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アニメ映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」

評価:★★★☆☆

今週は出張の隙間時間を利用して「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の序、破、Qの3作を見ました。で、どうだったのかというと、確かにおもしろいし映像もかっこいいのでそれなりには楽しめたんですが、なんというか、そこまでは心に響きませんでした。

いや確かにものすごいアニメーションではあるんです。映像とかも随所にCGが使われたり、音楽も凝ってるし、新たな設定もふんだんに出てきて、もう情報量が多すぎて、さっぱり意味がわからないけど、それでもそれなりには楽しめました。

そもそもこのエヴァンゲリオンシリーズは、僕が学生の時にテレビで放映されたのが始まりで、その時のテレビシリーズが全26話放映され、そのあまりにも唐突かつ身勝手な終わり方にファンの怒りが殺到し、あらためて映画版(旧劇場版)の「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生(DEATH & REBIRTH)」と「Air/まごころを、君に」の2本が作られたわけです。

そこで僕にとってのエヴァは終了していたわけですが、最近、庵野監督の記事を目にしたのがきっかけで、今回、新劇場版を見てみることにしたんです。で、見てて思い出したんですが、この1・2作目の「序」と「破」はすでにどこかで見てましたですハイ。けれどそれ以降、3作目の「Q」をスルーしていたのは、あまり印象に残っていなかったのと、続きもさほど気にならなかったからなのかもしれません。

そもそも、エヴァンゲリオンってその謎が話題になりがちで、大ブームの社会現象にもなったわけですが、僕的にはこの「謎」って結構どうでもよくて、女の子がかわいくて映像がきれいで、メカやロボットがたくさん出てきて、部屋の描写とかが多ければそれでいんじゃね?程度のノリでした。僕は当然「綾波」のファンで、林原めぐみさんのアニメ史に残る「美声」や「しゃべり方」、映像上の綾波の青い髪、ショートヘア、赤い目、白い肌などなど、もう思い切りドツボでしたね。それにミサトのマンションとか綾波団地の部屋とか、とにかく部屋の描写が部屋フェチの僕にはもうたまらなくツボでした。

で、庵野監督のスキゾ・パラノエヴァンゲリオンという本も買ったし、つられて庵野監督の前作「不思議の海のナディア」を全話見たりもしました。まあ当時はものすごい社会現象になって、経済効果も半端なくて、エヴァがアニメ界に与えたインパクトはとんでもなかったはずです。まさに紀元前(B.C)、紀元後(A.C)と同様、エヴァ前、エヴァ後でアニメーションの文法そのものが変わってしまいました。

庵野監督はもうアニメ界のキリストですよ。しかし、最近の庵野監督の記事を読んで驚愕したんですが、当時のエヴァを作った会社、つまりはガイナックスGAINAX)は、もうエヴァとはほとんど接点のない全く別の会社になってしまっていたんですね。ガイナックスは当時、名作「王位宇宙軍 オネアミスの翼」をつくるために設立された会社だったわけですが、そんなガイナックスエヴァがあれだけヒットしたことで、じゃんじゃんお金が入ってきて、特に経営陣がおかしくなってしまったようなんです。それを庵野監督は必死に軌道修正しようと私財を投じてがんばったようなんですが、どうにもならなくなって、イヤイヤ引き受けた役員も降りて、「株式会社カラー」を設立するに至ったということだったんですね。なので、この新劇場版はガイナックスではなくカラーの作品なわけです。

僕はそういう庵野監督の苦労や悲劇を正月の特集記事を読むまでは全く知りませんでした。庵野監督の奥さんのモヨコさんが書いた「監督不行届」を読むと、庵野監督は今も昔も好きなアニメをつくって、好きなヒーロー物のおもちゃに囲まれていればそれで幸せな方のようなんですね。かねてから「クリエーターは経営者になるべきではない」というのが心情だったようですし。

が、そんな人がそういう会社の経営上の内紛や陰謀に巻き込まれてしまって本当につらかったと思います。多分そういうイザコザさえなければ、新劇場版の4作目の「シン・エヴァンゲリオン劇場版:II」もとっくに完成していたに違いありません。

僕は新劇場版よりも、この「エヴァのヒットに端を発するガイナックスのバタバタ劇があって、当時の庵野監督の学生時代からの友人ら(の一部)がおかしくなったりバラバラになってしまった」という事の方が衝撃的でしたね。アニメをつくっているアニメーターが金儲けなんかより自分の携わる作品に魂を注いでいるわけですから、経営者が金儲けに走ったらダメじゃないですか。そんなことは多分みんなわかっていたんでしょうが、実際にとんでもないお金が入ってくると、色んな輩や取り巻きや企業がウジャウジャ集まってくるしで、むしろ正気を保つ方が難しいのかもしれませんが。

さてさて、新劇場版ですが、従来の謎はもちろん、新たな謎が色々とちりばめられているし、またどうしてもテレビ版をある程度は理解している事が前提となっているので、これを初めて見るような子ども達には全く理解できないのではないでしょうか。この新劇場版はそれなりに興行収入を上げたようですが、恐らく僕の推測からすると、観に行ったのは僕のような当時エヴァにはまった人が大部分のようにさえ感じます。

また僕にとっては、こういう新たな謎ってある意味どうでもよくて、もう少し人物描写や世界の説明に時間を掛けてほしかったんです。だってあまりにもわけがわからなくてついて行けないので。・・・もうエヴァ用語辞典を買うしかないというレベルです(泣)。ただ、恐らく庵野監督もあまり謎とかはどうでもいんじゃね?ぐらいに感じてると思うわけですよ僕は。究極は「破壊尽くされた都市の中をゆっくりエヴァ巨神兵)がノシノシ肩をゆっくり上下させながら歩くシーンを撮りたいだけ」なんじゃないでしょうか。

ちなみに僕としては、綾波よりもニャン!とかメンゴ!とか繰り返すおふざけキャラの真希波・マリ・イラストリアスちゃんの方が魅力的でした。これってある意味、僕が大人になったということなんでしょうかね。いずれにせよ、庵野監督、そしてカラーの皆さん、4作目の制作、がんばってくださいね。 

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 1997/03
  • メディア: 単行本
 
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