GIGI日記~映画とか本とか~

映画、本、料理、植物、ときどきファッション

MENU

映画「蜘蛛の巣を払う女」

評価:★★★★☆

この映画、ものすごく面白かったですハイ。しかし何でAmazonレビューであそこまで評価が低いのかがわかりません。なにか作為的なモノすら感じますね。そもそもこの映画にアメリカ版の名作である「ドラゴン・タトゥーの女」と同質的なものを期待すること自体が間違いなわけで。ドラゴン・タトゥーの方は主演にルーニー・マーラさんを起用したんですが、これが大当たりの最大の要因だったように思います。

そもそもルーニー・マーラってどっちかというと清純派タイプで、原作での過酷な過去を持つリスベット・サランデル像とはどう考えてもマッチしないわけですよ。それをデヴィッド・フィンチャー監督が半ば強引にルーニーちゃんを半モヒカン刈りにしてピアスを付けまくってパンクなファッションでまとめた結果、それが強さとかわいさを併せ持ったいわば異質のリスベット・サランデル像が奇跡的に生まれたというね。

こういうことってハリウッドでは結構あって、例えば「ロング・グッドバイ」でエリオット・グールドが演じたフィリップ・マーロウや、「インタビュー・ウィズ・バンパイア」でトム・クルーズが演じたレスタトなんかがその典型でしょうか。本来は考えられないキャスティングをすることで、むしろそのギャップがキャラクターに強烈なインパクトを持たせ、結果として作品に深みを与える、今でも語り継がれる名作になるといったように。

なので、ある意味「ドラゴン・タトゥー」の方は偶然と奇跡の産物的な映画であって、その続編的な意味合いでこの「蜘蛛の巣を払う女」を解釈しようとすると、もうとんでもない低評価、クソレビューになってしまうわけでして。

あ、そろそろ「蜘蛛の巣を~」の方に話を戻しますと、まず、このリスベット・サランデルというのは家族との壮絶なる過去を持つ天才ハッカーで、今は独立して探偵まがいの仕事をしているわけです。元々はスウェーデンの作家のスティーグ・ラーソンさんの「ミレニアム3部作(Part1~3)」が原作となっています。ただ、このスティーグさんは、この本を出版する前になんと亡くなってしまうんです。まるでゴッホの作家版みたいな話なんですが、死後に出版されて爆発的にヒットし映画化されたという経緯があります。そして、このスティーグさんの意志を継ぐ形で、現在はダヴィド・ラーゲンクランツさん(なんか名前がドイツっぽいですね)という方が続編(Part4~6)を書いている様なんですが、僕はこのダヴィドさんの続編の方はまだ読んでません。そして今回の映画は、このPart4がの原作のようですね。

ちなみに、まずはこのスティーグさんの原作に忠実にスウェーデンで「ミレニアム3部作」が映画化(=オリジナル3部作)されます。このスウェーデン版ではノオミ・ラパスさんという太めのおばちゃんがリスベットを演じてますが、とんでもなく演技力のある女優なので、それはそれで様になっているんです。が、やはりなんとなく映画の映像とかが田舎くさくて垢抜けません。パッケージなんてビジュアル系のロックバンドみたいでダサ過ぎて涙が出てきます。そしてそれをハリウッドがスタイリッシュにリメイクしたのがルーニーちゃんの「ドラゴン・タトゥーの女(=ハリウッド・リメイク版)」であって、これはもう「ファイト・クラブ」のデヴィット・フィンチャーですから、映像とかも懲りに凝っててオープニングから度肝を抜かれること必死です。で、今回の「蜘蛛の巣を払う女」が、言うなれば「アメリカ・スウェーデン合作版」ということになるわけです。

さて、あらすじなんですが、詳細はAmazonや映画レビューなんかで調べてもらうとして、簡単に言うと、リスベット・サランデルには幼い頃に生き別れになった妹がいて、実はその妹の方も父親の意志を受け継ぐ形で組織を維持しつつそれなりに元気にやっていて、久々に再会してみると敵になっていたという、まあよくある話ではあるんです。

が、まず映像がハリウッドレベルとまではいかないまでも、スウェーデン版の「ミレニアム」なんかよりは格段に映像がスタイリッシュでソフィスティケートされてるんです。色々な小道具やインテリアやファッションとかも凝ってて、バイクもドゥカティを真っ黒にスモークペイントしててオシャレだし、一方でアメリカのアクションドンパチ映画みたいな派手さも控えめで、ちゃんとヨーロッパ感が漂っていてかっこいいんです。って、スウェーデンアメリカの合作なので当たり前か・・・。

で、リスベット・サランデル役をクレア・フォイさんというイギリスの女優さんが演じてます。たぶんあまり評判はよくなかったであろうことは確実なんですが、僕はこのクレア・フォイさんのリスベット・サランデルも、ルーニーちゃんとはまた別の意味でものすご~くよかったと思います。殴られたり倒されたあと、それからどうにか立ち上がってすぐにキリッ!と相手を睨み付ける、つまりはガンをたれる(飛ばす)わけですが、その眼力がハンパなくてかっこよくてシビれましたですハイ。彼女になら殴られてもいいとすら思いましたね。しかし、最近はイギリスの女優の方が才能豊かのでしょうか。スター・ウォーズ新シリーズのデイジー・リドリーちゃんもイギリス人ですし。

それと特筆すべきは、妹役のカミラ・サランデルを演じたシルヴィア・フークスさん。彼女が劇中ずっとド派手な真っ赤な衣装に身を包んでいて、「おまえはシャアか!」と突っ込みたくもなるんですが、それが背景の雪の白さに映えてものすごく美しいんですわ。そもそもこの映画の色遣いってほとんどモノクロチックで白と黒以外は最小限に抑えられているので、そこにきてこの真っ赤な衣装ですから、もう強烈なインパクトなんですよ。

そしてなにより、このシルヴィア・フークスさんって、そのサイボーグ的なまなざしってどこかで見たことあるなぁ~と思ってたんですが、ようやくわかりましたよ、えっと、実はあの「ブレードランナー2049」のものすごく強いレプリカントの女で、最後までライアン・ゴスリングを苦しめていたあの子じゃありませんか。あの演技も通にはたまらなかったわけですが、今回も似たようなテイストのサディスティックな演技で悶絶必死ですハイ。

というわけで、見所満載のこの映画、女の子にガンを飛ばされたい方には猛烈におすすめです。そろそろ原作のPart4~6も読みたくなってきました。

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア [DVD]

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2000/04/21
  • メディア: DVD