評価:★★★☆☆
さてさてようやく見れました、ノマドランド!もうこの2年間、ずっと見たかった映画ですよ。レンタルも一向に開始されず、アマプラのレンタル配信も気が引けて、結局、劣化版のブルーレイが出るまで待つはめになりました。
・・・・なんですが、なんというか、期待が大きすぎたせいなのか、なんだかよく分からない、ハッキリしない映画で、ちょっと拍子抜けしてしまった、というか・・・。
そもそもこの映画で言いたいことって、アメリカ西部の自然の美しさなのか、ノマドの生き方の賞賛なのか、行きすぎたグローバリズムに対する糾弾なのか、中流階級の没落なのか、物質文明へのアンチテーゼなのか、なんかもう、どっちつかずの雰囲気先行の映画になってしまっていて、ハッキリ言って、あんまり馴染めませんでしたね。
これならボクは、リース・ウィザースプーンの「わたしに会うまでの1600キロ」とか、エミール・ハーシュの「イントゥー・ザ・ワイルド」の方が好きです。まあ、リバー・フェニックスの再来、チャーリー・プラマー君の「荒野にて」よりはこっちの方が好きですが・・・。
とはいえ、別におもしろくないわけではなく、主役が芯のあるおばさんを演じさせたら右に出るものはいないフランシス・マクドーマンドさんなので、いやいやどうして、なかなか楽しめます。
そもそもこの映画の原作となった「ノマド」ですが、これは小説ではなくルポタージュで、当時ジェシカ・ブルーダーさんという若手のルポライターが、家を失い、車上生活を余儀なくされた人々数百人に取材して執筆した本なんですね。ジェシカさんは実際に自分もAmazonの倉庫で働いてみたり、中古のバンを買って車上泊してみたいして、その過酷さと異常を実感し、そのような生活を余儀なくされた高齢者の暮らしをはじめて世間に知らしめる先駆けとなった本なわけです。
そこで書かれていたのは、リーマンショックやサブプライムローン問題の煽りを受け、中流階級が一気に貧困層に没落し、数多くの高齢者が家を失い、車上暮らしを余儀なくされてしまった悲劇です。彼らは実は高齢者が多く、1年を通じて低賃金で過酷な労働条件のもと、身体を酷使しつつ、ただ生きるために、Amazonの倉庫やキャンプ場などでの職を転々としながら、季節労働者のように車で漂流しながら生活しているわけで、その過酷な現実がノマド(遊牧民)になぞらえて語られるわけです。
そういう異常な状況が2000年代に入ってから起きているのがアメリカという国の現実で、要はどんどん貧富の差が広がり、普通の暮らしをすること自体が難しくなっているという事でしょう。
これはつまり、行きすぎた資本主義などとという話ではなく、むしろ行き過ぎた新自由主義とグローバリズムの弊害であることがよくわかります。つまりは、国内産業をどんどん海外に移し、EUなどのように国境をなくし、移民をばんばん受け入れ、自国民をないがしろにする政策を推し進めた結果、ウォール街等の国際金融資本家だけが儲かり、国民の1%の層に富の大半が集中し、その反動で国民の大半を占める中産階級が没落してしまったという詐欺のような話なんですね。
そういう疲弊するアメリカの惨状をみて、これを変えようとしたのが実はトランプ大統領だったわけです。トランプ大統領は、決して国際金融資本家のためではなく、庶民のために、庶民の暮らしをよくするために様々な手を打ちました。
①まずは国内産業の保護です。これは輸入品に関税をかけることで国内の製造業を守り、かつ中小企業への法人税の軽減を実施し、さらには海外に出て行った企業に対し、国内に工場を戻しましょうと呼びかけ、それに応じた企業には様々な優遇措置を講じました。これにより、アメリカの失業率は大幅に減ったと言われています。
②次に移民の制限です。これに対し、メディアではよくトランプさんの事を差別主義者(レイシスト)とか排外主義者などと批判していますが、事実は全く異なり、移民の審査を強化すると言ってるだけなんです。つまりは、不法移民や犯罪者やテロリストはもちろん、アメリカの憲法を遵守しない社会保障目的の移民を制限するというだけの話で、きちんと働く気があり、またその能力もあって、その努力を厭わない移民は歓迎しているんです。
今、フランスでも、ルペンさんが移民を制限する話をしていますが、ルペンさんの主張も全く同じです。働く気がなく、社会保障目的だけでフランスに来る移民は認めないと言ってるだけなんですね。その意味でEUは国境がないので、EUに入った移民は真っ先に社会保障の手厚い国に入国しようとするわけです。そのおかげでドイツもフランスも治安が悪化しひどい状況になっていて、本来は自国民に使うべき予算の移民への支出も増加しているわけですよ。これを正すことが、一体どうして国の分断を生むとか民主主義の崩壊とか極右などという解釈になるのでしょうか。
③そして、『アメリカ・ファースト』です。小池のクソみたいな何の実態もない都民ファーストではないですよ。これはつまり、もう遠く離れた他国にアメリカは介入しないということで、決してメディアのいうような孤立主義なんかじゃありません。
つまり、アメリカ・ファーストとは、移民でも、特権階級でも、ウォール街でも、そしてジェンダーのための政治ではなく、アメリカの憲法を守り、地道に働き、毎日必死に生活する一般庶民を、肌の色に関係なく、第一に考えるべきと言ってるだけなんです。そして同じ事をフランスのルペンさんも言ってますね。
ましてや、他国に介入し、政権奪取を工作し、その国の資源を奪い取るヒマはないということでもあります(クリントン、オバマ、ヒラリー、バイデン、あとマクロンもですが、全員こっちの方向です)。
全ての日本のメディアに聞きたいのですが、この三つの主張の一体どこが極右なのでしょうか?
さてさて、以上の点を踏まえ、映画「ノマドランド」ですが、そういう現代アメリカの暗部には極力触れ事はせずに、ただ美しい風景を垂れ流し、ノマドの生き方を「いつまでも旅を続けることを忘れない開拓者精神こそがアメリカ人の強さだ。」みたいな綺麗なまとめ方に修辞していることに、ボクは大いに違和感を感じました。これって、ちょっと違うんではないでしょうか?
なんか、本質的な問題は一切顧みずに、ただ美しい言葉だけを並べたてたSDGsと同じような嘘くささとよく似ているように感じます。
さて、明日はフランス大統領選挙の決選投票ですね。以上で述べたことに、フランス国民がどこまで気づいているかが問われる非常に重要な選挙ですよ。フランスのトランプ大統領と呼ばれるマリーヌ・ルペンさん、是非がんばってください!ルペンさんが大統領になれば、世界が大きく変わるきっかけになるはずです。