GIGI日記~映画とか本とか~

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映画「LION /ライオン 25年目のただいま」

評価:★★★★★

これ、僕は全く期待していなかったんですが、年末年始に見た映画の最高傑作でした。休みの最後に日に「蜘蛛の巣を払う女」とこの「LION」を見たことで、とても充実した新鮮な気持ちで無事仕事に復帰することができました。

ちなみに僕は、あの休み明け直後の世の中のなんとなくギスギスした雰囲気が嫌で、必ず年末年始もゴールデンウィークも「プラス1」して休む主義なんですね。なんか、駅とか電車の空気が負のエネルギーに満ち満ちているじゃないですか。多分8割方の人間が「行きたくねぇ~」とかって思ってるような気がしますが、案外逆に休み疲れしてしまって「よかった~!やっと休みから解放されたぜファックっ!」とかいう人も結構いるのかもしれません。

さてさて、LIONなんですが、これは驚くべきことに実話モノなんです。で、「LION」って何?という意味不明のタイトルも、ちゃんとオチがついていてきちんと物語を締めくくってるのでご心配には及びません。

で、簡単にあらすじを紹介すると、インドの片田舎で生まれた5歳の子どもが、ひょんなことから家族と生き別れになり、すったもんだがあって運よくオーストラリアの夫妻に引き取られ、その後はずっと幸せに暮らしましたとさ、よかったよかった、という話ではないんです。確かに引き取られた後、あっという間に20年の歳月が流れるんですが、要は思うわけですよ、「まだ兄貴や母親がオレを探してるんじゃないのか?オレの帰りを待ってるんじゃないのか?おれはここでぬくぬくと何もしないでいいのか?」とかって悩み始めるわけです。で、今の時代ですから、Googleストリートビューなどを駆使して少ない記憶を頼りに自分の故郷を探しはじめるんです。

物語は大きく2部構成になっていて、最初は主役のサルー少年の壮絶な子供時代(というか迷子時代)を舞台に、彼が里親に無事引き取られるまでをちょうど半分くらい(1時間程度)で描き、そして後半で一気にイケメンに成長した迷える子羊サルー青年を描き切る、という構造になってます。この構成とかもうマジで神がかりですばらしいです。以前このブログで紹介した「ムーンライト」なんて比較にならないほどの完成度。

何がすごいって、サルー少年が迷子になった時のカルカッタの喧騒を描いているシーンなんて驚愕モノです。とにかく、どこもかしこも人で溢れてて、サルーみたいな小さい子が歩いてても誰も気にしないし、下手をすれば「邪魔だ!」とかって怒声を浴びせられて強引に脇に追いやられたり、駅の中で寝てれば鉄道警備?みたいなおっさんたちに殴られて追い出されるし、相手が年端もいかない子供だろうと容赦がなくて、とんでもなく過酷ですわ。かと思えば、怪しい大人が甘い言葉をかけてきたり、マジで人間不信になりそうです。

それと、カルカッタって、いたるところに修行僧なのかホームレスなのかよくわからない人たちが屋外で集まって集団で寝てるし、町中にごみが散乱しているし、ドブみたいな川で水浴びしたり(ガンジスでしょうか?)、ものすご~く不衛生で、インドって今もこうなのでしょうか。見てて怖~いよ~うママ~状態になること必死ですハイ。

そして、そんな壮絶なインドを後にして、後半のオーストラリアへと話も時間も一気に飛ぶわけですが、もう天国ですわオーストラリア、きれいだし義理の両親も優しいし。そしてなにより、このサルー青年がかなりのイケメン(というより、ナイスガイ)に成長し、しかもとても母親思いのやさしい青年に育ってるではないですか。ちなみに義理のお母さん役はニコール・キッドマンさんで、迫真の演技をしててすばらしいです。

で、このニコール・キッドマン夫妻は、サルーを引き取った1年後にインドからもう一人、孤児を引き取るんですが、その引き取った子供がサルーとは正反対のバカでやなやつでサイクブーでどうしようもないアホなんですわ。確かにこの少年もまた、子供時代の壮絶な過去をトラウマとして引きずっているのはわかるんですが、まあ見ている方は、はっきりいって1週間ぐらいでこいつはすぐにインドに送り返せばよかったのにとすら思うわけです。が、このオーストラリアの夫妻は本当に立派で、その辺の危機迫る様子をニコール・キッドマンがほぼセリフなしの表情と眼力だけで演じてますので必見です。

でかつ、先の記事で紹介した「ドラゴン・タトゥーの女」のリスベット・サランデルを演じたルーニー・マーラちゃんも出てるので見逃せませ~ん。しかし、このサルーを演じたデーヴ・パテール君、ひじょ~にいい役者でイケメンなんですが、だんだん見てると思うわけですよ、本物もこんなにイケメン(ナイスガイ)だったのかなぁ~?とか、こんな洗練された奴なのかよ~などなど。そして、エンドロールでお約束の本人出演シーンがありましたですハイ。・・・って、え?あれっ?この人っ?・・・とまあ、映画は映画としてみないとだめだよね、などと、そこは少しうがった見方をしてしまった自分を戒めつつも反省したくなるわけですハイ。しかし、この映画は日本では劇場公開さえされずにビデオスルーって、この国の映画産業、完璧に終わってますね~。

というわけで、疑似的に迷子になってみたくて、どうしようもないクズの弟がいて、かつ最終的に少し反省したい人には自信を持ってお勧めできる一本です!この3連休にいかがでしょうか?

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