評価:★★★★☆
さてさて、鬼才クリストファー・ノーラン監督の最新作、「テネット(TENET)」をようやく見ることができました。で、結論からして、もうわけがわからないのに一体なんでこんなにおもしろいのか?ってところでしょうか。
このクリストファー・ノーラン監督って、天才すぎてもう開いた口がふさがりませ~ん。確かに冒頭から60分程度は、もうクソすぎてダラダラしてて、途中で見るのをやめようかとすら思いましたが、いやいやしかしどうですか物語後半の急展開は。先に書いたように開いた口がふさがらないままにして物語は終局を迎えました。
が、この興奮をとにかく誰かに伝えたい、僕はそう思ってこの駄文を書き綴っています。まずこのクリストファー・ノーランアニキですが、彼の作品に外れはほぼありません。初期のガイ・ピアースの「メメント」にはじまりディカプリオの「インセプション」、マシュー・マコノヒーの「インターステラー」とか「ダンケルク」とか。あっ、そういえば究極のクソ映画「インソムニア」もありましたが。
で、このテネットという物語ですが、まあ一言であらすじを語るとするならば、余命幾ばくもない武器商人のおっさんが、プルトニウムを盗み出して世界を破滅させようとするのを、CIA的な立ち位置のゴリラ顔の黒人が防ごうとするお話なんですね。
って、これまでにもはや1000回は使い回された永遠の定番テーマのお約束なわけですが、しかし、これをクリストファー・ノーランが手がけると、もはやこれまでに誰も絶対に見たことのない壮大かつ哲学的な物語に大化けするわけですよ。その手腕ときたらもうノーベル賞ものの快挙。とてもアカデミー賞なんざに収まるレベルじゃないですね。
で一体何がすごいのかというと、ノーラン監督の真骨頂である時間軸や次元空間や併行世界なんかの多次元立方体的世界観を取り入れつつも、そこには物理学や量子力学的な原理原則に裏打ちされた理論が展開されているからなんですね。ってホントかよ!
まあ、ノーラン監督の映画って、時間をさかのぼったり、映画のフィルムが逆回転であったり、ある惑星での5分間が地球時間では数十年に及んでいたりと、とにかく現実では一方向にすぎない時間の概念を覆す作品が多い監督ではあるんですが、そういう我々の想像もつかない概念を映像化するのが抜群にうまいので、これはもう未知なる映像体験でものすご~くクセになるという。まるで僕の好きなルートビアとかドクターペッパーのような中毒性の高い映画を撮る監督なんですね。
と一気に興奮冷めやらぬ状態で書いてきましたが、ボクのような物理とか数学音痴の人間でもちゃんと楽しめますし、大筋はそんな難しい話でもありません。が、物語の厚みがハンパないし、インセプションみたいに多層構造のお話なので、その意味を読み解こうとしてしまうと、ドツボにはまって抜け出せないかもしれません。
端的にいうと、例えばデイビット・リンチ監督の作品って理論的な解釈をはなっから拒絶していて、まるで夢を見てるような脈絡のない話が多いわけですが、ノーラン作品の場合は、当初からきちんと理論的な定義付けがなされているというのが新しい。
これを見てボクはまた「インターステラー」とか「インセプション」を無性に見直したくなりましたね。
まあとにかく、相当に変わった映画ではありますが、既成概念に囚われまくってる前例主義の公務員のおっさんなんかには絶対にお勧めの1本です。あなたの仕事のやり方を見直す機会になるかもしれません。