GIGI日記~映画とか本とか~

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映画「ワルシャワ蜂起もの」

①バトル・オブ・ワルシャワ 名もなき英雄(評価:★★★★☆)
リベリオン ワルシャワ大攻防戦(評価:★★☆☆☆)
③地獄の中の戦場−ワルシャワ蜂起1944−(評価:★★★☆☆)

最近、第二次大戦モノナチスモノ、そしてその中でも特にレジスタンスやパルチザンモノにハマっていて、隙あらば見てます。そもそもその類いの映画って実はもう掃いて捨てるほどあって、中にはほとんど日の目を見ていない良作が結構あるんですね。

ちなみにレジスタンス」というのは、枢軸軍(要はドイツです)に占領された諸国で行われた反枢軸抵抗運動の総称で、特にフランスの抵抗運動が典型とされ、フランス語の「抵抗」を示す言葉が一般化したものです。どちらかというと市民を中心とした民兵組織のような比較的小規模な組織が多いのが特徴です。で一方のパルチザンというのは、こちらも語源はフランス語のようで、レジスタンスと比べるとより組織化が進み、非正規軍といってもよいほどの規模をもった抵抗組織集団という意味のようですね。要は自然発生的で小規模な反乱組織がレジスタンス、より洗練され組織化された集団がパルチザンといったところでしょうか。

で、ボクが今回注目したのが、大戦末期の1944年にポーランドで起きた市民による武装蜂起、つまりワルシャワ蜂起」という出来事です。第二次大戦中、ドイツに占領されたポーランドは、ユダヤ人のゲットーへの封じ込めや弾圧ばかりではなく、そこに暮らすポーランド人にとってもとんでもなく屈辱的な生活を強いられていたわけです。そもそもポーランドという国は、西はドイツに、そして東はソ連に挟まれていて、元々、どちらに占領されてもおかしくないような、地政学的にもきわめて不安定な位置にあるわけです。で、ドイツに速攻で占領されて第二次世界大戦が始まったわけですが、それ以降は市内のゲットーのほか、田舎にアウシュビッツトレブリンカなどの収容所群がどんどん作られて、ドイツに好き放題国土を蹂躙されたわけですよ。

何もドイツのナチス全盛期には、ユダヤ人ばかりが迫害を受けたわけではありません。元々ポーランドという国は、農民が多く貧しい国でしたので(今でもです)、ドイツ人とかナチスからも当然下等民族のような扱いを受けていたわけです。白昼いきなりSS(ナチス親衛隊)が市内に乗り込んできて、そこいらにいたポーランド人を一人残らずとっ捕まえては道ばたに一列に並ばせ、その列にSSの隊員が20人ぐらい平行に並んで、あとはズダダダダダダダダ・・・・!!!とかって速攻で全員銃殺されてしまったりと、残虐非道な虫けらみたいな扱いを受けていたわけです。

まあそういう状況なので、当時は特に若者の中でものすごい怒り憎しみ恨みつらみが渦巻いていて、若者ばかりか女の子やちいさな子供までが、機会さえあればナチスをぶっ殺してやるっ!!!と息巻いてるわけです。まあ、状況が状況なので当たり前ですが。

で、その一つの転機となったのが、スターリングラードの攻防戦で、最初は押していたドイツ軍ですが、徐々にソ連軍に巻き返され(まあその辺はまた別の映画で紹介しますが)、結局は大敗北を期し、撤退を余儀なくされるわけです。で、大戦末期になり、連合国やソ連の包囲網がドイツに徐々に迫ってくるんですね。ただ、当時のソ連赤軍、つまりコミュニストの集団ですから、ポーランドにとっても自国がアカ化されるかもしれないので、当然そっちもまっぴらごめんなわけで、ある意味疑心暗鬼なわけですが、とはいえ敵の敵は味方」理論で、共産主義だろうがスターリンだろうがソ連ポーランドに侵攻してくるのに合わせて、一緒に武装蜂起して、クソむかつくドイツのナチスのクソどもを一緒に徹底的にひたすら完膚なきまでにぶっ殺してしまえっっっ!!!!というのが1944年のワルシャワ蜂起」なんです。

そこで、その流れや空気感を忠実に押さえた映画を3本(厳密には2本)見ましたので以降で簡単に紹介します。けど、これらの映画って、アルバトロスとかアメイジングとかよくわからない会社の販売ですので、もう誇大広告嘘のタイトル満載なので、その辺は十分注意しないとひどい目に遭いますよ。いやぁ~しかし、前置きがクソ長いですね~。

