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映画「JFK」

評価:★★★★★

大好きな映画、オリバー・ストーン監督の大統領モノ第一弾「JFK」です。今でも年に1回は必ず見ますね。とんでもなくよくできた映画です。

時は1963年11月22日、第35代アメリカ大統領ジョン・フィッツジェラルドケネディ(JFK)大統領が、テキサス州ダラスでパレード中にライフルで狙撃され、命を落としてしまうわけです。アメリカの大統領史上、ライフルで狙撃されて殺された大統領はこのケネディ大統領をおいてほかにおりません(アメリカ史上、暗殺された大統領は、エイブラハム・リンカーンジェームズ・ガーフィールドウィリアム・マッキンリー、そしてJFKの4人です)。

ケネディ暗殺後の顛末は非常にお粗末で、事件発生から2時間でリー・ハーヴェイ・オズワルドという共産主義者が逮捕されます。がその翌日、このオズワルトも護送中にジャック・ルビーというマフィア崩れの男に射殺されてしまいます。

で、オズワルド自身はずっと「ぬれぎぬだ~!おれはやってね~ぞコラッ!」と泣きながら訴えていたわけですが、結局オズワルド青年の犯行ということで一件落着、はい、よかったよかった、ちゃんちゃん。

・・・・といけばよかったんですが、実はこの暗殺はアメリカ軍上層部のほか、政府高官、CIA、FBI、そして地元警察やマフィアまでが関わって計画されたクーデターであったということが数々の証拠から明らかになりつつあります。というより、今では多くのアメリカ人がオズワルド単独犯説を信じておりません。ただし、この事件に関する文書は国家機密として2039年まで封印されてしまったので、そのときまで真実はわかりませんが。

しかし当時のアメリカの状況を考えると、ケネディはやりたい放題の軍産複合体に真っ向から立ち向かい、政府高官のクビも次々に切っていったので、あらゆる支配者層から大変な怒りを買っていたことは言うまでもありません。だってこの時のケネディは40代前半ですからね。弟のボビーに至っては30代ですよ。支配者層(ディープ・ステイト)達からすれば「あのアイリッシュの若造が、一体誰が大統領にしてやったと思ってるんだ!おい、あの兄弟をほっといていいのか?このままだと国を乗っ取られるぞ!」などと怒り狂ったんでしょう。そしてその絶大な権力をもって、パレードのルートを変えたり、シークレット・サービスを無力化したりと、暗殺するための障壁を取り除いていったわけです。

で、この映画のモデルは当時ルイジアナ州ニューオリンズで地方検事を務めていたジム・ギャリソンさんの執筆したJFKケネディ暗殺犯を追え」なので、タイトルこそ「JFK」ですが、主役はこのジム・ギャリソンさん本人なんですね。この本に感銘を受けたオリバー・ストーン監督が映画化権を買って数々の苦難を乗り越えどうにか完成させたのが本作「JFK」なんです。そのあたりは、昨日の1月1日からヤフーニュース(「CINEMORA」という媒体からの転載)にモルモット吉田さんのすばらしい記事が掲載されていますので、興味のある方は是非そちらを(1月3日までの前編・中編・後編の掲載)。

ではなぜ、ルイジアナ州ニューオリンズの地方検事であるジム・ギャリソンさんがテキサス州ダラスで起きたケネディ暗殺事件に首を突っ込むことになったのか?

それは、このオズワルドが事件前年の1962年の夏までニューオリンズに住んでいたことや、このオズワルドと関係の疑われる怪しい奴ら、つまり、パイロットのデイヴィッド・フェリーやインターナショナル・トレードマートの理事で実業家のクレイ・ショーらが管轄であるニューオリンズに住んでいたからなんですね。

そしてジム・ギャリソンさんは、この陰謀説(クーデター)を立証する手段として、上流階級の紳士面する小悪党クレイ・ショーを逮捕し裁判にかけて有罪にする方法(彼とCIAの関係を裏付けること)を選ぶわけです。彼を有罪にすれば、オズワルド単独犯説を崩すことができ、かつ暗殺へのCIA等(政府機関)の関与を立証することができるからです。いわばクレイ・ショー裁判こそ、この巨大な陰謀を暴くための橋頭堡となりうるものだったわけですね。

スタッフ達の綿密な調査でジリジリとこのクレイ・ショーを追い込んでいくんですが、一方で様々な妨害に合って、あと一歩のところまできて、結局は勝利までには至らないんです。

しかしボクはこのギャリソンさんは本当に偉大なアメリカ人だと思います。時に民衆に、そして権力に、はては自分の奥さんにまで見放され、様々な妨害や嫌がらせを受けながらも、民主主義を守るために、アメリカ合衆国憲法を守るために戦ってるわけですよ。今からおよそ60年も前に。これって誰かに似てませんか?

