GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

MENU

映画「ブギーナイツ」

評価:★★★★★

大好きな映画「ブギーナイツ」です。天才ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督です。これもマイ・ベストの一本。はじめて見たとき、そのすばらしさに衝撃を受け、そして監督の若さに度肝を抜かれ、完全にノックアウトの放心状態でした。以降、年に一回は見てますし、会う人会う人に勧めてますが、まだ見てない人は、今すぐGEOにダッシュ

この映画は70年代のポルノ産業の趨勢を描いた映画とかって言われてるんだけど、まあ、それはそうなんだけど、それだけじゃなく、なんというか映画全般に人間愛があふれているというか、究極の人間賛歌なんですね、しかもダメ人間の。つまり、ポルノっていうのは一つの題材ではあるけど主題ではなく、本質はむしろ、友情だったり、色んな形の愛だったり、仲間との疑似家族だったり・・・。

舞台はカリフォルニア州ロサンゼルスのサバービア、サン・フェルナンドバレー(おそらくここはPTA監督の出身地なのかもしれません)。で、主人公のエディ(マーク・ウォルバーグ)は、フェラーリとかブルース・リーとか、セルピコアル・パチーノ)とかにあこがれる、そこら辺にいるごくふつ~のダメなやつなんだけど、ある才能があって、この業界でメキメキ頭角をあらわし、一躍スターの仲間入り!っというところで終わってればよかったんだけど、まあ、成功すると色んな怪しいやつらが集まってきて、お決まりのヤクにはまり、金に困って、売人の家に盗みに入ったり、友人や恩師とケンカ別れしたり、要するにみるみる落ちぶれていく、という何とも救いようのない話なんですね。が、最後まで見ると、僕の場合はなぜか勇気が出るというか。

好きなシーンはたくさんありますが、まずは序盤、エディの母親がぶちきれて、エディの部屋のポスターをビリビリに破き、さんざん罵倒しまくって、エディが泣きながら捨て台詞を吐いて出て行くシーン。ポスターを狂ったように破きまくる母親役がすばらしい。もう最高ですね。笑えます。

もう一つはエディが監督のジャック(バート・レイノルズ)と大ゲンカするシーンで、今度のエディの罵倒も、母親役に負けずすばらしいんです。が、何より、その後ろで心配そうに事の成りゆきを見ているスコティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)のオロオロしたたずまいがとにかく最高!なぜ、助演男優賞にノミネートされなかったのか。この演技ですっかりフィリップ・シーモア・ホフマンのファンになりました。すばらしい役者なので、亡くなったのが本当に残念でなりません。

この映画は、マーティン・スコセッシの「レイジング・ブル」とか「グッド・フェローズ」とかの名シーンを色々パクってて、知っている人が見るとニンマリします。物語の構造としては「ある人物がスターダムにのし上がり、ほどなく落ちぶれ、最終的には楽屋に置いてあるような大きな鏡台の前で、わけのわからない独り言を言って再起をはかる」というパターンですが、この構造大好きですね。なんで日本の監督はマネしないのか、本当に最高なのに。その意味で「レイジング・ブル」を見たあとにこの映画を見ると4倍楽しめます。それと、最後の方で流れるビーチ・ボーイズの「God only knows」のシーンは、精神的に辛いときや落ち込んでいる時ほど泣けるのではないでしょうか。が、泣いたあと、絶対に勇気が出ます。

なお、PTA監督は、ほかにも「ハード・エイト」「マグノリア」「パンチドランク・ラブ」などなど、すごい映画がたくさんあって大好きな監督なんですが、最近の「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」とか「ザ・マスター」とか「インヒアレント・ヴァイス」とかはもう難しくて僕にはよくわかりません。楽しみにとってある「ファントム・スレッド」はこれから見る予定です、難しくなきゃいいけどな~。

ブギーナイツ [DVD]

ブギーナイツ [DVD]