まず「①バトル・オブ・ワルシャワですが、もうこれ、ものすごくよかったです。要はワルシャワ蜂起というのは、何もワルシャワレジスタンスが勝手に決めて起こしたものではなくて、その決定権はロンドンに亡命中のポーランド政府が握っていたわけです。しかし、今のようにネット等が整備されていない時代ですので、それらの情報はロンドンからポーランドワルシャワまで、やはり人間が極秘裏に政府の密使となって伝える必要があるわけですね。その密使がポーランドの将校、ヤン・ノヴァク中尉で、その情報伝達やワルシャワ蜂起のきっかけをつくった実在の人物なんです。

まあ、どこまで史実に乗っ取っているのかわかりませんが、このヤン・ノヴァク中尉の行動を通して、ワルシャワ蜂起が起きるまさにその瞬間までを描いてます。序盤に出てくる女優もきれいだし、中盤からヤン中尉の世話役のような立場の女の子もキリっとしていてかわいいしで、見ていて飽きません。で、このヤン・ノヴァク中尉なんですが、実際には意外にダメなやつで、パラシュート降下に失敗して腕を折ったり、自転車に乗れなかったり、悲惨な出来事ばかりの中で、多少は笑えるのがせめてもの救いでしょうか。

あと、特筆すべきはこのDVDのジャケット!もう大嘘もいいとこです。まず、この銃を持って帽子をかぶった強面のおっさんというかアニキは一切出てきません。あと、女性版エージェントのようなスタイリッシュな女の子トゥームレイダーとかイーオン・フラックスとかアンダーワールドみたいな・・・)も一切出てきません。一体この人たちって誰なんでしょうかね??それにバトル・オブ・ワルシャワなどと書いてありますが、バトルはほとんどありません。しかしこれって過大広告にならないんでしょうか。ちょっとこの販売元のアメイジングという会社が心配になります。もしかすると忙しくてスタッフが別の映画とジャケットをまちがってしまったのかもしれません。

で、次に見るべきは「②リベリオン ワルシャワ大攻防戦」なんですが、じゃあ、ワルシャワ蜂起が起こった後は一体どうなったの?というその後の戦いの様子が描かれています。しかし、この映画って、ワルシャワ蜂起の際のポーランド人の戦いを描いているんですが、まあヒロインも色々と出てくるんですが、なんと一番きれいなのが主人公のお母さん!という体たらくなんです。しかも、映画の要所要所でストップモーションというかスローモーションの映像がカットインして、それと同時に軽快な音楽が流れて、これはいったい何を狙っての演出だったんでしょうか。物語があまりにも悲惨すぎたからでしょうか。演出家がビデオクリップとかCMのプロデューサーだったのかもしれません。

なんか、蜂起する若者たちも最初は仲間内でヘラヘラ笑っててピクニック気分で、なんとなく緊張感のなさが目立ちました。そういう奴らが、ナチスの猛反撃を食らって機関銃で皆殺しにされていって、なんとなく「そりゃそうでしょ・・」という複雑な気持ちになりました。つまらないとは言いませんが、まあ、そこまでおすすめできないのがこの映画です。

で、最後に「③地獄の中の戦場−ワルシャワ蜂起1944−」なんですが、これはワルシャワ蜂起のその後のさらなるポーランドの悲劇が描かれています。これって、まず邦題が間違っていて、劇中は1944年のワルシャワ蜂起はもとより、第二次世界大戦もとっくに終わっていて、ソ連の侵攻を受けたポーランドが、その政府中枢をソ連に乗っ取られ、それに反発したポーランドの地下組織(の一兵士)の物語であって、間違ってもワルシャワ蜂起とはなんの関係ありません。この邦題つけたスタッフ、おそらく映画みてませんね。

劇中は、見てると胸くそ悪くなること請け合いのひどい物語なんですが、要はソ連に反発して地下に潜った兵士もいれば、ソ連に媚びを売って自国民を取り締まるような立場につくポーランド兵士も出てくるわけですよ。まあ、ある意味、人間なんてその程度のものなのかもしれません。この映画では、そういうクズどもと最後まで果敢に戦ったフランチシェクという兵士の生き様を描いておりますが、逃亡の途中で恋に落ち、その女性との間に子供をもうけたり、そしてその子供とはほとんど会うことができなかったりと、まあ壮絶かつ激烈なストーリーに画面を直視できないほどでした。いや~な話ですが、このフランチシェクさんは、1990年代になってからポーランド政府から表彰を受け、英雄として語り継がれています。

以上、ワルシャワ蜂起モノを時系列で解説しましたが、現在相当数のナチスもの、レジスタンスものが集まりつつありますので、しばらくはその類いの映画紹介が続きそうです。

しかしこういう映画ばかり見ていると、とにかく自由で(マスクや消毒液以外は)何でも手に入る今の時代って本当にすばらしいですよ。毎日がつまらないという皆さんは、まずはこの3本を見て、そのつまらない毎日を勝ち取るために命をかけて戦った人々がいる、ということに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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