そうです、いま大統領選のありとあらゆる不正や圧力と戦っているトランプ大統領その人ですよ。ケネディ大統領は民主党の大統領で、当時は共和党ニクソンを破って大統領の座につきました。しかし、当時、ケネディ大統領がやったことあるいはやろうとしていたことは、実は今のトランプ大統領と同じようなことなんですね。

①ピッグス湾侵攻作戦の中止
②CIAの権限の弱体化
ベトナムからの米軍の撤退
④人種差別の撤廃
共産主義の否定

確かに、④の人種差別の撤廃については異論があるかもしれませんが、トランプ大統領は人種差別主義者ではありません。そうではなく移民政策を否定しているに過ぎず、例えばドイツは無条件の移民受け入れで国内に様々な問題が発生しているわけです。それをトランプさんもよくわかってて、移民政策には慎重な姿勢をとってるんです。現に今回の選挙で、黒人やヒスパニックの支持者が前回の選挙よりも格段に増えたわけですからね。

話を映画「JFK」に戻しますが、とにかくその音楽や編集が巧みで、3時間を超える大作ですが、全く飽きません。それに俳優陣が素晴らしい。捨て犬みたいな役どころを見事に演じたジャック・レモンホモセクシャルの優男をとんでもない演技力で表現したケビン・ベーコン(ウィリー・オキーフ役)、ダメで陰鬱なルーザー役のゲイリー・オルドマン(オズワルド役)、毎回大騒ぎでテンション上がりまくりの怪演男ジョー・ペシ(デイヴィッド・フェリー役)、そして色気のありまくりの強烈な個性を醸し出したトミー・リー・ジョーンズおやじ(クレイ・ショー役)、ディープ・スロートで自分では何もしないドナルド・サザーランドおやじ(ミスターX役)、そしてそして(当時は)アメリカ一甘いマスクで渋いしゃがれたボイスのイケ面ケビン・コスナーさん(ジム・ギャリソン役)などなど、もはや名優・怪優達の歴史に残るオールスター映画かと。あと、ジム・ギャリソンさん自身が悪名高いウォーレン報告書のアール・ウォーレン最高裁長官役でカメオ出演しているのも楽しいです。

特にボクは、ギャリソンの前でタバコを吸いながらケビン・ベーコン「アカのケネディが死んだ日、この日こそがこの国の祝日なんだ!(The day that communist son-of-a-bitch died was a great day!great day for this country」とまくし立てるシーンはこの映画の一番の見所かと。もう大好きなシーンです。

しかし、劇中、全く奥さんに理解されないジム・ギャリソンさんが本当にかわいそうでなりません。ちなみに奥さん役は名女優のシシー・スペイシクさんが演じてます。

ただ、本来一市民としては、そんなとんでもない陰謀なんて当然信じたくないので、楽な方に流れてしまって忘れてしまった方がむしろ好都合だったんでしょう。だって大統領が誰に暗殺されようと、なにも日々の生活が激変するわけでなく、むしろ毎日の生活の方がずっと大事なわけですから。

ただ、FBIや検察などの政府中枢で仕事をしてきたギャリソンさんにとって、この国家ぐるみの陰謀は、合衆国憲法の下に誇りを持って生きてきた自分自身を否定しかねない事態だったに違いありません。なので、絶対に容認するわけにはいかなかったわけです。

そして今、同じ様なことがアメリカで起きてますが、4日後の1月6日はこのクレイ・ショー裁判と同じような結末になるのでしょうか。それともおよそ60年を経た現在、アメリカは今度こそアメリカの良心を取り戻すことができるのでしょうか。

ボク的には1月6日の上下両院合同会議(ジョイント・セッション)で、ペンス大統領はじめ共和党の心ある議員達が Great day を成し遂げてくれることを切に願ってます。

余談ですが、この「JFK」が好きな人は、オリバー・ストーン監督の他2本の大統領モノであるニクソン「ブッシュ」や、以下に示すJFK関連書籍も痛烈にお勧めです。

ニクソン [DVD]

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  • 発売日: 2004/09/15
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ブッシュ [DVD]

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JFK―ケネディ暗殺犯を追え (ハヤカワ文庫NF)
 
決定版二〇三九年の真実 (集英社文庫)

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  • 作者:落合 信彦
  • 発売日: 1999/05/20
  • メディア: 文庫