GIGI日記~映画とか本とか~

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映画「アイ、トーニャ」

評価:★★★★☆

「アイ・トーニャ」ようやく見ました。年度明けに見た映画の中ではダントツのベスト1です!すばらしい映画でした。もう最高です!これだから映画はやめられません。昨日見た「スリープレス・ナイト」への失望や憂鬱さがこの映画できれいさっぱり洗い流されました~よかった。

時は90年代、フィギュア・スケートでアメリカ史上初のトリプルアクセルを成功させたトーニャ・ハーディング選手が、ライバルであるナンシー・ケリガン選手を襲撃してケガさせた事件って、僕の年代だと当時誰もが耳にした一大スキャンダルで、当時の報道とかものすごかったのを今でも覚えてます。ナンシー・ケリガン選手が白い衣装のまま泣きながら悔しがってるシーンが何度も何度も報道されました。

その後、ちらほらトーニャ・ハーディング選手がプロレスに転向したとか、自撮り映像が流出したとか、くだらない報道が続きましたが、その後はほとんどみんな忘れ去っていたはずです、まあ、マスコミや大衆はいつもそのパターンですが。

しかし、ここに来て、このトーニャ・ハーディングさんの自伝的映画が作られるなんて、やはりアメリカってすばらしい。日本も早くホリエモンライブドア事件の顛末を描いた映画とか誰か作ればいいのに。

で、映画では、このトーニャ・ハーディングの幼少期からリレハンメル・オリンピックまでの彼女の成功と挫折というか、刑を受けるまでをじっくりと丹念に追っていきます。まず何がすごいって、全編通してその映像がとにかくかっこいい。80~90年代の雰囲気がギラギラ出ていて、まるで「バッファロー66」みたいな若干くぐもったボヤけた映像がものすごくクールなんです。この映像手法ってなんていうのかなあ。使ってるカメラとかが違うんでしょうか。

トーニャ・ハーディングさんって、白人貧困層の家庭に生まれ、母親も鬼としか思えないほど厳しい人で、娘を勝たせるために平気で罵詈雑言を浴びせ、あの子は「叩かれるほど力を発揮する」とか言って平気で娘を罵るし、人を雇って公衆の面前で罵倒させたり、もうとんでもない母親です。さらに、トーニャの結婚したジェフって男もダメ人間の典型で、しょっちゅうトーニャ・ハーディングを殴りつけるだけの単なるDV野郎なんですが、トーニャも負けずに殴り返したり、モノを投げつけたりは日常茶飯事という。

こんな最低最悪の家庭環境の中、ウエイトレスとかホームセンターで働きながら必死にフィギュアの練習を続け、お金がないので衣装を自分で作ったりとか、一体トーニャってどんだけすごい人なんでしょうか。それなのに母親に「オマエはメンタルが弱い!」とか「甘えすぎだ!」とかって扱き下ろされて、それでもめげないトーニャはすばらしい。

今の時代、大学の先生が学生を少し強い口調で叱った程度で、すぐに叱られた学生は来なくなったり、学校に親が文句を言いに来たりとか、まるで大学が中学校みたいな現状になっているようですが、そういう学生とか親は是非この映画を見るべきですね。

きっとトーニャはもう少しまともな男と結婚して、スケートに真摯に専念することができれば、オリンピックで優勝することもできたのかもしれないけど、そもそもトーニャ自身も負けん気が強く、練習の合間にタバコをプカプカ吸ったり、他の選手に「邪魔だからどけよ!」とかキレたり、審判団に「私の方が技術が上なのに何でだよ!ファック!」とかって食ってかかったりして、結構ハードで激しい女性なんですわ。

エンドロールで、トーニャ・ハーディングが実際に1991年の全米選手権でトリプルアクセルを成功させた映像が流れるんだけど、もうここは涙なしでは見られませんでした。こういうダメダメな人たちが、類い希なる努力を重ね、大舞台でストイックにその演技やプレーを爆発させることで、そこに何十分の一かの確率で奇跡が起きて、だからこそ人々は感動するわけで。

しかし、トーニャ・ハーディングさんも今では幸せな一児のママさんということで、そこに少し救われましたね。しかし、マスコミはこの映画を皮切りに再度トーニャ・ハーディングをバッシングしたりとか、もういい加減にしてくださいね。