部)、地上部隊、航空部隊のやりとりを正確に捉えた戦争映画があったでしょうか。

そして終盤、ガリソン中将が右腕のクリッブス中佐に「パキスタンの山岳師団に応援を要請しろ。」と指示を出すと、クリッブス中佐がきっぱり「秘密作戦です!」と断るシーンが好きですね。劇中それまで上官に逆らう兵士はいなかったので、この中佐がどんな立ち位置なのか少し興味が出ました。まあ、その後すぐに従うのですが・・・。

といったように、見所満載の戦争映画で、アメリカ特殊部隊とかに興味ある人には楽しめると思います。あとは理不尽な組織に勤めてる人なんかは、この映画を見るとここまですさまじい理不尽さに度肝を抜かれるはずで、少しだけ楽になるかも。それに始終流れるお祈りみたいなソマリア民族音楽?もすばらしいです。

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ブラックホーク・ダウン〈上〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)

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ブラックホーク・ダウン〈下〉―アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録 (ハヤカワ文庫NF)

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映画「キリング・ゾーイ」

評価:★★★★☆

これまたとんでもない映画です。これもマイベストの一本。最近ようやくDVD化しました。要は悪党どもの金庫破りの話なんですが、すさまじい映画のくせにちょっとオシャレという変わった映画です。

エリック・ストルツが主演なんですが、もはやこの映画は完全にジャン=ユーグ・アーグランドのもので、エリック・ストルツは出ていたことすら覚えてません。ジャン=ユーグ・アーグランドはフランスの俳優で、たとえば「ベティ・ブルー」なんかにも出ていますが、ゲイリー・オルドマン以上の怪優ですね。この映画ではぶち切れまくって始終レッドゾーン入りまくりのクレイジーな悪役を演じてますが、この人は元々こういう人なのでしょうか。だとしたらインタビューとか絶対にしたくないし関わりたくないというか。

「レオン」のゲイリー・オルドマンとか、「グッドフェローズ」や「カジノ」のジョー・ペシ、「ノーカントリー」のハビエル・バルデムも強烈ですが、この映画のジャン=ユーグ・アーグランドと比べたらちょっと見劣りしますね。

エリック・ストルツがジャン=ユーグ・アーグランドと再会し、彼の住むアジトにいくんだけど、この場所がアパートの家の中のさらに屋根裏にあるという変な作りになっていて、みょ~な閉塞感を覚えます。ある意味この映画はほとんど密室劇なので、見ている間はなんとなくこの閉塞感がず~と続き、落ち着きません。そこにきて、アーグランドさんの強烈な個性で、脳みそが内面から浸食されるというか。

好きなシーンは、夜のパリを車で流しているとき、このアーグランドさんが突如「ランラ~、ミンドビヤァ~♪、ランラ~フィーロビヤァ~♪」とかって、わけのわからないフランス語?の歌を歌うシーン、完璧に狂ってますね。

それと、エリック・ストルツがいやがって何度も断っているのに、酒とかドラッグを強引にさんざん飲ませるというこの自己中さが好きです。ほんとにやなやつなんですが、妙に色気があって笑えます。

映画はジュリー・デルピーが出ていていい味を出してます。ジュリー・デルピーレオス・カラックスの「汚れた血」や、アメリカ映画では「ファングルフ」「恋人までの距離」シリーズなど、好きな映画がたくさんあります。最近は「パリ、恋人たちの二日間」や「ニューヨーク、恋人たちの二日間」などの監督もしていて非常に才能豊かな女優ですね。

まあ、単なる強盗ものやアクションものに飽きたら、このオシャレでクレイジーキチガイ映画をおすすめします。

ちなみに「ベティ・ブルー」は大好きな映画で音楽もすばらしく、3時間ある完全版が絶対おすすめです。

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映画「ブギーナイツ」

評価:★★★★★

大好きな映画「ブギーナイツ」です。天才ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督です。これもマイ・ベストの一本。はじめて見たとき、そのすばらしさに衝撃を受け、そして監督の若さに度肝を抜かれ、完全にノックアウトの放心状態でした。以降、年に一回は見てますし、会う人会う人に勧めてますが、まだ見てない人は、今すぐGEOにダッシュ

この映画は70年代のポルノ産業の趨勢を描いた映画とかって言われてるんだけど、まあ、それはそうなんだけど、それだけじゃなく、なんというか映画全般に人間愛があふれているというか、究極の人間賛歌なんですね、しかもダメ人間の。つまり、ポルノっていうのは一つの題材ではあるけど主題ではなく、本質はむしろ、友情だったり、色んな形の愛だったり、仲間との疑似家族だったり・・・。

舞台はカリフォルニア州ロサンゼルスのサバービア、サン・フェルナンドバレー(おそらくここはPTA監督の出身地なのかもしれません)。で、主人公のエディ(マーク・ウォルバーグ)は、フェラーリとかブルース・リーとか、セルピコアル・パチーノ)とかにあこがれる、そこら辺にいるごくふつ~のダメなやつなんだけど、ある才能があって、この業界でメキメキ頭角をあらわし、一躍スターの仲間入り!っというところで終わってればよかったんだけど、まあ、成功すると色んな怪しいやつらが集まってきて、お決まりのヤクにはまり、金に困って、売人の家に盗みに入ったり、友人や恩師とケンカ別れしたり、要するにみるみる落ちぶれていく、という何とも救いようのない話なんですね。が、最後まで見ると、僕の場合はなぜか勇気が出るというか。

好きなシーンはたくさんありますが、まずは序盤、エディの母親がぶちきれて、エディの部屋のポスターをビリビリに破き、さんざん罵倒しまくって、エディが泣きながら捨て台詞を吐いて出て行くシーン。ポスターを狂ったように破きまくる母親役がすばらしい。もう最高ですね。笑えます。

もう一つはエディが監督のジャック(バート・レイノルズ)と大ゲンカするシーンで、今度のエディの罵倒も、母親役に負けずすばらしいんです。が、何より、その後ろで心配そうに事の成りゆきを見ているスコティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)のオロオロしたたずまいがとにかく最高!なぜ、助演男優賞にノミネートされなかったのか。この演技ですっかりフィリップ・シーモア・ホフマンのファンになりました。すばらしい役者なので、亡くなったのが本当に残念でなりません。

この映画は、マーティン・スコセッシの「レイジング・ブル」とか「グッド・フェローズ」とかの名シーンを色々パクってて、知っている人が見るとニンマリします。物語の構造としては「ある人物がスターダムにのし上がり、ほどなく落ちぶれ、最終的には楽屋に置いてあるような大きな鏡台の前で、わけのわからない独り言を言って再起をはかる」というパターンですが、この構造大好きですね。なんで日本の監督はマネしないのか、本当に最高なのに。その意味で「レイジング・ブル」を見たあとにこの映画を見ると4倍楽しめます。それと、最後の方で流れるビーチ・ボーイズの「God only knows」のシーンは、精神的に辛いときや落ち込んでいる時ほど泣けるのではないでしょうか。が、泣いたあと、絶対に勇気が出ます。

なお、PTA監督は、ほかにも「ハード・エイト」「マグノリア」「パンチドランク・ラブ」などなど、すごい映画がたくさんあって大好きな監督なんですが、最近の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」とか「ザ・マスター」とか「インヒアレント・ヴァイス」とかはもう難しくて僕にはよくわかりません。楽しみにとってある「ファントム・スレッド」はこれから見る予定です、難しくなきゃいいけどな~。

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