GIGI日記~映画とか本とか~

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映画「2020年ゴールデンウィークに見た映画②」

さて、映画紹介、早速①に続けていきましょう。

①トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男(評価:★★★☆☆)(解説済み)
②ハウス・ジャック・ビルト(評価:★☆☆☆☆)(解説済み)
ヒトラー暗殺、13分の誤算(評価:★★★★☆)
ライ麦畑の反逆児(評価:★★★☆☆)
⑤天気の子(評価:★★★★★)
シングルマン(評価:★★☆☆☆)

ボク的にはかなり面白かった第二次大戦ナチスモノの一つ「③ヒトラー暗殺、13分の誤算」です。この映画って、そもそもドイツ映画なのでまずキャストを誰一人として知りません。が、それがかえって作品にリアリティを与え、ものすごくいい映画に仕上がってます。物語としては、1939年に起きたヒトラー暗殺未遂事件が描かれていて、その実行犯であったオルグ・エルザーという家具職人に焦点が当てられています。

この家具職人というのがポイントで、えっと、先のブログで書いた「トランボ」とも共通するのですが、実は彼もドイツ共産党員に近い立場にいたってことなんです。要は彼は厳密には共産党員ではなく、トランボと同じで、労働者の権利とか資本家による搾取、そしてなにより、言論弾圧や暴力を背景とした政変に危機感を持っていて、自分の信じる自由のためにヒトラーを暗殺しようと決心するわけですね。しかし、仕掛けた爆弾が爆発するのがたった13分遅かったために、結局はヒトラーを仕留めることができなかったんですね。ちなみにこの事実は冒頭5分で説明されるので、ネタバレではありませんのであしからず。

で、このゲオルグ・エルザー役を、クリスティアン・フリーデルさんという役者が演じてるんですが、結構濃いめのルックスでちょうど作家の町田康さんにソックリという。で、そのくせ女子には結構モテて、色々いい目を見てるんです。ちょっとうらやましくなってきますが、さてさて、見所はそこではなくて、このゲオルグといわゆる不倫関係に陥る人妻エルザちゃんなんですね(主役のおっさんがエルザーという名前なので紛らわしいですが・・)。しかし、このエルザ役をカタリーナ・シュットラーちゃんというドイツ人の女優さんが演じてますが、彼女がもうものすご~くいいんです。

「いい」というのは芯の強そうな美人さんで、いつもキリッとしてて、そして意外にも色っぽくて、見ててすごくかっこいいんですよね。この女優さんって僕的にはもろにツボなんですが、実は以前に見た「ジェネレーション・ウォー」というTV映画?にも出てて、その強烈な個性を発揮していたのでよく覚えてました。

しかし、こんな美人のエルザちゃんなんですが、その旦那は人前でエルザの胸を揉んだり、おしりを撫で回したりと、ほんとに最低のクソ野郎なんですね。早くこいつをゲオルグにぶん殴ってほしいんですが、そうそう思うようには物語は進まず、むしろ悲惨な方向に展開していくんです。

ともあれ、この映画ってナチの拷問とか、色々と残虐なすさまじいシーンもいくつかあるんですが、愛し合っていたゲオルグとエルザの行く末とか、ゲオルグがずっと主張し続けた自由の意味とか、これまた色々と考えさせられました。なぜって、今の日本って誰でも好きな子と(相手もそうであれば)結婚できるし、自由だし、(努力次第で)なりたいものになれるし、言論弾圧もないし、それがどんなに幸せなことなのかと。

しかし、そんな悲劇を生んだのも、そしてナチスが台頭したのも、ある意味民衆が彼らを熱烈に支持したからなんです。つまりは、ファシズムは民主主義から生まれた産物であって、その時代背景や社会的境遇によっていくらでも起こりうるし、そしてその際に効果的に利用されるのが言論弾圧なわけでして。なので、民衆とマスコミは、常に政治や政府を監視していなければいけないんですが、日本ではそういう概念が希薄ですよね。そしてそれを衆愚政治といいますが、今のすぐに一方的に決めつけるマスコミの風潮やホリエモンさんへの批判なんかも、見ていて空恐ろしい気がします。

で、次に「ライ麦畑の反逆児」なんですが、僕の大好きな「キャッチャー・イン・ザライ(ライ麦畑で捕まえて)」の作者である、J・D・サリンジャーさんの自伝的映画なんです。彼がいかにして「ライ麦」を書き上げたのか、そしてなぜ文壇から姿を消し、半隠居生活に身を転じたのか、そこいらの謎がこの映画を見るだけでものすごくよく理解できます。が、がです。なんとなくイマイチ感が否めないんですよね~。

そしてその理由は、やはりこのサリンジャー役の役者さんがイケメン過ぎるからなんでしょうか。で、誰が演じたのかというと、この後に見た映画シングルマンに出てきたイケメン学生役のニコラス・ホイト君じゃないですか。これまた、なんという偶然でしょうか。そもそも、僕の持論として「偉大な作家はすべからくブサイクである」という不文律があって、その法則に真っ向から逆らったことが、この映画の敗因ではないでしょうか。

しかし、まあそんな映画でも、笑える部分が結構あって、例えばサリンジャーが「ライ麦」を世に発表してそれが爆発的にヒットすると、彼の家の周りにその勘違いファンが待ち伏せるようになっていくんです。しかもしっかりとホールデン・コールフィールドくんのトレードマークである赤いハンチングを被って。

これってものすごく怖いですよね。究極の自己愛にまみれた社会不適格者が、作中のホールデンと自分を同一視して、しかもそれを承認されたいがためにわざわざ作者であるサリンジャーに会いに行って「どうしてこんなに僕のことを知ってるの?」などと叫んで追いかけてくるわけですから。これはサリンジャーじゃなくても同情したくなりますよ。

それともう一つは、最初にサリンジャーの才能に気づいた文芸雑誌「ストーリー」の創刊者かつ編集長であるホイット・バーネットさん。この人をケビン・スペイシーが見事に演じてるんですが、物語の終盤、サリンジャーに向かって言うんです。「「フラニーとゾーイ」はちょっと宗教的すぎるので、僕には向かないな~(好きじゃないな~)」って。これって核心を突いていて、僕がなぜ、なかなか「フラニーとゾーイ」「大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章」などの作品を一向に読み終えられないのか、その秘密が少しわかった気がしました。

僕のシンプルな解釈では、おそらくこれらの作品って(まだ読んでませんが)内に閉じてしまっているのかもしれません。別に悲惨な小説という意味でも独りよがりな小説という意味でもなく、なんとなく世界を否定しているというか。別に世界を否定してもいんじゃね?とも思いますが、スペックが低くてそれ以上うまく説明できません。

で、一方で「ライ麦」の方は色々と言われてますが、どっちかというとまだ世界を信じている部分があって、希望もきちんと示されていた(外に開かれていた)わけです。そもそも僕はこのライ麦を昔から青春ジュブナイル小説だと思ってましたし、やっぱり僕はそういう小説が好きなので・・。

つまり、なんとなくですが、サリンジャーがこの編集長のバーネットさんとの付き合いをずっと続けていれば、もっと色んな作品を量産していたんだろうな~って少し残念な気持ちになりましたね。あっ2,000字をとうに超えたのでこの辺にしましょう。

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